怪しい日記 2003年4月

4月27日
 いくつか「ペンネームC撲滅委員会」に興味深い書き込みがあったのでレスをつけます。
326 :イラストに騙された名無しさん :03/04/25 23:57
ペンCのSFは二番煎じといった印象が拭えないよな。
SFを、宇宙・ロボットの第一世代と、ネットワーク・VR・クローンの第二世代と分けるとするなら、
第二世代すら飽きられてるのに、まだ第一世代を引きずっているし。
レトロを狙ってるんでなければ、地球帝国だの異星人だのはNGワードだと思った方がいい。

大体、二十一世紀になっても、車は空を飛んでねーし、月面基地もまだねーんだ。
それらがマジで信じられてた時代とは違うよ、やっぱり。
そんな世界書いても、今の子供達には嘘くせー世界としか思われないよ。
「プラネテス」とか読んでるんだから、もっと現実感を感じる話を書かなきゃダメなことは分かってるんだろう?

 宇宙ものは、今でも求められているジャンルでは?
 もちろん私だって、「人類は宇宙にいくのが当然」とは思わない。
 もしかしたらこの先いくらたっても人類が宇宙に住むことはないかもしれない、私たちの文明はそれとは違う方向に進んでしまったのかもしれない(「永遠の終わり」みたいに)とすら思う。
 だが。
 SFアニメの多くが宇宙を舞台にしていることをどう説明する。
 アニメ、とくに地上波は小説読者とは比較にならないほど多数の視聴者を持つ。
 どんな売れてるライトノベルより、さらにメジャー世界なわけだ。
 そんな超メジャー世界で受け入れられてるんだから、商業小説としてなりたつほどの読者を得ることは当然可能だと思う。
 「リアルな世界だ」とか、「きっと未来はこうなる」と思ってもらう必要はどこにもない。
 ただの異世界として認識してくれて結構。
 異世界ファンタジーの一種でいい。
 もちろん魅力的な異世界でなければいけないわけだが、あとはもう腕の問題だろう。
341 :イラストに騙された名無しさん :03/04/26 23:51
ペンC、実は眼鏡っ娘好きとしても中途半端な気がする・・・
 ああ、それは確かに。そのとおり。
 でも萌えというのは他人に強制されるものじゃないから。
 他人と比較してどっちが上とか本物とかいうものでもない。
 私はこんな感じで生温く萌えるのが一番心が安らぐ。
356 :イラストに騙された名無しさん :03/04/27 22:20
ペンCは賞に送る前に、HPで曝す気は無いのだろうか?

そうすれば、何時も言われている欠点を直す事は可能な筈なのに...
ここで言われた欠点を直した版もupしないから、無理か

 まーち、総統暦、CHAIN、楽園迷宮、百年の手紙、いずれもさらしましたよ?
 いただいた意見のすべてを反映させることはもちろんできませんでしたが。
 すでに送って落選した作品の改稿を行わない理由は、
 「落選作(とくに一次落ち)はちょっとやそっと直しても無駄なんじゃないか?
 それより次の小説書いたほうがいいんじゃないか?」
 という考えによるものです。
 私が読者の立場なら、同じ話を何度も読まされるのは嫌ですし。
 完璧になるまで何度も直すのが義務だ、と信じていた時代もあったんですが、いまはそんなことぜんぜん思いません。

357 :イラストに騙された名無しさん :03/04/27 22:30
いや、晒してるでしょ。まーちとか。みんなに欠点指摘されまくってる。
・・・直す時間がないぐらいギリギリに完成させるから、指摘されても
直せないみたいだけど。

358 :イラストに騙された名無しさん :03/04/27 23:02
自信満々で直す気がないのだろう。
まーちの冒頭は>>82の方がどう見ても良く出来ているが、
日記で反論していた。

359 :イラストに騙された名無しさん :03/04/27 23:07
まぁ、2chで指摘されて内容変えちゃうようじゃダメダメだけどな。

360 :イラストに騙された名無しさん :03/04/27 23:10
それもそうだ。
2chのカキコを上回る内容でリベンジできるくらいじゃないとダメなんだな。

361 :イラストに騙された名無しさん :03/04/27 23:42
しかしそんな事言ってたら結局他人の意見なんか耳貸さないという
結果になると思う。
ちゃんとメールとかで個人的に指摘してくれた人の意見よりも、2ちゃんで
何の気なしに茶化した意見にもインスピレーションを感じたら直せばいい
わけで、そこで分け隔てするくらいなら、最初からネットで晒すなという事
にもなるわけで。
 >361
 ええ。「2CHだから信じない、従わない」なんてことはありません。
 どこにだって鋭い意見はあります。
 ただ、「なんでそんなことするのか」理解できずに従っても意味はないと思うので、「なるほど」と思えたときはじめてアドバイスを受け入れることにしてます。
 2CHの書き込みって、その意見の背景が見えにくい傾向はあります。

