2月29日 今日は実家でエルと戯れたのち、友人と会う。喫茶店で話した。 最初はイラク自衛隊派遣の話をしていたのだが、いつのまにやら、 「アニメージュふろくのもえたん」「AK47開発史」「コスプレで既製服使うのって邪道ですよね」「ハリウッド版ルパン三世ってどうなるんでしょう?」「ヤマト車検とか変なのありますけど、松本零士って金に困ってるんですか?」 とかそういう話になった。 充実した時間だった。 いろいろ話してるうちに、「思想の正しさは重要ではない」ということがますます深く確信できた。 思想が違っても友達にはなれるし、この人と話すのが楽しいと思うこともある。 そのことに恐怖を感じる必要はない。人間として自然なことだ。 作品の面白さも同じ。 「ガンダムは戦争に反対してるから傑作です」などというガンダムファンはいないだろう。 ぼくは相対主義者ではなく、この世のどこかに正しい思想があると信じているのだが(信じずに生きていける人のことが不思議だ。恐くないのか? 理屈以前の問題で、どこかに絶対的真実があってほしいと願わないか?)、しかしそれを物語に入れるべきじゃない。 思想の正しさに興味を持っている人間は少ない。 正しい思想を入れなければ、という恐怖を克服することが重要だ。 エゾ共和国の場合、そもそも思想を中心に考えると筋が通らないんだよね。 独立国家を作るとか平等な国を作るとか榎本がいっても、ついていく人間は多くなかったはず。 身分をなくすのが良いことだとか差別は良くないとかいう考えが浸透してなかったんだから。 思想でまとまってしまったらすごく不自然。 箱館政府に集まった者たちを支えていたのは全く別のものだったはず。 たとえば怨念でもあり、死んだものとの約束、そして生身の人間同士の絆。 ということを常に念頭において書こうと思う。 次に問題なのは、軍オタ的というか、兵器のハードウェア描写をどうするかっていうことなんだよね…… 幕末ファンは兵器描写など読みたがってないようだ。うーん困った。 人物とからめて必然性を与えつつ書こうと思う。ここで主人公が大鳥圭介であることが生きてくる。 |
2月28日 猫耳さんが今年もまた眼鏡っ娘イラストを送ってくれました。 ありがとうございます! さて、本の感想。 小川一水「ハイウイング・ストロール」ソノラマ文庫 この本は、「飛行機で飛ぶこと」、そして「RPG」に対する深い愛と理解の産物だ。 舞台は遠い未来の地球。世界のほとんどはガスの海に沈んでしまった。人間は、かつて高地だった「島」で細々と暮らしている。 人々の暮らしを支えるのは、「ショーカ」と呼ばれる戦闘機乗りたち。ショーカは第一次大戦を思わせる複葉機に乗り、空を飛び回る獣「浮獣」を狩って回る。「浮獣」の死骸から食べ物を作り、服を作り、機械を作る。 主人公は喧嘩にあけくれるやさぐれた少年。しかし美人ショーカにスカウトされて人生が変わる。初めて経験する飛行。戦いの日々。達成する喜び、そして挫折と成長。次第に明らかになる相棒の過去。深まる絆。そして二人は戦いの果てに…… とまあ、こんな話なんだけど。 この世界は、どう考えても「RPG風の世界」を翻案というか、味付けし直したものだ。 街から離れるとモンスターがウヨウヨ。 ダンジョンに潜るとさらにウヨウヨ。 ダンジョンによって敵の強さが違う。 命知らずの冒険者たちがモンスターを狩って、宝を手に入れる。 酒場に冒険者が集まって騒ぐ。 戦闘機が4種類に分かれててそれぞれ特性が違うので、パーティを組んでダンジョンに行く。 もちろんダンジョンにはボスキャラが。 剣が戦闘機に変わってるだけで、まさにそういう世界だから。 小川一水さんが「ラグナロクオンライン」にはまっていることは知っていた。 かつてロードス島戦記から名前を拝借したくらいだから、ファンタジーRPGみたいな世界そのものがすきなのかも。 その「好き」の結果がここにある。 いきいきと説得力を与えられたRPG世界。 空を駆けるモンスターと冒険者が、果てしない戦いを続ける世界。 その戦いの描写も実に鮮やかなものだ。