怪しい日記 西暦2004年5月
5月31日
 うわあ、週刊少年ジャンプの「スピンちゃん」が打ち切られてしまいました。
 あの自虐的なギャグ好きだったんですが。
 やっぱりこのへんはジャンプとサンデーの色が違うってことでしょうかね。
 主人公(?)の女の子が眼鏡かけてるのに全く萌えない(そもそも女に見えない)という大きな欠点はありましたが、笑えることは間違いなかったのですがねえ。マッドサイエンティストものの中でも特に好き。
 まことに残念です。
 こうなったら、せめて「武装錬金」だけでも打ち切られないように応援を……でもあれはクライマックス以外なにものでもない盛り上がり方ですよ……「地球生命の頂点」なんて奴がでてきちゃったんですから。それ以上の敵と言えば……「全宇宙の根源的な悪のエネルギー」とか……(笑)
 まあそれは冗談ですが。打ち切りではなく、ちゃんと話が盛り上がって、決着が付いて、おのおのもキャラを生かしきって終わるなら、たとえ連載期間が一年であっても、幸福な作品であったといえるのでは。
 とまあ、私はすでに「有終の美を鑑賞」モードに入っちゃってますけど……こんな想像、超えてほしいです。
 

5月29日
 沖田雅「先輩とぼく」(電撃文庫)を読んでます。
 気弱な少年と、勝ち気な美少女の脳みそが入れ替わっちゃう学園コメディなんですが……
 キャラの立て方がとにかくうまくて、実にいい感じです。
 好感のもてる変な奴が次から次へと出て来て、トホホでおバカなんだけどまったりした空間をつくってくれます。
 「OMR」というオカルト研究会をつくっていて、好奇心の塊で、学校一の美少女で、男言葉で、自分を慕う後輩のことを憎からずおもっているんだけどちょっと意地悪して……なんて言えばいいんでしょう、外見ハルヒで中身が水前寺で、うーんちょっと違うな……という「先輩」のキャラクターだけで十分魅力的なのですが、周りの連中の濃さが全然「先輩」に負けてないのも大したもんです。
 「まーち」とまったく同じではないにせよ、ほとんど同じジャンルの楽しさを、より濃密にもった作品。
 なるほど、この作品に負けたんなら仕方ない。私は納得しました。

 久美沙織さんのコラム「創世記」第15回を読んで。
 「ライトノベル」なんて呼び方していいのか、それってばかにしてるのと違うか、わたしはむかつくぞ、という意見をきくのは初めてではありません。
 「ちゃんとした小説が書けないから言い訳に使ってるだけではないか」という意見すら目にしました。
 そう思われてしまうのは悲しいことです。
 もっと前向きに、「ライトノベルだから出せる楽しさ」を追求して、誇りをもってライトノベルと名乗れるようになればいいのに。
 「ライトノベルは単にアニメ絵がついてる小説じゃない。もちろん手抜きの劣化小説でもない。近代文学の限界を超越した、キャラクター小説という新たな可能性だ!」と高らかに叫んだ大塚英志さんのように。
 私の場合、ライトノベルと呼ばれる電撃文庫とかファミ通文庫とかたくさん読んでる割に、「この本はライトノベルである」という認識はもってなかったのですが。私はただ、「私が読みたいSF」を追いかけた結果電撃文庫とかにやってきただけです。 
 しかし読者の一人でもあるので、「なぜ私は、ハヤカワのSFではなく電撃を選んだのか」という事には答えられるはずです。
 はずなのですが、「これだ!」という答えが出せなくて困ってます。

5月26日
 私は東京都民です。
 といっても23区ではなく多摩の町田市ですが、いちおう東京です。
 多摩は千葉なんかには負けない。そう思っていました。
 しかし、今日仕事で千葉市にいって、自信を失いました。
 千葉駅周辺の上空を、我が物顔に滑るモノレール!
 しかも懸垂式!! 感覚的には、飛んでますー! 「空間鉄道」とか謎の単語が脳裏をよぎります。
 この非日常感! 異世界感! こんなのが普通の町並みと溶け合って!
 多摩都市モノレールも悪くはありませんが、やっぱりモノレールはぶら下がらないと! 駄目ですよまたがっちゃ!
 多摩の負けです。私は千葉市民に憧れます。