 さて。話題かえます。
 今日は劣化ウラン弾の被害に関する写真展に行ってきた。
 それについても書きたいところだが、もう夜中の一時だ。
 予告しておいた「キャラクター小説の書き方」を優先しよう。

 大塚英志「キャラクター小説の書き方」講談社現代新書
 キャラクター小説。
 それは、一般にライトノベルといわれる、スニーカー文庫とか富士見ファンタジアとか電撃文庫とかのこと。
 そういった作品群は、いわゆる一般的な小説とは根本的にことなる。
 「生身の人間ではなく、あくまでアニメや漫画のようなキャラクターを描こうとしたものだから。」
 ……と大塚氏はいう。
 だから彼は「キャラクター小説」という呼び名を提唱した。そして、キャラクター小説であることに誇りを持ち、キャラクター小説だからできることをやるべきだと説く。
 熱い本だ。
 雑誌「ザ・スニーカー」での連載を読んだ時には、角川への皮肉ばかりが印象に残り、こんな高い志をもった本だとは気付かなかった。
 志だけではもちろん終わらず、面白いキャラクター小説を書くにはどうしたらいいのかという実践の部分も充実している。
 「精神論」や「センス」を排除した、恐ろしいまでの技術論だ。
 小説を機械のように分解して、部品の機能を探り、どう作るのが効果的か割り出していく。
 本当にこんなことで、と思ったが……
 私に一番足りないのはこの合理性だ、とも思った。
 このやり方を導入する。
4月26日
 私の小説「目覚める君に残酷な手紙を」が、SFマガジン最新号で紹介された。
 例によって「リーダーズ・ストーリー」です。
 うれしいが、作品を載せてはもらえなかった。
 もっとがんばろう。
 励みにはなった。
 ありがとうSFマガジン。
 
 一週間ばかりiBookを使ってみた感想。

 1
 意外と重い。
 しかしがんばって毎日持ち運んでいる。
 仕事の帰り、ファミレスなんかに寄り、原稿書いたりすると気分が切り替わってとてもよい。
 電車通勤の人間が少しうらやましくなる。
 
 2
 デザインは、やはりため息をつくほど綺麗だ。
 シンプルだからこそ美しい。
 ただ……
 私は外回りなのでやっぱり手がきたない。手を拭く程度の事はしているけど、それでもタッチパッドが汚れる。
 純白だから汚れが目立つこと目立つこと。
 しかし、買った以上は責任もってきれいにしとかないと。
 綺麗にしたくなるパソコンでもある。
 
 3
 動作は別に遅くない。
 今のところメーラー、ブラウザ、FTPソフト、iTunes、アップルワークスくらいしか使ってないのだが、これらを使っている限りでは速度的な不満はない。
 あえてあるとすれば。
 起動。そう、起動は確かに遅い。
 70秒くらいかかってるね。
 これが少し気になる。

 4
 操作法はウィンドウズと違う部分が多いんだけど、でも違和感があるほどじゃない。
 OSXにかぎっていえば、WINより映像的で、分かりやすいと言えるかもしれない。
 OS9は全体的に古くさいという印象だ。
 源流に直結してる、19年もの歴史をもつものだからそれはしょうがないかな。
 文字が妙にカクカクしてるって時点でちょっと……
 「これが渋くていい」って人もいるかもしれないけど。
 感覚なんてのは人それぞれで、「iBookは美しい機械だ。この優しく上品な雰囲気が分からんのか?」とか私が言っても「ただの救急箱じゃねえか」とか言われてしまうわけで。
 
 5
 ただ、やっぱり対応してる周辺機器が少ないこと、しかもOS9にしか対応してなかったりすること、そのあたりは少し困った。
 今日はPHSにつなごうとしたんだけど、買ってきた通信ケーブルがOS9専用だった。しかたなくOS9でセットアップした。
 見事接続に成功し、これからは出先でもネットできるようになったわけだけど、そのたんびにOSを切り替えて再起動しなければいけないというのはちょっと面倒。

 会社の人たちや家族にみせてまわった反応は、

 女性の場合 
 わあ、奇麗! 

