怪しい日記 西暦2004年8月
8月30日
 こないだ、知人友人で集まって飲み会をやりました。
 
 「名刺の渡し方も知らんのか! 両手、両手!」
 「増田さん、本読もうよ!」
 「人間がわかってないよー!」
 「いい本とダメな本を見極めようよー!」
 
 とかいろいろ突っこまれましたよ。
 とほほ。
 私は小説をなんでもかんでもほめる、というのは前から自覚してました。
 さすがにあれはほめすぎた、北朝鮮なみの誉め方をしてしまった、と後悔することもたまに。
 でも、「すべての作品を肯定的に捉える」という基本は間違ってない、そう思ってました。
 現に本になっている以上私の小説より面白いはずだ、必ず美点はある、何百万もかけて出版された理由がある、はずですから。
 しかし、単に欠点が見えてないということもあるかも。
 どの部分がダメなのか、という話をきいても、「そうかなあ?」と疑問に思ってしまう、認識の壁みたいなものがありまして……精度が低いのでしょう。

 他にもいろいろ楽しい話が聞けました。
 聞けましたが、ちょっと酔っ払いすぎたような気も。

 増田「最近ちょっと部署をかえてもらってですね、待機時間が増えるようにしたんですよ。待機時間中にノートパソコン広げて原稿書いたり、本読んだりもできるわけです」
 某「インモウひろげるわけですね」
 増田「インモウって? 何がインモウなんでしたっけ?」
 某「iBookのことですよ! 自分でネタふっといてそりゃ無いでしょう(2003年4月26日参照)
 増田「ああ……そんなネタもありましたっけ。インモウはダメですよ! インモウって呼ぶの禁止ですよ!」
 某「あんまり街中でインモウとか言わない方がいいですよ」
 増田「いんもーってよぶなー!!!」
 新宿の夜空に吠える増田(29歳自称小説家)。
 ……ごめんなさい、みなさん。
 
 
8月28日
 パスワードを再発行してもらいました。これで更新できます。
 しかし、iBookが直るのはまだまだ先です。
 当分は借りてきたWIN機を使い続けねばなりません。
 Macになれた身でWIN機を使うとひとつひとつの動作に「あー、手間が多い! なんかフォントも汚いし、色も変だし、イライラするう!」と身もだえします。しまいには「キータッチが違うのでうまく入力できない!」などと八つ当たりしてみたり。
 これを「Macってそんなにいいものなんだ」と解釈するか「Mac使ってると心が狭くなるんだな」と解釈するかは読者しだい。
 まあ今後のことを考えて、WIN機を一台買っておいた方がいいのは確かでしょう。
 でも町田ソフマップの中古コーナーで、89000円のiBookG4を見かけて「こんなに安く!」と食指が動いてしまいました。2台買ってどうするんですか自分。
 
 「北天に誓いて エゾ共和国建国記」を中断した理由について、もう少し詳しく書きます。
 半年間いじりまわして100枚しか書けないって時点ですでにダメなんですが、小川一水さんの「復活の地」を読んで、「中断すべきだ」という確信を得ました。
 私には復活の地は書けない。だからエゾ共和国も書けない。
 エゾ共和国建国記って、「復活の地」と同じような素養を必要とするんですよ。
 もちろんストーリーは全然違いますが、「異民族といかに融和するか」「強大な外国といかに交渉し、莫大な金を引き出すか」「民主主義とかの理念だけでは箱館市民はついてこない。どうやって実利をあたえるか」などなどの難問を、榎本武揚や大鳥圭介が現実的に解決していくという物語ですから……つまり方向性が同じです。
 やっぱり国家建設なんてものを魅力的に書くなら社会や文化、経済を緻密にシミュレートした群像劇にせざるを得ないし。
 これから10年、歴史や社会について見識を深めていけば書けるのかもしれませんが。
 