欠点があるとすれば、敵である「浮獣」の外見イメージが今ひとつ見えてこないこと。文章でだめなら、イラスト図鑑つけても良かったんじゃないかな。戦闘機は全部イラスト化されてるんだから。 ストーリーは王道中の王道。SF的な味付けもある。 さらに印象に残ったのは、萌えキャラづくりに挑戦していることだ。 萌えのツボを掴んできたらしい。かわいいと素直に思える女の子ばかり。 結論。肩の力を抜いて読める娯楽作。おすすめできる。 設定マニアやろうと思えばいくらでもできる、同じ世界でいろいろ書ける、そんな発展性も気に入った。 |
2月21日 ある日の会話 某「しかし、アニメでロサ・キネンシスとかいきなりいわれても困るよな」 ペンネームC「ロサ・キネンシス……?」 某「え、知らない?」 ペンネームC「ちょっと待て、推測する。ロサ・キネンシスは……語感からして新手のモビル・アーマーだな!」 某「なんでだよ!」 ペンネームC「たぶん語感からして色は白だ。かなりでかいぞ。百メートル近いな。きっと高機動なんだろうな。ここにこんな風にアポジモーターがあって、口の中にメガ粒子砲が、そして背中にIフィールドジェネレータが! サイコミュで触手とか伸ばすわけですよ!」 某「違うって! ロサ・キネンシスというのはマリア……」 ペンネームC「マリア!? そうかザンスカールの機体か!」 某「もう好きにしてくれよ……」 カンザキさんに貸していた「龍騎兵」「猫の地球儀」がかえってきた。 猫の地球儀はいわずと知れた秋山瑞人だが、「龍騎兵」(青木基行、学研歴史群像新書)については説明が必要かもしれない。 中国の架空歴史を描いた小説だ。 この世界の中国は我々の世界の中国と全然違う。漢の劉邦が漢帝国を作った後すぐに死んでしまい、漢は蜀・楚・呉などの小国に分裂。そのまま千数百年が過ぎた……という世界なのだ。そう、ローマ帝国が分裂を繰り返してヨーロッパ諸国となったように。その代わりこの世界ではローマ帝国は崩壊せず残っている。 ときに16世紀。大陸制覇の野望を持つ者が現れた。 蜀の飛龍。一介の傭兵屋から将軍にまで上り詰めた男。そのひげ面の下に巨大な善悪を合わせ持った、カリスマあふれる豪傑だ。 彼の覇業の前に立ちはだかった一人の女! 燕の驃騎将軍・姫小宝。 混血で、褐色の髪を持つ美女。遊牧民として育ち、馬と戦いを愛し、とても優秀だがそれでいてどこか抜けている、たくましい女性軍人。 二人の対決を軸に、大陸各所で繰り広げられる戦いを描いた、一大戦争大作だ。 まず、世界構築のうまさに舌を巻く。「中国が細かく分かれ、ローマが残り、墨家が強い力をもつ」まったく違う歴史なのに、「なにこれ?」には決してならない。そういう世界があってこういう人たちがいるんだということが、生き生きと伝わってくる。 それはもちろん、キャラの魅力と表裏一体だ。 軍人、王、姫、宗教家、学者、商人……理想家も悪党も現実主義者もでてくる。すべての人物に血が通っている。 これには作者の、シニカルでありながら暖かいまなざしが一役かっているのかもしれない。 どうも売れ行きが悪かったらしく、全体の半分書いたところで中断している。 けれど、とても面白い本だ。 いまならまだネット書店で買える。本屋にならんでいないのが悲しいが、注文してでも読む価値がある。 銀英伝や皇国の守護者などが好きなあなたに、ぜひ読んでほしい。 歴史の面白さとは、すなわちこれだ。 |
2月17日 ジャンプでやってる「武装錬金」、どこかで見たことあるノリだなと思ってたら、そうだ、タツノコプロの路線だ。 言葉遊びというかぶっちゃけダジャレ的で、ふざけてるんだけどでもどこか突き抜けて味のあるネーミング。 爆爵はないだろ爆爵は。 どこまでマジでどこまでネタなのかよくわからんキャラ。ダサカッコイイ。 苦笑しつつもドキドキ。 しかし、秋水くんの「サムライソードX」ってのは、「SAMURAI X」(「るろうに剣心」は英語バージョンではそういうタイトルなんです)からとってるのかね。 