 パソコンにあまり詳しくない男性の場合
 マックってさわったことないんですよ。へえ、ちゃんとパソコンなんですね。
 エロ画像とか見れますか?


 パソコンに詳しい男性の場合
 へえ、これがマックか。アイコンでかいね。
 解像度とかいくつ? クロック数は? え、そんなんで平気?
 OSが芸をし過ぎだよ。
 安定してるって本当? WIN2000とどっちが安定してる?
 右クリックがないのはどうして?


 Macユーザーの場合
 おお! 君もMac買ったのか!
 いやあ、やっぱりMacでしょ、仲間だねえ……って、iBook!?
 何でPowerBookにしなかったのさ!


 とまあ、こんな感じです。
 Macの玄人には受けが悪いみたいですね。
 Macの雑誌によると一番売れてるのはiBookらしいのに。
 かわいいとおもうんだけどなー。
 たまに「これって女の子向けなんじゃないか?」って不安になるけど、まあいい。
 
 で、名前なんだけど。
 撲滅委員会の人たちは

 エアイアとか、
 700メガヘルツのG3だから「七三(しちぞう)」とか、
 林檎だからイブ、ペンCの好みにあわせてエヴァとか、
 白だからアヒル、アヒルだからドナルド、Macでドナルドだからマクドナルドとか、
 いろいろ出してくれたわけだが。
 会社の人たちが全部ぶっ壊してしまった。

 金曜日(25日)の夜、飲み会に参加したペンCは、会社のみんなにiBookを見せびらかした。
 これが会社での、iBookたんのデビューだった。
 だが私は愚かだった。
 ここは飲み会で、この人たちは酔っ払いなのだ。
 それに気付かなかったのは、もちろん私も酔っ払いだったからである。

 酔っ払いA「お! このMacは妙なところに毛が挟まっております! これはどう見ても髪の毛ではありません! どう解釈すればいいのでしょうか! 国王(私は職場でもペンCとか国王と言われている)はいったい何にMacを使っていたんでしょうか!」
 ペンC「違う! ぬれぎぬだ! 何かの間違いだ!」
 酔っ払いA「みなさん! ペンCは『私はやってない、潔白だ』と主張しております!」
 酔っ払いB「当法廷は被告に死刑を求刑します!」
 酔っ払いC「し・け・い! し・け・い!」
 ペンC「違うんだって!」
 酔っ払いA「さて、疑惑の陰毛Macですが……」
 酔っ払いD「当然、中にはエロ画像があると考えられるわけですが!」
 酔っ払いC「さ・さ・つ! さ・さ・つ!」
 ペンC「うわー!?」
 (あまりに無惨なのでこれ以上はお見せできません)
 みんながいじめるうう。
 本当にそんなはずないんだって! 
 とほほ。
 
 で、なまえ。
 700メガヘルツのG3だから七三。ここまではいいと思う。
 だがこれは「ななみ」と読むべきではないか。
 すると意見を最大限取り入れた場合、

 ななみ・エアイア・マクドナルド

 となる。
 日本人とアイルランド人のハーフということでどうでしょう。
 あとね。
 アイブック→イブク→イブキ
 というのもかわいいかなーと思った。
 どうしてもクール系眼鏡っ娘のイメージにならないんだけど、よく考えたらiBookっていちばんおっとりしたMacではないか。
 クール系はPowerBookということで。
 ほんわか系にしたほうがいいかもしれない。
 