 私の武器は何か、私に書けるものは何なのか、ということを掘り下げれば掘り下げるほど、「架空歴史」から離れていきます。
8月21日
 週刊ヤングジャンプ37/38合併号の「ガールフレンド」原作/外園昌也 作画/別天荒人という漫画を読んで、感嘆。
 息をのむほどに魅力的な眼鏡少女が!
 顔じゃないんです。顔はそんなに美人として描かれてません。
 雰囲気なんです、表情なんです、立ち振る舞いなんです。
 なんということのない話なのに、読み返して、一コマ一コマを目に焼付けました。
 眼鏡少女のとまどいと恥じらいがとてもよく描けています。ある種の残酷さも。
 私の心の奥深いところがチクチク刺されました。心地よい痛みです。
 眼鏡分といいんちょ分の欠乏に苦しんでいた私を、この漫画は救ってくれました!
 やっぱり眼鏡少女っていいもんですよねー。
 すーはー。すーはー。(眼鏡分を深呼吸)
 
 今日はバイクをいじりました。キャブレターとか開けたり。スロットルワイヤー交換。
 会社の同僚に「そんなことも知らねーの!? ああもう、いいよ俺がやるから!」とか言われつつ。
 買って1年7ヶ月、走行距離11万キロ、そろそろご老体、あちこちが傷んでます。
 2ヶ月前の台風で派手にタンクがブッ潰れたので、外見は完全にポンコツ。
 しかし、なんとか15万キロまで乗り続けたいところです。

 あとは相変わらず、短編原稿とプロットを書いては売りこむ日々です。
 売り込み用とは別に、長編になるかもしれないプロットを一つ練ってます。
 チャンスのときに動けるよう、いろいろやっとかないと。
8月18日
 原発の話の続き。
 どうも私の頭の中では「原発そのものが悪い」と「事故をなくすためになぜ全力を尽くせなかったのか」がごっちゃになっていたようです。
 今回の原発事故に対して怒っている人たちは「単に事故じゃない、防がなかった何者か、原因を作った何者かがいる」という方向性の怒りを持っているのであって、原子力という形のないものに怒っているわけじゃない。だから「自動車をなくせ」とは全然違う。
 この「次元の違い」を早く認識するべきでした。
 反戦論だって、戦争そのものを全否定するのとは別に、「すくなくともイラク戦争は避けられた」「一ヶ月早く日本が降伏していれば何十万人も助かったのに」という主張もあるはずで……
 このへんの「なにゆえに反対するか」の精度が低すぎるのも、私が社会派物語を書けない理由の一つですね。
 次元が違うものをごっちゃにするのは、フィクションでメッセージを伝える手段としてよく使われるんですが、作者自身が区別できてないのはダメです。
 しかし、理由を深く考えずに「反対反対!」と絶叫するのは気持ちいいです。「理由」の分析作業は苦痛を伴います。
 そして、仲間との間に亀裂を生んでしまうことも。
 難しいものです。

8月15日
 今日はコミケに行ってきました。
 朝早く起きて、雨が降るなか並んで。
 並んでる最中、となりの人と話しました。新聞配達員のギャルゲー好きで、パソコンをもっておらず、コンピュータやネット全般に疎い人で、「知らない人はこんな認識なのか!」と驚きました。
 しかし今の日本で、それも青年の口から、
「ゲームとか動くのってキューハチですか? ウインドウズ? そういうパソコンもあるんですか? 会社のパソコンもインターネット入ってるんですよ。インターネットって見るのにお金かかるんですか?」
 などという台詞をきこうとは。「インターネット入ってる」ってなんですかそりゃ。
 会場内に入ったら、すぐさま頼まれたものを買い、あとは架空戦記本、馬車道本を買い、知人に挨拶して、あとはコスプレ見ました。
 女性コスプレイヤーの間では「マリみて」と「鋼の錬金術師」が人気でしたね。
 男性はクロマティ高校や変態仮面など、ネタ的なものが多く、注目をあつめてました。
 ああ、そうそう、「武装錬金」のドクトル・バタフライとムーンフェイスもいました。あの連中は勢ぞろいしたら面白そうですね。
 追悼コスプレとかいって「トリニティ・ブラッド」が大勢いるんじゃないか、と予想していたんですが……ひとりも見当たらず。おや? 別の日にはいたんでしょうか。
 なんか体調が悪くなってきたので帰途につきました。
 帰りは、一度乗ってみたかった水上バス。
 船内アナウンスが「サークルの申込書を船内にお忘れになりませんように……」「処分に困るのでカタログを捨てていかないで下さい」とかコミケ仕様で、「うーん、わかってるなあ」って感じでしたよ。
 家に帰ってから、頭痛と悪寒がひどくなり、数時間寝こんで回復。
 しかし、大事を取って、また寝ます。