あんまり関係ないけど、今度上映される実写版キャシャーン面白そうだね。 予告編見て、「うひょー」と感嘆。 全体にただよううさんくささが実にたまらん。 早川書房「SFが読みたい! 2004」を読んだ。 なんといっても「小川一水・秋山瑞人・冲方丁」の座談会が面白い。 三者三様の個性が出ている刺激的なものだ。 あとの二人は前向きに夢を語ってるのに、秋山瑞人ひとりだけやけに身もふたもなくて、微妙に毒。 「髪型とかをかいて読んでいる人のピンポイントなツボにはまってしまうのも嫌ですし」とか。 「なんでもいいから女の子出せない? っていわれた」とか。 「イリヤの髪型なんて設定してません。鼻血の方が大切なんですよ」とか。 三人とも、作品から受ける印象とだいぶちがう。 一番「ほう!」と思ったのは、小川さんの発言かな。 これからに大きな期待がもてそうだ。 |
2月15日 本の感想。 有川浩「塩の街」電撃文庫 あと一週間で世界が滅びます。人類はみんな死にます。 あなたはどうしますか? 「その一週間を悔いの無いように生きる」 「好きな人と最後まで一緒にいる」 「何が何でも滅亡を防いでみせる」 「俺だけでも生き残ってやる」 「あの子だけは死なせない」 答えは何でもいい。正しい答えなどない。だがとにかく、はっきり答えられる人間と答えられない人間がいる。 この物語には、この問いにはっきり答えられる人間だけが登場する。 絶対的な滅びをつきつけられて、それでも人であることを失わず、いやまさにこれこそ人間と呼びたくなる優しい輝きが、この物語には描かれている。 「あと一週間でみんな死ぬなら、あなたはどうしますか?」 こう訊かれて答えられるなら、あなたはこの本を読むべきだ。きっと誰かに共感できるから。 答えられないなら、やはり読むべきだ。答えるというのが美しく、しかし辛いことであると描き出されているから。 ……という感想文を書くつもりだった。 しかし、後半を読んで考えが変わった。 第一話は見事だ。 「人間が塩になっていく」という滅びが世界を襲い。その中で身を寄せあって暮らす少女と、青年。 ふたりが出会ったある少年は、まさしく「答え」をだした。全存在をかけて。 そこに至る思いが、書かれていないはずのものが確かに伝わってくる。 この調子で最後までやってくれれば名作だったのに。 後半、物語が動き出すと、いや「物語の種類が変わる」と、一気に「……え? はい?」と思ってしまう。 とにかく無理矢理話をつないだような。 前半と後半に強烈すぎるギャップが。違和感が。 設定とか、行動の理由とかが説明不足だ。とにかくホントっぽく感じない。 前半みたいな話なら雰囲気だけでいけるんだけど、後半みたいな話をやるなら、ハードウェアの描写までふくめて説得力は大事だ。それがあまりに足りない。 とても不完全燃焼。最後まで読んだらそんな印象になってしまった。 ああもったいない。 ある日の会話 ペンネームC「ところで君はエゾ共和国になにを求める?」 某「副長受け」 ペンネームC「そ、そうか……他には?」 某「今までスポットが当たってなかった人とかも取り上げてほしい。たとえば額兵隊の星隊長とか」 ペンネームC「それはいい考えだ。どの人物にもファンはいるし、需要はあるんだ。エゾ共和国は、基本的に大鳥圭介ファンのための小説です。それを強く意識して書いてます。大鳥と土方の絆とか。大鳥ファンのための小説って商業出版ではまだないみたいだし」 某「トリさん受けなんだ」 ペンネームC「いや、なんで君は全部そっちの方向に持っていくのか……」 某「あなた人の趣味どうこう言えるんですか?」 ペンネームC「ごめんなさい(即座に平伏)」 某「わかればいいんです」 いやホヒィ小説じゃないけど。 でも、まあ、全く無関係でもない。 最近ピンと来たことが二つ。 まず、読者をしぼる必要があるということ。 漠然と面白いもの、読者が楽しめるもの、では書いてる本人が苦痛なだけでろくなことにならない。 バイクだって戦闘機だって「優秀なものを作れ」では作りようがない。技術者は頭を抱えるだけだ。 