 閑話休題。
 大塚英志「キャラクター小説の書き方」という本が面白かった。
 明日詳しく感想を書く。 
 重大なヒントを手に入れた。
4月20日
 マックを買ってきた。
 1月に突然欲しくなって以来ずっと我慢していたiBOOKだ。
 新品マックのなかでは一番性能が低いようなんだけど、やはりこれが欲しかった。
 なぜかは説明できない。
 これがずば抜けて美しく感じたから?
 一言で言えばそうなんだけど、それだけではないなあ。
 なんでだろうね。
 とにかく気に入った。
 ただ気が付くと毎週パソコン屋に行ってiBOOKをいじるようになっていた。
 今時700メガヘルツってどうよ? とかそういう不安もあったけど、実際使ってみると特に遅くはない。
 マック経験ゼロのペンCでもトラブルなしでネットにつなげた。
 マックは初心者に優しいってのは嘘じゃなかったんだなあ。
 ゲーム以外の作業はこれで全部やろうかと思う。
 末永く使うぞ。
 ずっと持ち歩いて傑作を書いてやる。
 まず名前を決めよう。
 ふみみちゃんよりさらに萌える名前がいい。
 女の子だということにして。
 白いからシロ。
 犬か。
 じゃあユキ?
 ちょっとなあ。
 この色は雪と言うより杏仁豆腐だ。
 白衣だと言うことでナタリー。
 そんなヤバそうなパソコン恐い。
 潔癖な女の子という印象を受けるので麻由子。
 これもちがうー!
 っていうか既存の、他人が書いた小説のキャラからとってくるのはどうかと。
 ふみみちゃんと同じ命名法則にのっとると、「白林檎 ななこ」たんか。
 ななこという名前は悪くないかもしれないな。
 クール系という印象はまったくないが。
 悩みはつきない。
 (もっとほかのことで悩め)
4月19日
 映画を見に行った。
 マイケル・ムーア「ボウリング・フォー・コロンバイン」
 彼の著作「アホでマヌケなアメリカ白人」はユーモアたっぷりにアメリカを断罪した、すごく面白い本だ。
 笑えて、怖くて、でも前向きだから勇気がわいてくる本。
 だからこの映画にも同じようなものを期待した。
 だが……ちょっと違う。
 笑いの要素はあまりない。
 笑わせようとしている部分はあるんだけど……
 雰囲気が根本的に厳粛で重苦しい。
 笑ってはいけないような気がして、姿勢を正してスクリーンに見入った。
 この映画は、「コロンバイン高校という田舎の学校で、2人の高校生が12人を射殺した」という事件に心を痛めたムーア氏の問いかけだ。「いったい何でアメリカはこうなんだ?」って。
 インタビューをえんえん繰り返しているだけで、話としての緩急はほとんどない。
 だから正直、退屈な部分もあった。
 でも、「ああ、分かる分かる」と思った部分もあった。
 たくさんあったし、怖くなった。
 私はこれを見て大きな勘違いに気づいたよ。
 アメリカでたくさん人が殺されるのは単純に銃の規制がゆるいからだと思っていたけど。
 銃は包丁なんかより簡単に人を殺せるから。
 もちろんそれもあるんだけど、実はそれでも説明できない、いやどんな理由を持ち出しても説明できないんだな。
 解明不能な、巨大な何かがそこにあるんだ……
 でも、そこに何かがあることだけは忘れてはいけないんだ。そう思った。
 上映が終わった後、映画館を出る人々の中で、私はこんな会話を耳に挟んだ。
 「でもさあ、銃がなかったら刃物とかで殺すわけだし……」
 「なんかまとまりがない映画だよな」
 うんうん。
 日本ではまさにそういう事件が起こってるね。
 ムーア氏は象徴として銃と言ってるだけだと思うよ。
 だからナイフでもクルマでもいい。
 そこに、「人命を軽視してしまう考えが存在し、それに慣らされてしまっている人々がいる」ということは同じなのだから。
 
 2001年9月13日の日記より転載。
 
 この件についてニュースをきいたり掲示板の書き込みをみたりしているうちに、ひとつ疑問を感じたことがある。疑問はやがて恐怖にちかいものにかわっていった。
 このテロ事件は確かに、世界史に残るだろう大事件だ。
 でも。
 昨日は「これでもう幼女誘拐は取り上げられなくなった」と書いたけど。
 実際にはマスコミでとりあげられなくなっただけで、そういうことをやった奴がいるという事実はけっして消えないし、罪も消えないし、忘れていいはずがないんだよな。
 それだけじゃない。手錠掛けられて死んだ中学生も、歌舞伎町で
焼け死んだ44人も、包丁でめった刺しにされた小学生たちも、ククリナイフで殺された三軒茶屋の警官も、みんな同じ命だし、それより前、ネオ麦茶やてるくはのる、サカキバラや仙台の通り魔に殺された人もそうだ。
 殺人事件を持ち出す必要はないかも知れない。日本だけで年間1万人以上の人が交通事故で死んでいる。3万人の人間が自殺している。そこには、私なんかには到底想像できない苦しみがあったはずで。それは、このテロ事件で殺された人達と全く等価であるはずで。
 それなのに、ほんの少し時間がたっただけで。もっと大きな別の事件が起こっただけで、かき消されてしまう。世の中から忘れ去られて、どうでもよくなってしまう。
 いいはずないのに。
 隠されてしまうんだな。
 まるで、上書きされたかのように。
 それを怖いと思った。
 だからそういうことも覚えていなければいけないんだ、と思った。忘れてしまったら、百人千人の死に比べれば一人二人の死などどうでもいい、という考えを認めたことになる。とりあえずその場さえごまかせば、自分の知らないところで何がどうなっていようと忘れていい、という考えを認めたことになる。それが怖い。