8月14日
 iBookの調子がおかしいです……
 開け閉めする時、たまにバックライトが消えちゃうんですよ。
 画面は映ってるけど、真っ暗。目を凝らしてようやくアイコンの形が見える。
 一度スリープさせれば回復するのですが。
 いずれ完全に消えてしまうのでは。恐い。
 まだ買って1年4ヶ月しかたってないのに……

 本の感想。
 
 中島悟史「曹操注解 孫子の兵法」朝日文庫
 私の友人カンザキさんが表紙イラストを描いた本です。おめでとうございますカンザキさん。

 「孫子の兵法」を、きわめて現代的な言い回しで解説した本です。
 孫子の兵法を実践し大きな成果をおさめた曹操についても書かれています。
 孫子とは普遍性のある思想なのだな、と納得できる、なかなかの本です。
 「軍隊を否定するのは愚かである。しかし戦争は最後の手段であることも忘れてはいけない」
 から始まって、情報収集の大切さ、兵の心をつかむことの大切さ、外交レベルで有利な状況をつくることの大切さ、戦争を長期化させることの愚かさ、などなどが具体例を挙げて語られ……これをみんなが守れば、結果として世界はかなり平和になりそうですね。だってこれを守ろうと思ったらめったなことでは戦争できませんから。
 
しかし……「アメリカはベトナム戦争に敗れて以来、孫子の兵法も研究している」
 という話を耳にしたのですが……ほんとかなあ。

 イラストの曹操がりりしく、本文中の発言が微妙にお茶目なので、曹操ファンにもおすすめできる1冊です。

8月12日

 増田「……」
 某「どうしたんですか落ちこんじゃって」
 増田「昨日の原発云々は自信があったのに評判が悪かった。しばらく立ち直れそうにない」
 某「しばらくってどのくらいですか」
 増田「明日の朝まで」
 某「回復はやっ」
 増田「それだけが取りえだから」
 某「でも実際、はっきり言っちゃいますけど、増田さんって天下国家を語る能力ないんですよ。社会派きどりはやめたほうがいいと思いますよ」
 増田「きついな君は……そうかもね、頭も良くないし。ミステリでも叙述トリックとか全然分からないから、つまり文章を疑う能力がないのかも」
 某「……えーと、その……ほら、頭なんて弱くても生きていけるじゃないですか、元気出してください」
 増田「そのフォローやめて。かえって傷つく」
8月11日
 美浜原発の事故について。
 私は原発嫌いです。
 エコロジストではありません。1年でガソリンを3000リットル使う人間がエコロジストを自称するのはさすがにサギです。
 原発嫌いのはしくれとして、この事故についていろいろ考えたのですが。
 原発否定論ではなくて、「原発を正当化する詭弁」を思いついてしまいました。
 「あれだけずさんな管理だといわれても、4人しか死んでない! 原発事故で死んだ人間より自動車事故で死んだ人間の方がはるかに多いじゃないか。自動車は1年で8000人の命を奪ってるんだぞ。でも自動車の廃絶を訴える人間なんてきいたこともない。自動車が許されるなら原発も許されるべきだ」
 あきらかに詭弁なんですが、ひっくりかえすためには、
 「いまだけでなく、未来のことも、大事故や廃棄物の恐るべき可能性もちゃんと考えてくれ」
 と言う必要があります。
 言うのは簡単ですが、実行はとても難しい。
 私に言えるのか、私は未来の危険に備えているか、大地震に、病気に、クビになったときに備えているか、そのために今を犠牲にしてるか、と自問したら「いや、やってない!」と答えざるを得ませんでした。
 刹那的な人間が環境保護を訴えるのは、なんか根本的に無理があります。
 やはり、私はエコロジストにはなれそうにありません。

8月8日
 今日は日曜なのに、バイク便の方のお仕事をしておりました。
 いろいろと金が入り用なのです。
 仕事で酷使したせいか、ズボンに穴があいちゃいまして、帰宅途中でジーンズショップによりました。
 うわあ9800円! ズボンが9800円。たかっ。
 ファッションにうとく、「え、スカートに種類なんてあるんですか?」と迷言を炸裂させたことのある私には、高く思えてなりません。
 しかし2万円のプラモデルが存在することには何の違和感も感じません。
 圧倒的少数派の感性でしょう。キモオタ的世界観ともいいます。
 値段にびびって、今日は買うのやめました。
 いずれどうにかしないと。
 まあ、高いものはかっこだけじゃなくて、長もちする……といいなあ。
 とりあえず穴は、ガムテープを裏から貼って……(だめだー!)