なにをするのが目的か? 何ができれば優秀なのか? をもっと細かく決めるべきだったのだ。 まーちは読者を猛烈に絞って、オタによるオタのためのオタ小説を書いた。そこそこ評判がいいのはそのせいだろう。 ずばり、「妄想戦士ヤマモト読んでる奴向け」。(でもこないだヤマモトに出て来た執事はうちのより面白いよな) エゾ共和国も同様に読者を限定した。 これがうまく行くかは書いてみないと分からないが、明確な指標が見つかったので自信はついた。 もう一つは、人間は思想で動くものじゃないんだ、ということ。 歴史上の人物誰々さんが好きとか、あるいはもっと身近の友達誰々さんが好きとか、それは相手が持ってる思想の善悪とは別問題なんだ、と。 それに気づいた時、世界が広がって見えた。罪悪感が消えた。 そうだ、主人公に正しい思想を持たせる必要はない。 また、主人公を思想に基づいて行動させる必要もない。 実際に革命戦争とかやってる奴だって、なんとか主義で動いていたとは限らない。 ここに仲間がいるから、あいつは友達だから、そういう人も大勢いた。 なるほど、国家権力を倒して理想社会を作るというヴィジョンは、今の読者にとって魅力的ではないだろう。 でも、誰かを大切に思う気持ちはどんな時代でもなくなったりしない。 などということを考えながら書いてるのがエゾ共和国です。 |
2月11日 風邪気味。 「滋養をつけるため」と自分に言い訳して、久々に腹一杯ご飯を食べた。 今日も原稿書き。 エゾ共和国は現在85枚。 電撃で大賞をとった「塩の街」を読んでいる。 とても地味なタイトル。 興味をひかれなかった。 しかし読んでみると、なんか泣けそうな雰囲気。 名作の予感がする。まだ半分も読んでないから断言はしないけど。 詳しくは土曜あたりに書きます。 |
2月9日 吉野家に行ってみたら、焼き鳥丼がなくなっていた。 あんなにおいしいのに! 牛丼より先に消えた。幻のメニューだ…… 昨日の日記に誤りがありました。 小説「鬼神新選」の作者は「内海まこと」ではなく「出海まこと」さんでした。 ごめんなさい出海まことさん。 お詫びにシャドウプリム買います。 それから、 明治維新(ご一新)直後の京都で、お尋ね者として戦いと逃亡の日々を送る新八に、突然差し出された救いの手。 京都じゃなくて、東京でした。 ペンC、ボケすぎ。 |
2月8日 まだウイルスメールがバカスカ来るー!! 「北天に誓いて エゾ共和国建国記」は、うんうん唸ってようやく70枚。 まだ起承転結の起です。 さて、本の紹介。 内海まこと「鬼神新選 京都篇」電撃文庫 新選組の生き残り・永倉新八を主人公にした伝奇アクション。 明治維新(ご一新)直後の京都で、お尋ね者として戦いと逃亡の日々を送る新八に、突然差し出された救いの手。それはしかし、魔の世界への誘いだった……と、ここからはもうノンストップ。戦い戦い、謎また謎。中だるみが全くない話だ。 1冊丸ごと導入部だから、早く続きがでないと困る。 面白かった。文章のテンション、戦闘描写の勢い、キャラ描写のメリハリ、いずれも大したものだと思う。この作家の本はいままで読んだことがなかったけど、損をしていたかもしれない。よく読んでみるとキャラの内面描写に使ってる文章の量がずいぶん少ない。少ないのに効果をあげているのは高度なテクニックがある証拠だと思う。 料理の仕方は全く違うけど、ぼくの小説も幕末っていうか明治初期を舞台に、新選組が出てくる戦いの話だから、この本を意識せずにはいられない。 最近気づいたが、民主主義や平等といった理念をそのまま愛せる人間はとても少ない。友情や恋愛、約束といった個人同士の結びつきの方がずっと普遍的だ。だからぼくの書き方よりこっちのほうが受ける。それが確信できて恐ろしかった。 幸い、ぼくも理念ではなく、もう少し共感を呼べるであろう「話の軸」を見つけた。 サイトの紹介。 きらら SF大好き、小説家を目指してる、イラストだって書いちゃう、SFやライトノベルやアニメについて突っ込んだ考察もする、コンピュータに詳しくてプログラム組んで……まさに多芸多才。 そんなサイトです。 自動的にニュースを集めて更新する「みさきニュース」、話題豊富で濃い日記、ゲームと人工無能まで置いてあります。 盛りだくさん。 |