 新しく人が死んだら前のことを忘れてしまう心根は、
 たまたまテレビとかで取り上げられている、「流行の人死に」ばかりに涙する心根は、
 この映画が描こうとしている「なにか」とよく似ているのではないか。
 そう思った。
 というわけで私も同罪だよ。

 ちょっと明るい話も。
 恵比寿の映画館で見たので、ついでに「麦酒記念館」に入った。
 ビールの博物館だ。
 明治の頃のビール作る機械とかポスターとか、珍しいものがたくさんあって感心。
 なかでも、「ビールを酌み交わす幕末の武士たち」の写真。
 「『生活の鉄条網をこの爆弾で突破しよう』というビールの広告」、
 「筆で書かれた『麦芽製造器購入ノ為独逸国出張ヲ命ズ。ナオ期間ハ半年を予定ス』という書類」
 などが面白かった。
 恵比寿という地名は、まずビールの銘柄が先にあって、そこから名付けられたんだね。びっくり。
 
4月14日
 おととい、つまり4月12日、このようなものに行って来た。
 SFが好きな人が集まって話をするイベントらしい。
 私はSF読みというよりライトノベル読みなので、話が合うかどうか心配しつつ。
 行ってみると、困ったことに話の内容がよく分からない。
 いや、知らない本が出てくるとかいうんならまだ良いんだけど。
 今回の内容は、DASACONというSF系イベントの歴史とか、立ち上がる過程での苦労とか。
 うわー。知らない名前とか、内輪以外にはどう面白いのか分からないギャグとか、バンバン出てくるよ。
 ついていけないよー。
 これって一見さんが来ちゃまずいものでは?
 しかしここで帰ってはもったいない。
 何が何でも楽しむぞ。そう決めた。
 自己紹介の時間がやってきた。
 よし。

 「えー、私はハンドルネームを『ペンネームC』ともうしまして……」
 「え? 2ちゃんねるの!?」
 「はいそうです。ご存じの方もいらっしゃるようですがライトノベル板というところで本の感想を書いてます」
 「どういう人なの?」
 「2chにいるコテハン(笑)。アンチもたくさんいる……(笑)」
 「えー。コテハン初めて見た! ほんとにいるんだ!」
 
 変に有名。ペンC。

 「あとはインターネット上で小説を発表してます。新人賞に送っては落ちて送っては落ちて、といったことを15年くらい続けている万年作家志望者でもあります。ちょっと読む本がライトノベルに偏りすぎで、『SFとは何か? 電撃文庫だ!』とか言い出しかねません」
 「いや、電撃文庫はSFですよ!」
 
 ああ良かった。
 早川の海外SF以外はSFじゃない、とか言われたらどうしようかと。

 これで「ライトノベル村からSF村に来た変な人」として認知してもらえたらしい。
 
 その後の飲み会ではみんな酒も入っていることもあり、

 「宇宙の戦士がロボットデザインに与えた影響」
 「宇宙の戦士に出てくる敵って実は日本人なんだぜ?」
 「日本のアニメが海外で放送されると変な翻訳をされる」
 「暴力シーンがカットされる。生身の人間を殴ったり斬り殺したりするとダメらしい」
 「バットマンも影絵で殴るからね。カゲマンかよ!」
 「鋼鉄ジーグって歌詞変だよね」
 「かってに改蔵って、あれネタどこまでわかってやってるのかね?」
 「ペンC的には、ソーラー眼鏡っ娘システムがよかったと思います」
 「ぎぐるのネットハンサムと滝本の超人計画がどこまでマジでやってるのかも知りたいな」
 「ネットハンサムって何?」
 「どうしてSFファンの世界では同人ではなくファンダムというのですか?」
 「ダグラムのリニアガンが遅いのは科学的におかしいっていうけど、あれは変じゃないです! リニアガンはリニアモーターの原理を使って発射すれば全部リニアガンなんです! 弾が速い必要はありません!」
 「ペンC的に疑問なんですが、ガンダムSEEDのガンダムって電気で動いてるんですよね? あれってどうやって宇宙を飛んでるんでしょうか? なにをどうやって噴射してるんですか? 金属イオンか何かですか?」
 「高校生くらいで女とかいう必要ないですよ。俺なんてダグラムのリニアガンの科学的正当性について熱く語ってましたよ?」
 「最近のアニメはドリルの美学がないなあ」