8月3日
 
 質問1「えーマジ作家? 作家名乗って許されるのは本出してからだよねー。キモーイ、キャハハハ」
 
 回答
 その喋り方やめてください。なぜか劣等感が激しく刺激されます。

 質問2「朝日ソノラマに持ち込んだ『まーち』はどうなったんですか?」
 
 回答
 最近、産經新聞を読みはじめました。

 質問3「『エゾ共和国建国記』はどうなったんですか?」
 
 回答
 宿題の一つになりました。すいません。何年かの勉強期間を経て、何らかの形で(魔法の言葉)お届けします。

 質問4「集めた幕末の資料どうするんですか?」

 回答
 他の作品につかっちゃえばいいのです。たとえば主人公の眼鏡っ娘に土方歳三の霊魂が憑依して……(だめだこりゃ)

 質問5「次の仕事は何やるんですか?」
 
 回答
 まだひみつです。プロットとか、がんがん売り込んでます。結果は近々お知らせできるものと思われます。
 

8月1日
 「ガウガウわー太」打ち切りが悲しくてならない増田淳です。
 一体なんですか、あのジャンプ以下の悲惨な切られ方。
 「何らかの形で再開します」という不安全開のコメント。
 もう、あえない?
 私の人生でも最萌クラスの眼鏡っ娘、委員長こと尾田島淳子さんは?
 「バカか貴様」の感動は、「うむ」の喜びは、もう帰ってこないのですか。
 復活を願って、祈りをささげます。
 私は委員長の犬になりたい
 (それ祈りじゃない)

 最近、友人たちとの飲み会が重なってます。

 ある日の会話。
 某「かんぱーい!」
 増田「イルジオンはどんな感じですか?」
 某「私の好みですけど、もう少しひとひねりがあったほうがよかったかなーと」
 増田「やっぱりそうですかー。今後の課題ですよ」
 某「増田さんはイルジオンみたいな小さい話と大きい話、どっちが書きたいんですか?」
 増田「最終的には大きい話書きたいですよ。何千年におよぶ人類の興亡ですよ。しかしそっち系のものを書く能力はまだもってません。歴史知識SF知識、社会の仕組みを知って、群像劇を書く能力を身に付けて……何年かかることか。そもそも適性が根本的にそっち向きじゃないかも。自分の適性に気づかないのってよくあるらしい」
 某「『まーち』みたいなギャグは書かないんですか?」
 増田「ギャグって、プロットの段階でどうやって面白さを表現すれば良いんでしょう? 困ってます。はっきりいって、あれもこれも書きたいんですが、いまは、できることを一歩一歩」
 某「がんばってください」
 増田「はい」
 某「あと、やっぱりハッピーエンドがいいですよ!! 切なくても良いんですけど、最後には救われてほしいじゃないですか! 救いのないことなんて現実だけでたくさんですよ!」
 増田「そうかもしれませんね。最後に救われない話は、独自のカタルシスを演出する必要があるので、より難易度が高い。間違ってるってわけじゃないけど」
 
 また別の日の会話
 某「君はまあいろいろとアレなので、そのアレっぽさを個性にかえれば問題ない。武器になる」
 増田「感性が子供っぽいということですか。それは確かに。ぼくは『学校でいじめられた、苦しい』をそのまま拡大して戦争反対の話を書いちゃうから、薄っぺらに見える」
 某「まあ、子供だから見えることも見えないこともあるし。それはいいです、正しく使えば何だって個性です。たとえば君がボイルドエッグスに売り込みしたら、『サヨク作家』として売り出されるよ(笑)」
 増田「あそこは作品じゃなくて作家を売るところですからね。ヒキコモリがエンターテインメントにできるなら、サヨクだってできますかね」
 某「誰かすでにやってるかも」
 増田「タクティカル・ジャッジメント?(笑)」


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