 本の紹介。

 桜坂洋「よくわかる現代魔法 ガーベージコレクター」スーパーダッシュ文庫
 傑作です。
 負けたことがあり、挫折したことがあり、つらい記憶があって、それを忘れたいと思っている人におすすめです。
 いいえ、過去に一度でも思ったことがあるなら、きっと心が震えます。
 これは敗者の物語です。
 正確には、きちんと敗北することすらできない者たちの物語です。
 恋を終わらせることができない少年と、
 夢破れ、でも夢をあきらめられなかった中年と、
 そして……
 「ガーベージコレクター」。
 謎めいた言葉が何度もくりかえされます。
 ガーベージコレクターさえあれば私たちは進める。
 ガーベージコレクターが活動する時、思い出たちは最後の挨拶をする。
 ガーベージコレクターは蜘蛛で、屑を集めて捨てる。
 ガーベージコレクターは遍在する。
 ガーベージコレクターが渋谷の街を覆うとき。
 彼らは、どんな形で「進む」ことを選ぶのか。
 疾走感と詩情が両立した完成度の高い作品です。
 そしてもう一つ、この物語はラブストーリーでもあります。
 引っ込み思案で醒めてるけど燃え尽きてはいない少年と、
 ぽややんとしているけど、本当は知性と闘志あふれる眼鏡のお姉さん。
 すてきだ、すてきな心のつながりだ、読み終わった時、私はそう思うことが出来ました。

5月23日 
 昨日と今日、小説のプロットを練りながらあっちこっちへ行ってました。
 アフガニスタン料理店「神田カブール食堂」で飲み会とか。酒飲んでない人のほうが多かったので食事会かも。
 店はなかなか好評でした。2時間飲み食いして、こりゃ結構な額だなと思ったら一人あたま1500円。
 リーズナブルですな。
 
 小説とは直接関係ないんですが、狭山事件というえん罪事件について調べまして。
 40年たっても、身の潔白を叫び続けるひとがいて、協力者が大勢いて。
 私は以前、「どんな悲しいことがあっても、新しく悲しいことが起これば忘れられ、上書きされてしまう。悲劇は消費される。私は何よりもそれが悲しい」みたいなことを書きましたが。
 「そうでもない。忘れない人だって大勢いるのだ、マスコミがとりあげないだけ」かも。
 今は幸い、マスコミとは違う経路で情報が入手できるわけですが。
 それでも、自分から調べようって人間は少数派です。
 受け身の人間にとって、報道されないものは「存在しないもの」です。
 情熱ってすごいと思い、しかし限界もあると感じた一日でした。
 
 本の感想。

 高瀬彼方「ディバイデッド・フロント2」角川スニーカー文庫
 どこか不遇な作家、内気/うじうじ系の女の子を描かせると不思議な力を発揮する、高瀬彼方さん。
 高瀬さんの、ひょっとしたら作家生命かかってるのかな、という本がこれです。
 「憑魔」との死闘に投入された、明日をも知れぬ若者たち。
 それなのに彼らは信じあい、からかいあい、ときに嫉妬しあい、そして恋をする。
 凄惨な背景のなかで痛々しいほどに青春している彼らが、その健気さが印象に残りました。
 状況を恨んでもどうにもならない以上、適応するほかないのだ、当然の結果に過ぎない、とわかっていても。
 あと、今回出て来た「自衛隊の広報さん」の立ち位置が面白かったですね。嘘くささを感じながら作品を作って、「読者」から、きついしっぺ返し。
 たかが作り手が、価値を決めるなんて何様かと。
 当然のことですが、あのタイミングで言われると痛いですな。