 などという話をしました。
 なんだ! SFファンって、別にカタい人たちじゃないぞ!
 楽しかったです。みなさんありがとうございました。
4月10日 
 SFマガジンに送って落選したショートショートのうち、一番評価がマシだったものを3月25日の日記で公開しました。
 残り2本も公開します。

  目覚める君に残酷な手紙を

 この手紙を読んでいる君はとても混乱していると思う。自分はなぜこんなところにいるのかと。何がどうなったのかと。だがぼくのことは覚えているはずだ。だからそこから話をはじめたいと思う。
 ぼくは君の事が好きだった。
 「生体工学の天才」と賞賛されることより、君と一緒にいて何気ない会話をすることが好きだった。ぼくはその気持ちを打ち明けた。君は受け入れてくれた。そこまでは覚えているね。
 ここで君の記憶は途切れているはずだ。
 君は自動車にひかれて死んだのだから。
 ぼくは泣いた。だが涙が乾くと決意した。必ず君を生き返らせよう。そして、やってくるはずだった恋人としての毎日をもう一度、ちゃんと始めるだと。
 ベンチャー企業を作った。業績は好調に伸びて巨大企業となった。ぼくは収益をつぎ込んで、違法の研究……人間のクローンに取り組んだ。
 成功した。だが、それはやはり体が君と同じだけだ。君の心がない。君の微笑がない。君の表情がない。ぼくは君の心までも再現すると決めた。
 死者の魂を蘇らせる方法は二つあった。演繹的手法と帰納的手法だ。演繹的手法は、君が人生で読んだ本、出会った人々、起こった出来事を、全て調べ上げ、『こういう体験をしたならどういう人間になるか』計算する。帰納的手法はその逆、君の発言や行動から逆算して、こういう心を持っているはずだと推測していく。
 そして作り上げられた精神のモデルを、ナノマシン技術でクローンの脳に刻む。
そして一人ぼっちの研究室で、真夜中、何体もの君を作った。
 だが、違う。どれも口を開けば『これは君じゃない』ということがわかってしまうような偽者だった。偽物なんて君を汚すだけの存在だ。すべて処分した。
 なにが足りないのか。ぼくは次には『データな無味乾燥なのがいけないのではないか』という点に着目した。
 いままでは聞き込み調査を何年も続けただけだった。だが人は必ず他の人間の心に影響を与えている。心に残っている。データを超えた生々しさを持つ、君の思い出。それを直接使えばいい。
 ぼくは、君の家族、君の友人だった人など、君と接触のあった人間全てを拉致した。そして脳にナノマシンを送り込んで記憶を吸い出し、その中から君に関する思い出を選び出した。それを元にまた君の心を再構成した。
 それでも違った。まだ君ではない。ぼくの知っている君とは違う。偽者だった。これも処分した。データを吸い出した人々も脳が破壊されていたので同様に処分した。
 それがいけなかったのだろう。ぼくは君以外の人間何人死のうとどうでもいいのだが、ぼくのやったことは過激すぎた。企業の力をもってしても隠蔽できなくなってきたのだ。
 もうすぐ警察がこの研究室に踏み込んでくる。捕まったらもう君を生き返らせることはできない。
 と、絶望した。だがそのとき全てが分かったのだ。
 ここにあるじゃないか。君に関する思い出が。この世の誰よりも君を知っている人が。ぼくは全ての手順を自動化した。これを書き終わったらぼくはナノマシン槽に入る。脳の記憶をすべて吸われて廃人になる。だがその記憶は、想いは、今までの精神モデルを補って、今度こそ完璧な君を作り出す。
 カプセルの中で君は目覚めるだろう。クローンの肉体と、ほんとうの君の心を持って蘇るだろう。よかった。本当に良かった。
 残念なのは、生き返った君と会うことができないことだ。話すことができないことだ。やりたかったことが何もできないことだ。
 でも、かまわない。
 君の心の一部は、ぼくの記憶、ぼくの思い、ぼくの気持ちで作られたものだから。
 ぼくはいつでも君と一緒だから。
 ぼくはそれが嬉しい。
 君も喜んでくれると嬉しい。
 それだけなんだ。
 それでは。
 さようならは言わない。
 久しぶりだね。また会えたね。ずっと一緒だよ。

