二日目後半

 

へこんだ気分のまま高速に乗るとそれを吹き飛ばすような……ぢゃなくて

まるで吹き飛ばされそうなくらい……って大げさか。

ともかく今日も風が強くろくにスピードをあげる事が出来ない。

なんちゅーこっちゃと謎の訛り言葉を呟きつつしばらく走ってから、給油

兼休憩兼昼食の為SAに。

と、二輪用の駐車場に既に先客が。

「う〜ん、ロマンスグレー」ってな感じの(爆)多摩のBMWさん。

とりあえず会釈だけして飲み物でも買いにと思ってたけど、話しかけられた

んで、しばし立ち話。

すると

「(熊本まで帰る途中で方向が同じだから)途中まで一緒にどう?」

とのこと。

普段なら喜んで承知するトコだけど、この時はかなりヤサグレてたんで、

一旦断ったダス。

でも重ねて誘われたんで結局一緒に行くことに。

お互いに給油を済ませ出発。

……あ、メシ食ってねーや(^^;;

ま、いつもの事だしゆー事でかまわずそのまま。

そして二人で走り出したんだけど。

「私もあまり飛ばさないから大丈夫だよ」

ゆーてたやんけおっさん。

なのになんでこの風の中必死に130km/hで走って離される一方なんだ。

おまけに自分から誘っておいて同行者に対する気遣いがナッシングっての

どうかと思うぞ、おい(^^;;

もー気にする風も無くどんどん行くんだもんなぁ。

何度も諦めかけたけど悔しかったし、幸いにも時折前が詰まったりもした

んで何とかついて行けたダス。

そうこうしてるうちにヤサグレモード解除。

なんせただただ走る事だけで必死だったからね。

いつの間にか気分転換完了。

ついてくのに苦労したけどそういう点は良かったかもね(笑)

そして時折通り雨が降ったりするなか一時間ほど走り続けSAで休憩。

しばしとりとめもなく話をしてたけど、そろそろ別れの時間。

(おっさんは次のインターで降りるって言ってた)

挨拶を交わし分かれる。

後1.2年くらいで降りるって言ってたけど、お互い元気にバイクに乗り続け

ましょう!

私はトイレ行って給油済ませてだったんで、遅れて出たんだけどもう全然

影も形も見えなかったもんなぁ。

ったく、速ぇーなぁ(笑)

ま、私は私のペースで行きましょか。

なんせさっきまでは景色見る余裕なんてビタ一たりとも無かったからなぁ。

改めて100km/h程度のスピードでのんびりと。

しばらく走るうちにトンネルが30弱続いてる区間があって、そこを抜けると

二つの大きな山がずど〜んと目の前に。

見たことの無い景色を見て、ようやく来たことのない場所に来たんだなぁと

いう実感がわく。

なんせ今まではずっと高速走ってたからなぁ。

来たんだな、九州まで……

その後、高速を降りても南下を続け池田湖のほとりを抜けて薩摩半島の

南端を目指す。

と、目の前に大きな山が一つ出現。

しかも連なってる訳でもなくただその山だけ。

一瞬「これが桜島か?」なんぞと大呆けな事をほざいてたけど、そんな訳

ないわな、方角的に。

名前も分からないけどいかにも”山!!”っていう感じの山。

天気は悪いけどいいもん見れたなぁ(^^)

(後で知ったんだけど、それが「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳だった)

浮き浮きしながら走り続け、やがてそこからさほど遠くない場所にある長崎鼻

オートキャンプ場に到着。

時刻は17:20。総走行距離は約1400q。

早速管理事務所とやらに電話してみたんだけど、既に営業時間は終了。

仕方なく留守電に明朝改めて連絡するっていれてからテントサイトへ。

すると先客が。

と言ってもバイクでは無くキャンピングカー。

……家族連れか?

挨拶でもと思ったけど、日も暮れてきたし何より天候が悪化してきた。

まずはとっととテント張ってから温泉&買い出しに。

向かった先は「開門温泉」とゆーことろ。

ホントに小さい所で、しかも道からちょっと入った所にあるんでね。

来るときに見つけられなかったから他の所に行こうと思ってたんだけど。

偶然発見できたんで行くことに。

そこはツーリングマップルに書いてあるようにホントに素朴な共同湯。

雰囲気的には畑仕事が終わった村人たちが団らんも兼ねて集まって来る

といった趣。

いや、いい場所だったなぁ(^^)

お湯も熱くていい感じだったし。

だた惜しむらくはいた人たちの年齢層が高すぎて方言がきつかったので

ろくに会話出来なかったことと、あまりごしごし体を洗えなかったことか。

なんせ上記の通りの感じだったんでね。

暖まりに来るゆー雰囲気&環境であまり体は洗えなかったダスよ(^^;;