5月19日
 明日の台風がこわい。

 久美沙織さんのコラム「創世記」をむさぼるように読んでます。
 25年も前、まだライトノベルという言葉どころか、「アニメ絵ついた小説」すら全く一般的でなかった時代にデビューし、少女小説・SF・ファンタジーを書き続けてきた大ベテラン、久美沙織さん。
 小説教本「新人賞の獲りかたおしえます」三部作でも名高い。というより私にとってはそちらの印象が強い方です。
 「創世記」は久美さんが自分の作家業や業界の変遷についてかたるコラムなのですが……いやあ、奔放な面白さがあります。
 軽い文体で、雑談の雰囲気ですが、でも思わず襟を正して聴き入ってしまいます。
 チャンスをつかんでデビューしたものの、業界のいろいろな常識とぶつかって苦しんで、乗り越えて。
 若い仲間たちと、和気あいあいとしながらも研鑽しあって。
 読者が愛してくれるならこちらも愛そうと努力し、しかしやがてそのやり方に限界を感じて。
 そして、「自分と読者の感性は、すごく離れてる」「わたしはふつうのひとじゃないんだ」と気づいて、コバルト文庫の王道から去る決意をして。
 このあたりからどんどん深く、そして熱くなっていきます。
 第12回「残酷なフォワードのテーゼ」は、久美さんにとってSFとは何であるかという表明であり、「SFが与えてくれる感動」の本質に迫ろうという力作です。
 「じゃあ、私はSFファンじゃないのかな。SF的なネタが好きなだけのニセモノかな」と不安にさせてくれる文でもありましたが。
 そして第13回「シタヨミ職人たちに花束を」。
 作家志望者をみちびいて、作家を育てる……ということについてのまとめです。下読み、小説講座、「おしえます」シリーズの執筆など、久美さんは日本でも一、二を争うくらい「作家志望者についてよく知ってる」方です。この人が書かなかったら誰が書くのか、という回です。
 内容は。「おしえます」シリーズを読んでる私にとっては「すでに繰り返し語られていること」ですが。
 しかし、その真剣で、謙虚で、物語を愛し、小説を愛し、「小説を書く人」を愛している態度に。
 私はただ胸を打たれました。
 とくに最後の部分。うずくまってマジ泣きですよ。
 章タイトルをみたときから、なんとなく「来るぞ」とは思っていたのですが。

5月15日
 iBookのイブキちゃん、ふっかーつ!!
 おかえりなさい!
 1か月かかるという話でしたが2週間で戻ってきました。
 これは本来2週間で直せるものをあえて1か月と言って、ものすごく早いように見せかけるテクニックでは。やるなアップル。
 
 この大切な半月間にピンチヒッターをつとめてくれたDELLのパソコンにも感謝を。ありがとう。
 ハードディスクからやたらガリガリと音が出ますが、具合悪いんじゃないでしょうか。お大事に。
 
 さて、本の感想。

 大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!」PARCO出版
 芥川賞から始まって江戸川乱歩賞、ファンタジーノベル大賞、角川NEXT賞まで、さまざま小説賞の傾向や舞台裏についておもしろおかしく解説した本。軽い対談形式だということがとてもうまく効果を発揮しています。漫才をきいてるうちに文学賞に詳しくなって、「次のこの賞はどんなのだろう」という楽しみが今まで以上に広がる、そんなすてきな本です。

 「文学賞の選考は、選考員にキャラ萌えして味わえ。珍発言を連発したり、とにかくワンパターンのケチをつけたり、味のある発言をしたり、いろいろいる」
 「自分で製本して著者近影つけて、『選考員騒然』とかキャッチコピーつけてる応募原稿にロクなのはない!」
 「でも一つだけ例外があって、日本ファンタジーノベル大賞の『鉄塔武蔵野線』は自分で撮った鉄塔の写真がベタベタ貼ってあって重さが4キロもある極めつけの変な原稿で、でも読みはじめたら抜群に面白い」
 「ファンタジーノベル大賞はアニメ化するような剣と魔法の世界をもとめていたのに受賞する作品は全然違うのばっかりで、でも分類不能の面白い小説が出てくる貴重なところ」
 「地方文学賞って山ほどあるんだから、いっそのこと県ごとの文学賞を予選にして、予選勝ち残った作品集めて決勝をやればいんだよ、文学甲子園だ」

 ……とまあこんな感じです。
 ライトノベルの賞についてはちょっとしか書いてないのですが、「メフィスト賞作家とライトノベルのからみ」「なぜ角川NEXT賞はうまくいかないのか」などはライトノベル好きにも楽しく読めるでしょう。

5月9日
 あげはさんにトップ絵をかいてもらいました。
 うるわしき馬車道ウェイトレスです。たまらんです。あああ。感動。
 ありがとう、あげはさん。
 馬車道ウエイトレスを拝む会とか結成したくなりました。
 背景も矢羽根紋にあわせて、矢。
 みんなも馬車道でペリー来航スパゲッティとかモダンガールスパゲッティとか食べましょう! 名前は変だけどおいしいですよ! もちろんウェイトレスさんを控えめに観察することもわすれてはなりません。
 すいませんまわしもんでした。

5月8日
 まずおわび。
 6月に新作を発表すると書きましたが、すいません、遅れます。
 
 このライトノベルがすごい!の集計結果について。
 イリヤ強すぎです。
 いかに熱狂的ファンが多いか。
 2位につけた「七姫物語」という作品は読んだことがなかったのですが、熱い支持を見てぜひ読みたくなりました。
 私の一押し「ウィザーズ・ブレイン」が今ひとつの結果だったのが残念です。
 