 チャット中に突然ピピッとひらめいた話。
 自信があったので、落選にはかなり落ち込んだ。
 まあ作者の自負なんてこんなもの。

 お次は、すでにこのサイトで発表されてるから読んだ人もいると思う。
 改稿して短くしたら応募規定をクリアできたので送ってみた。
 商業誌に送ったのは初めてだよ。

 きらわれ星

「おいお前、ワルッツェン星に飛ばされるんだって?」
昼休み、社員食堂でばったり出会った同僚にそう訊かれた。
「飛ばされるわけじゃない。ワルッツェンに新しくできた営業所あるだろ、あそこに派遣されるんだよ。能力を買われたんだ」
「ほんとにおめでたい奴だな。あんな星に赴任したがる物好きはいないよ。お前だまされてんだよ」
「……どういうことだ? そんなにひどい星なのか?」
「惑星そのものには何の問題もないさ。住人のほうだよ」
「ワルッツェン人が?」
「ああ、ワルッツェン人は周囲の星の人間に嫌われてる。近寄るのも嫌だ、と公言する奴も大勢いる。俺もそう思うね」
おれたち地球人が異星人と接触してから百年。いまや地球が貿易を行っている異星人の数は千以上。全種族のデータを覚えることは不可能だ。おれがワルッツェン人について知っていることは、外見が地球人によく似て いること、それから……
「ヒントを一つやろう。ワルッツェン人が病気にかからないことは知ってるか」
「ああ知ってる。生まれつきもの凄く強力な免疫系を持っていて、どんな伝染病にも絶対かからない」
「それだけ知ってりゃ判るだろ」
「判らない。どうしてそれで嫌われるんだ? そりゃ、不老不死の種族だったら他の種族から妬まれるかも知れないけど、病気にならないだけじゃなあ」
「想像力のない奴だなあ。まあ、行ってから驚いてくれよ」

さあ、着いたぞワルッツェンへ。
おれは宇宙船から降り立った。
と、その瞬間、おれは鼻に奇妙な違和感を感じた。
なんだ、この臭い。宇宙港の空気が妙にアンモニア臭い。あと、乾きつつある汗のようなすっぱい臭いもする。惑星ワルッツェンの大気成分は地球と同じはずなのに。おれは首をかしげながら、待ち合わせの場所へと急いだ。
「やあ、メルデッヒ社の方ですね。お待ちしていました」
きさくに笑って現れたのは、こっちの営業所の人だ。ああ、やっぱりワルッツェン人は地球人とそっくり……
って、なんだその格好は!
彼のシャツはもともと何色だったのかわからないほど垢まみれになって黒ずんでいた。頭には白いフケがまぶされ ている。髪の毛全体が、油じみた光沢を放っている。ズボンもヨレヨレで、靴下には黒い横線が山ほど入っている。いや、それよりも……臭いだ。彼の体からは凄まじい悪臭がした。腐敗した肉の臭い、糞尿の臭い、獣の臭い、 汗の臭い……すべてが入り交じったような……こいつ絶対、もう何年も風呂入ってないぞ。地球の街にいるホームレスだってここまで臭くはない。
「あ、あんた、なんだその格好! 臭いどうにかしろ! くせえ!」
敬語も忘れて叫んでいた。
「はい? この格好がどうかしたんですか? ちゃんとした服を着てきましたが」
 彼はさも不思議そうだ。
「なんで洗わないんだよ! 風呂入れよ! きたねえよ!」
「きたない? どういう意味ですか、それ?」
彼はまた首をかしげた。「汚い」という言葉の意味が全く理解できないらしい。
その時おれの中で、同僚からきいた言葉が蘇った。
「ワルッツェン人は病気にかからない」
 人間は、どうして「不潔は良くない」という考えを持っているんだろう。どうして風呂に入るのだろうか。汚れた服を着替えるのだろうか。もちろん、「それが当たり前だから」なんだが、そういう文化的な理由は後になって作られたものじゃないか。もともとは「疫病を予防するため」 だったんじゃないか?
だとすれば……絶対に病気にかからないワルッツェン人は「清潔」とか「不潔」とかいう感覚を持っていなくて当然ということになる……
「あ、ちょっと待ってください。便意をもよおしてきました」
そう言うなり、彼はその場で立ったままふんばりはじめた。尻のあたりから排便の音が響き、ズボンの裾から茶色い粘液がボタボタとこぼれはじめた。だが誰一人、それを奇異に思わない。
 この星ではそれが普通だからだ。
 俺は泣きたかった。
 