2月7日 ウイルスメールがドバドバ来るよ! 今日だけで10通以上! ちゃんと対策しようよみんな! ぼくのパソコンはMacだからひとまず安心だが…… Macで思い出したけど、アップルコンピュータの社長が日本マクドナルドのCEOになるというニュースが。 Mac売ってた人がマックで売るよ! こんな関西では通用しないダジャレのために社運をかける日本マクドナルド! すごすぎ! 最近、ヤフーオークションをはじめた。 ゲームなどをどんどん売っている。 おお、なんと高く売れるのだ。 これで生活の足しになる。 変なのが出品されてて、観てるだけでも面白い。 なんか意外な出会いもあった。世の中せまい。 ある日の会話 ペンネームC「自衛隊がイラクで活動をはじめたねえ」 某「派遣に反対はしないのか?」 ペンネームC「今反対しても士気が下がるだけで良いことはないよ。……それより心配してるのは、自衛隊がイラク民衆をがっかりさせないかってことだ」 某「ああ、『雇用を与えてくれると思ってたのに』って奴か」 ペンネームC「そうじゃなくて、『なんで日本人なのにチョンマゲ結ってないんだ? 手裏剣投げないんだ?』って」 某「そこまで古いイメージもってないよ!」 ペンネームC「じゃあ、『日本人はソニーの家電製品と合体してて、顔からDVDが出る』とかそういう路線でいこう」 某「路線ってなんだよ! なに勝手に機械の体にしてんだよ!」 ペンネームC「いや、外国の人は日本人に偏見持ってるからねえ。だいたい、チョンマゲくらいしてないと対抗できないんだよな」 某「どういうことだ?」 ペンネームC「だってほら、オランダ軍なんかは全員頭の上にチューリップだし……」 某「偏見持ってるのあんただよ!!」 |
2月4日 今日、ロシア大使館の前を通った。 ここには警察が常駐している。右翼がよく押し掛けてくるのだ。とくに8月。 今日も来ていた。 右翼の黒バスが交差点のど真ん中で止まっていた。女の声で叫んでいた。 「……ソビエトは正当な国際条約であった日ソ中立条約を破り、日本に対し侵略を行い、正当な領土である北方四島を奪い取るという蛮行におよびました。我々はこれに強く抗議し領土の返還を求めるものです……」 むう、右翼元気いいな。でもなんで2月4日? その後九段坂で、黄色い箱を乗せた街宣車をみかけた。 キンキンした、妙に間延びした、特徴的な喋り。 「ジョージ・W・ブッシュはー、ギローチンでー、首をー切られてー死ぬーべきーだー! 唯一神、またーよしーイエスはー!」 うわあ、こっちはもっと元気いいぞ。もはや元気というレベルではない気もするが。ブッシュは腹切らなくていいんですね。相手の文化に合わせてくれる、さすが又吉イエス。でもアメリカはギロチン文化圏じゃないでしょ。 本の紹介。 中野不二男 五代富文「日中宇宙戦争」文春新書 こないだ、中国が有人宇宙飛行を実現した。 その一方で日本のロケットは衛星打ち上げに失敗。 はたしてこれは何を意味するのか。 「日本の宇宙技術はもう駄目だ、中国のほうが上なんだよ」と戦慄する者がいる。 「単なるソ連の真似。こけおどしだ。日本が本気を出せばあんなこと簡単にできる」とふんぞり返る者がいる。 この本は、その意見のいずれもが間違っていることを教えてくれる。 中国がやった有人宇宙飛行はどういう意義があるのか? それはどの程度技術的に高度なことなのか? 日本にもできるのか? ぶっちゃけ日本と中国の宇宙技術はどっちが上なのか? 日本の宇宙開発計画にはどんな問題があるのか? いつまでたってもロケットが落ちまくるのはなぜ? 普通の人がポケットマネーで行けるような宇宙旅行はいつ実現するの? そして……日本の宇宙開発はどこへすすむべきなのか? こういったことを分かりやすく教えてくれる、好著。 実に厳しい現状と、わずかな希望がこの本には記されている。 |