 本の感想。

 町井登志夫「爆撃聖徳太子」角川春樹事務所
 ブッ飛んだタイトルですが、中身も負けてません。
 作中より、聖徳太子の台詞を引用します。

 「僕は厩戸皇子! イエスキリストの生まれ変わり! だったらいいなああああぁぁぁぁぁっ!」
 「右の頬を打たれたら左の頬を差し出すが良い。顔面中心を狙いにくくする効果が期待できる」
 
 二つ目の台詞を読んでふきだしてしまった瞬間、私は作者の術中に落ちました。
 要するに、
 「天才・聖徳太子が、智謀の限りを尽くして隋帝国の侵略に立ち向かう。ところが彼は天才だが神がかり的な奇人変人。ぶっちゃけ電波。凡人の部下・小野妹子が振り回されてトホホ」
 という話です。
 タイラーとヤマモトみたいな。
 太子の存在以外は、古代の文化といい戦闘といいきわめてリアルに描かれています。
 だからこそ対比が際立ち、「えー。えー。やっちゃうのー!?」と読者は驚愕しつつもワクワクしてページをめくるのです。
 きっとあなたも、読み終わる頃には太子の口癖である、
 「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁい!!」
 が頭の中でガンガン響いているはずです。
 っていうか、ほんとに頭から離れないんですけど!
 うるさいのは、こっちだぁぁぁぁぁ!
5月5日
 私「今日は子供の日だねー」
 某「そうですね。まあ、子供どころか彼女もいない人には、何をどう祝えばいいのかちょっと微妙な日ですけど」
 私「……なんか妙にトゲがあるんだけど……」
 某「そういえばこないだ子供が道端でライダーごっこやってましたよ」
 私「いまの子供でもやるんだね。どのライダー?」
 某「それはちょっと……ああいうの見ると、あー子供って無邪気でいいなーと思いますよね。私も小さいころは『大きくなったらアンパンマンになるんだ!』とか思ってましたよ」
 私「カニバリズムに興味があったんだね」
 某「ありません! まあ彼女どころか友達も少ない人にはわからないでしょうけど」
 私「何できみはそんなに怒ってるんだ!?」
 某「どうせサンタクロースとかも、小さい頃から『嘘に決まってる』って思ってた夢のない人でしょ?」
 私「いや、ぼくは夢のある子供だった。『BASTARD!』の呪文を毎日暗誦して、いつかこれでいじめっ子を皆殺しにするんだと思ってた。夢があるだろう?」
 某「わたし、帰ります
 
 結局ゴールデンウィークは本を読んで原稿書いて、それだけで終わってしまいました。
 過ぎてしまえばあっという間です。

 いままでずっと「ペンネームC」という名前を使ってきましたが、サイトの改装にあわせて「増田淳」に切り替えようと思います。いきなり変えるとみんな混乱するので、しばらくはペンネームC/増田淳って感じで併用しますが。
 新しい名前もよろしくおねがいします。
5月4日
 今日もまた、原稿を何度も何度もいじりまわしてました。
 6月には新作をお見せできるのではないか、と思います。

 借りてきたパソコンの調子がいまいちです。
 OSの調子というべきでしょうか。
 「例外0Eが発生しました」「システムがビジー状態です」「メモリーが不足してます」とかいってよく不安定になります。
 これだからウィンドウズMeはダメなんですよー。
 まあMeたんは萌えますが。
 一番お気に入りなのが95たんだったり。
 
 今日読んだ本。

 富永浩史「ペイル・スフィア 悲しみの青想圏」ファミ通文庫
 泣きはしませんでした。しかし胸が苦しくなりました。
 ユーリ。望まない超能力に苦しみ、心がひねくれてしまった少年。
 セピア。壊されても壊されてもユーリのそばにいる、旧式のメイドロボット。
 地球から追放されたふたりが、「いらない」と言われてしまった二人が、機械少女たちとのふれあいによって変わっていく、とても清らかな印象のあるドラマです。
 悔しさと後悔の物語であり、ほろ苦く、けれどどこか暖かい物語です。
 読んでる最中に何度か、心の奥底がかきむしられるような痛みに教われました。
 それは感動の一種でもあったでしょう。
 しかし敗北感の一種でもありました。
 これを書いたのは私ではない。その事実が重くのしかかってきました。
 私が書くべき話だったのに。
 書かなければいけない話だったのに。
 読んでみればわかりますが、私が以前書いた「百年の手紙」と似ているんです。
 だからこそ、敗北感は深かったです。
 「青想圏」という造語も味わいぶかい。
 欲をいえばもう一人くらい眼鏡かけててほしかったです。
5月3日
 サイト改造の一環として、創作小説を外してみました。
 あと画像とか貼ってみたり。
 これでトップがだいぶすっきりさわやかになりましたよね。
 それはいいのですが、何がどう「創作国家」なのかよくわからなくなりました。
 