 それにしてもこの二本、すごい落差だなあ。
4月9日
 「天才! 松戸才子まーち」を電撃大賞に送った。
 よーし! ふう。ほっと一息。
 5月から次の小説書くぞ。
 
 戦争も終わりそうだし。
 泥沼の市街戦とやらがなくて本当に良かったよ。

 第二次大戦において、必死に抗戦して国をズタボロにしたドイツと日本はたたえられる。あっさり降伏したイタリアは腰抜けと罵倒されることが多い。
 でも本当はイタリア人こそ賢明で、真の勝利者かもしれない。
 そんなことを思った。

 この戦争についていろいろな人がいろいろ言ってる。
 とくにkagamiさんの「反戦運動批判」には考えさせられた。  
 勇み足もあるし過激すぎる言葉遣いの人だけど、やっぱり鋭いことも言う。
 
 さて、ホッとしたところで本の感想でも。

 機本伸司「神様のパズル」角川春樹事務所
 ちょっと未来の日本。
 落ちこぼれ大学生と厭世的な天才少女が、「この宇宙ってなに? どうやればつくれるの?」という究極の問いに挑む話。
 小松左京賞受賞作。
 すごい大ネタなのに日常の世界から一歩も離れない。
 それが魅力であり欠点でもあるかな。
 主人公が頼りなくて、しかも贅沢な悩みばかりもっている人で、感情移入できなくて困ったけど、ヒロインの沙羅華(さらか)がいい感じなので、投げ出さずに済んだ。
 ツンケンした男言葉。
 虚無主義。
 でも本当は……
 よくあるキャラだけど好き。

 あ、そうそう。
 「百年の手紙」は、やっぱり別のところに送ります。 
4月6日
 「天才! 松戸才子まーち」が完成した!!
 推敲して、印刷して、あらすじとかつけて、あとはもう綴じて送るだけ。
 投げ出さずにここまでこれたことを、まずは喜びたい。
 さあ、電撃に送るぞ。

 あちこち反則をやっている作品だから、「こんなものは小説ではない!」といって一次で落とされるかもしれない。
 でもそこを突破できれば、きっといい成績を残せると思う。
 電撃読者の一部は間違いなくこういうのを求めているよ。
 富士見の方が悪ノリの方向性が近い、といわれれば確かにそうだ。
 富士見には「まぶらほ メイドの巻」があり、「A君(17)の戦争」がある。
 アレがオッケーなんだからもうオタクネタ入れ放題。
 でも、逆に言えば「オタクネタ系ギャグはもういいよ」ってことでもある。
 3つはちょっと多すぎるよな。
 むしろ電撃にこそふさわしいのでは、と思った。
 こういうことを言って「また」一次で落ちたりするとすごく恥ずかしいのでこのへんにしておく。

 まーちについていくつか寄せられた疑問にまとめてお答えします。

 「多久沢は15才なのに、なんで18才未満禁止のエロゲーをやっているのですか?」

 大目に見てあげましょうよ。
 そもそも、本当にやっているのかという疑問もあります。
 だって彼、アルバイトしてないらしいじゃないですか。
 小遣いではなかなか買えないでしょう。
 インターネットで情報集めて、やったふりしてるだけなんじゃないでしょうか?
 いや、無料でゲームを手に入れる方法は確かにありますが……
 彼がそういうことをやっているかどうかについては、まあ、彼の良心を信じておきます。

 「結局、多久沢は何でもてなかったんですか?」

 さあ?
 そういうオーラが出てたんじゃないでしょうか?
 ちゃんとした理由は生々しくなるので決めませんでした。
 誰でも良いと思ってたからじゃないかなあ、と、私は想像します。
 
 「魔女っ娘ネタはどうなったんですか?」

 ごめんなさい。
 ギャグに結びつけるやり方が思いつかなくて出せませんでした。
 うーんうーんと唸っているうちに話がシリアスな展開を見せ、魔女っ娘の入る余地がなくなりました。
 タイミングを逸しました。
 書き直したり、続きを書く機会があれば必ず出します。

 「最終話が唐突すぎる。伏線をもっといれないとダメ」
 
 気をつけます。
 
 今後の予定。
 ちょっと休んで、たまっていた本を読みます。
 5月から、新作を書きます。
 半年以内に書き上げる予定です。

 あと。
 「百年の手紙」について。
 結局「まーち」にかかりきりで、直す時間がとれなかった……
 改稿前バージョンを送る。
 同じ賞に複数の作品を送ると不利だという話もあるけど。


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