そしてクリスマスの日、朝起きたさくらだったが

一度下に下りて朝ごはんを食べると、またすぐ

自分の部屋に戻ってしまった。

        「さくらさん、大丈夫でしょうか・・・・」
と藤隆は言い、

        「・・またあの小僧のこと、か・・・・・・」
と桃矢は言った。
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        「なぁさくら〜。今日はどこもいかへんのんか〜?」

        「・・・・・・・」

ケロの呼びかけにも答えず、ただ黙っているさくら

        「どないしてんさくら〜。もしかして、小僧となんかあったんか〜?」

バサッ

布団を顔までかぶり直して、またさくらは無口になってしまった。

        「さ、さくら〜・・・・・」

聞いてはいけない事を聞いてしまった、と、ケロは自分の口を両手でふさいだ。


        「小狼君・・・・絶対に帰ってくるよ、ね・・・・・・」

頭までかぶっている布団の中で、さくらは「希望(ホープ)」
のカードをそっと抱きしめていた。それでも夕方になっても夜になっても小狼は帰ってこなかった。

藤隆はさくらの様子が気になり、時々ケーキを持っていったり

はちみつミルクを入れてあげたり・・・・。

桃矢は相変わらずガビガビ(というより、朝よりもっと機嫌が

悪そうに)していた。




と、急にさくらの携帯が鳴り響いた。 夜中の9時を過ぎていたため、

さくらは小狼だと思いすぐに電話に出てみる。 だが・・・・

         「こんばんわ。大道寺ですが」

         「(・・・・・小狼君じゃなかった・・・・・・・)知世ちゃん・・・・・・」
        
と、小さく返事をした。

         「・・・・李君はまだ、帰ってきてませんの?」

         「・・・・・・・・・」

さくらは黙っていた。自分から「帰ってきてくれないの?行かないで!」

・・・・そんなことを言うのはただのさくらのわがままだった。

         「・・・さくらちゃん、一つだけ私から言わせて下さいな」

         「・・・・・え?・・・・」

         「さくらちゃんには無敵の呪文があることを、お忘れにならないで下さい。
          さくらちゃんが李君を信じてないといけませんわ。 信じて必ず会えると・・・・・・」


ハッとさくらは思った。そうだ、私は小狼君を信じていなかった。

・・・きっと香港から帰ってきてくれない、と・・・・・ 

だが小狼は昨日約束してくれた。

「用がすんだらすぐに帰ってくる」

「ありがとう・・・さくら・・・・・・」、と・・・・・・



         「そう・・・・そうだよね! きっとすぐにまた会えるよね!」

         「はい、まだあきらめてはいいけませんわ」

         「ありがとう、知世ちゃん!」

         「・・・・私の幸せは、さくらちゃんが幸せでいてくださる事ですから・・・・」

         「知世ちゃん・・・・・・」

         「頑張ってください、さくらちゃん」

         「うん、本当にありがとう!」



電話を切ったあと、さくらはすぐに「さくらカード」を机から取り出した

         「な、何をするつもりなんやさくら!」

         「翔(フライ)でちょっと出かけてくる!」

         「な・・・・なんやて!?アカン、無理や!いくらフライでも、飛ぶ距離が
          長すぎる!その前にさくらの魔力が尽きてまうで!!」

         「でもっ!?」



とそこへまたさくらの携帯の着信音が鳴り響く。さくらはまた知世だと思って

         「はい、木之本です。知世ちゃん?」

         「・・・・・・おれだ、さくら」

         「小狼君!?」


電話をかけてきた相手こそ、今すぐ会いたいと思っている本人、小狼だった


〈約束2.〉