 新城カズマ「狗狼伝承」(富士見ファンタジア文庫)を読み返しています。
 ぼろぼろ泣きながら。
 悲痛。運命。苦闘。決意。友情。そんな言葉の延長線上にある、しかしそんな言葉をいくら並べても描きえない想いを、たっぷり噛み締めました。
 ライトノベル的な技法、すなわち台詞とモノローグだらけの心理・人間描写を、とことんまで研ぎ澄ませた傑作。多感で、傷つきやすくて、それでもめげない少年少女を、子供であるがゆえに走り出すものたちの美しさを、ていねいに描いた作品。壮大で緻密な世界を構築しておきながらチラチラッとしか見せない、妄想力を激しく刺激する作品。
 ……と私は思っているのですが。
 しかし同意してくれた人は少ないようで。
 続きが出なくなって3年。ライトノベルの常識では、あまりに長い時間。
 どうか、完結してください。
 あんなところで切られたらショックですよ。
 他人にお薦めするには、やはり「ちゃんと終わる」という条件が必要ですし。

5月2日
 「このライトノベルがすごい!」という投票企画が終了しました。過去一年間に出版されたライトノベルのうちおすすめできるもの5本を選んで投票する、という企画です。400人くらいの参加者があったようです。投票結果に応じて書泉ブックタワーでフェアが行われます。っていうかもうフェアははじまってるそうです。
 ぼくが投票したのは5作品。

 よくわかる現代魔法 桜坂洋
 コミカルで萌えるキャラ。抜群の読みやすさ。ライトノベルのお手本。

 ウィザーズ・ブレイン IV 世界樹の街<下> 三枝零一
 無限の想像力とみずみずしい感性、科学と物語のもっとも幸福な融和。これぞSFだ!

 平井骸惚此中ニ有リ 田代裕彦
 独自の世界を構築。

 アニレオン! 3 超科学者はお年頃 葛西伸哉
 笑えます。磨きぬかれ計算し尽くされた、極上の馬鹿話です。

 吉永さん家のガーゴイル 田口仙年堂
 ぷぷっと笑い、うるうると泣いて、心があったかくなります。清涼剤として最適。
 
 今回は新人を中心に選んでみました。だって名声が確立してるひとを紹介したってしょうがないでしょう。
 あともう5冊くらい選びたかったところです。
 
 「このライトノベルがすごい!」は企画自体もすばらしいんですが、サイトで連載されている久美沙織さんのコラム「創世記」も抜群に面白いです。作家生活25年の大ベテラン・久美沙織さんが「ライトノベルとか、若い人向けの小説ジャンルの歴史」をかたってくれる連載です。もちろん自分の体験を中心に。
 熱い! この人は情熱の人だ! いや作家なんだから情熱あるのは当然か、でもすごい
5月1日
 今日も原稿をいじりまわしてました。
 ゴールデンウィークには少し遠出しよう、iBookのイブキちゃんを持って日帰りツーリングにでもでかけ、出先で書けばきっとはかどるだろう……と思っていたのですが、なにしろイブキちゃんが一ヶ月の休暇をとってしまったもので、仕方なく家で書いてます。さすがアメリカのパソコンは休み方もアメリカンですな。
 
 漫画雑誌「ビッグコミックスピリッツ 漫戦」を読みました。
 新人作家を集めて読みきりを描かせ、人気一位になったら賞金百万円、という雑誌です。
 まあ読みきりもけっこう面白いのあったんですが、一番印象に残ったのは漫画じゃなくて、「山田貴敏」さんのスペシャルインタビューですね。
 山田貴敏。「Dr.コトー診療所」で有名ですが、他にも多くの名作傑作を残してきた、20年のキャリアをもつ大ベテランです。とくに画家の少年を描いた「マッシュ 時代より熱く」はぼくのバイブルといってもいい作品で、行き詰まったときよく読み返しています。「創作で人の心を動かしたい」というすべての人間必読の傑作です。
 インタビューは、山田さんが自分の漫画化人生のこと、新人へのアドバイスなどを語るというものでした。
 「自分の信念を曲げるな!」「才能がないから、センスがないからダメだとは言えなくなりました」
 という力強い言葉が勇気を与えてくれました。

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