9日目前半(7月8日 木曜日)

 

今日はいよいよ島抜けの日。

正直まだここにいたい。

日程的にもいることは出来る。

礼文でしたいことも、まだあることはある。

礼文岳も登ってないし、フラワーロードとかも歩いてないしね。

でもね。

まだ別の場所で他にもしたい事があるんだよ。

ここに来る事だけが目的な人達もいて、その気持ちも分かるんだけど、

でも立ち止まることはできないんだよ。

次の場所を目指さないといけないんだよ。

だから、行く。

振り切ってね。

犬神さんの言葉を借りると

「今そこにある最高の場所を思い出という過去にしまって。

明日の最高のために」

ね。

これ以上引き延ばせば行けなくなる。

きっとどこにも行けなくなってしまう。

そんな思いもあって、昨日一杯楽しい思いをしたからと踏ん切りをつけた。

正確にはそのために昨日は一日全力だった。

朝の見送りも、昼間の西上泊応援ツアーも、夜の自炊もミーティングも。

(だからこそ余計にガキどもには腹が立ったんだけど)

まだしたいことはある。

でももう充分。

ここはきっと変わらず在り続ける。

また来ればいいだけの事。

それだけさ。

桃岩荘には「あほノート」というホステラー達が思い思いにそれぞれの想いを

記したノートがあって、オレも想いを記してきた。

「今日はいよいよ島抜けの日。

でもしばらく留守にするだけ。

どのくらいのしばらくかは分からないけど。

ほんの少しだけ離れるだけ。

またここに還って来て「ただいま」を言う為に少しだけ「行って来ます」」

たしか、こんな風に記したはずだ。

思えば最初は二泊の予定だった。

それが予想以上に8時間コースが辛くてもう一泊伸ばした。

その日はキャンプ場が恋しかった。

でも次の夜にはここから離れがたくなっていた。

常に全力でホステラー達を楽しませようとしてくれたヘルパー達。

彼らは常に大きな声で詠い叫び挨拶をするためみんな声が枯れていた。

のろのろしているところを見たことが無かった。

いつでも一生懸命だった。

大変な仕事だと思う。

給料だってたいしたことはないと聞いた事がある。

でもいつでも笑顔だった。

いつでも楽しそうだった。

素晴らしかった。

常にここ桃岩で交わされる「お帰りなさい」「行って来ます」の挨拶。

ちゃんと声に出して挨拶を交わすって事が。

きちんと伝える事が本当に大事な事なんだって。

それを教えてくれた桃岩荘とヘルパー達。

そしてきっと誰が欠けてもあれほどは楽しくなかっただろう、ここで出逢えた

仲間達。

それぞれが強制することも、されることもなく、集い。

共に事をなし、遊び、話し、笑いあった仲間達。

ここ桃岩荘に出逢えて。

みんなに逢えて良かった。

今回の旅で一番良かった事はきっとここ桃岩で過ごした日々。

心から、ありがとう。

そんな想いを抱きながら、みんなに見送られて見返り坂を登っていった。

(実は桃岩荘のすぐ側にバイクを停める場所があるんだけど、歩いてこの

坂を上りたかったから、展望台にバイクを停めたんだね、昨日)

共に0便で島を離れる仲間達と共に。

少しづつ聞こえなくなる、でもちゃんと聞こえる「行ってらっしゃい」の声には

「行って来ます」と。

「また来いよ」の声には「また来るぞ」と。

みんなで叫び返しながら、登っていった。

今まで何度か見送って来た。

今度は自分が見送られている。

切ないね……

フェリーでもそう。

見送りの為にわざわざ港まで来てくれた仲間達とさ。

船の上と下に別れて最後の歌と踊り。

他の客達がなんかごちゃごちゃ言ってるのが聞こえたけど。

どうでもいいよ、そんなの。

名物になってる感もあるけど、あんたらの為じゃないから。

オレ達だけのものなんだから。

出航し段々遠くなっていく、仲間達に。

共に島を離れる仲間達と共に手を振って叫んでさ。

本当に切ない……戻りたい……あぁ……

でも、でもさ。

ちょっと行って来るだけ。

しばらく留守にするだけ。

また必ず還るから。

行って来ます……!

 

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追記

ちょっとノリが違うので、ここで区切ってみました。

想いのたけを綴ってみたけど、どうかな。

気持ちが伝わったかな。

文中ではちょっと書かなかったんだけど、実はこの日の朝方は霧が多くてね。

でも丁度出航するときになって急に晴れてきて。

なんだか凄く感動的だった。

そして出航のタイミングと歌と踊りのタイミングもばっちりでね。

本当に最高の船出を経験させてもらいました。

写真はいらないかなとも思ったけど、一応アップします。

その1 その2 その3 その4

注釈はつけないけど、いいよね。