それでも十分に暖まり、脱衣所にいったおっちゃんに店のある方を聞いて

温泉を後にする。

そしてお酒と食べ物の買い出しを済ませてキャンプ場に戻り、さぁご飯を。

と思ったときにキャンピングカーからじっちゃんが出てきて一緒に呑まない

かと誘われる。

要冷蔵のものとかあったんで「んじゃご飯が終わったら伺います」ゆーた

のに「まぁまぁ」ってな感じでいつの間にかキャンピングカーへ。

まぁ、今日明日は気温低いらしいからいっかー。

(なお、この直後から雨が本降りになった)

そしてキャンピングカーに行ってみれば犬がいるだけで他には誰も居ない。

お?家族連れじゃなかったのか。

それにしても結構な年に見えるのにキャンピングカーで一人って?

そしてこのじっちゃん。

やはりタダモノでは無かった。

聞いた話が事実なら世間一般で言う大人物らしいけど、そんな事以上に

タダモノでは無い。

なんでも今81歳で、もうここ10年ほどこうしてキャンピングカーでの生活。

そしてここ最近はずっと冬は鹿児島のここのキャンプ場で、夏は北海道の

屈斜路湖の辺りの林道で過ごしているとのこと。

(かつて北海道の林道でキャンピングカーで寝てるとき外で干していた

魚の干物を食べれらた事もあるそうな。

その時ガラス越しに熊と顔をつき合わせもしたそうで。

犬がいれば存在に気づくから盲導犬を飼い始めたとの事)

ひょっとして家族に……なんて事も考えたけどそんなこともなく、家族は家で

一緒に暮らしてもらいたいらしいけど、本人が嫌でこうしてキャンピングカー

暮らしをしているそーな。

10年そうやって暮らしてるだけあって言うことの重みが違ったなぁ。

「普通の生活してる奴らってのはあそこの猿とおんなじだよ。(近くに猿の

動物園があった)檻の中で暮らしてえさ貰って。

それでいいんだよ。うまくいくんならな。

俺はそれが嫌だから飛び出したんだ」

「それでも完全に一人になることは出来ねーんだよな。

ずっと一人でいるとやっぱ寂しくなっちまうんだ……」

「さすがにこうやって長いこと暮らしてると景色なんざ、どれも一緒に思える

なぁ。それより土地の人情なんだよ、人情」

「ずっと旅してるとかいうヤツにもずいぶん逢ったけど違うよな。

どっかで還る場所があるって思ってる。

そんなのほんとじゃねぇ。

俺もやっぱりそうなんだろうけどな……」

「普通の暮らししてると分からないものが見えてくる。

ホントの自分が見えてくる。

それこそが最高のアウトドアなんだよ。

それでいいんだよ」

「人間なんてそんな上等なもんじゃねぇ。

特にアウトドアに関しては偉そうな事を言うなよ。

ま、俺もさっきみたいな事言っちまうんだけどさ」

以上、心に残った語録。

実はもう一つあるんだけど、それはまた後で。

話題はこうした旅の事に限らず政治や経済。

さらには宗教、文化、世界政情その他諸々にまで。

とにかく色んな経験してるもの凄いじっちゃんだったんだけど、何故か私を

高く評価してくれ

「キミにはロマンがあるように感じる。

それを追い求めなさい」

なんて事も言われたなぁ(^^;;

ロマン……か。

ま、これも後で。

そして指宿のパブだかスナックだかに連れてってもらって酒呑ませて

もらったし。

(タクシー代および飲み代はすべて奢りだった)

そこでもすっかり顔でしかも尊敬を集めてるのがはっきり感じられたなぁ。

(ちなみにパブだかスナックだかに行ったからっておねぇちゃんと戯れてた

訳じゃなく、引き続きまじめな話ばっかしてた)

そうして楽しい時間を過ごしキャンプ場に戻ったのは0時を回っていたかな。

大分雨がきつくなってて

「あまりひどくなったら鍵を開けておくから、いつでも(キャンピングカーに)

来なさい」

って言われてはいたけどとりあえずテントに。

そして例の曲を聴こうと思ったら、持っていったMDウォークマン壊れてふた

がちゃんと閉まらなくなってるし。

……転けたときにこれも壊れたのか。

くそう、買ったばかりなんだぞ(T_T)

それでも再生はできたんで聴いて、今日の良き出逢いに思いを巡らす。

すげぇ人と出逢えたよなぁ……

そう思いつつ眠り……で、終わらなかったんだな、これがまた。

聴き終わって「さぁ、寝るか」と思ったときに気づいた。

雨染みこんで来てるやん(汗)

これ、結露じゃないよなぁ。

やはり去年北海道であった彼らが言っていた事は正しかったか……

しかたなくテントの中の荷物を濡れないように処置してから、そのまま寝袋に

潜り込む。

素直にキャンピングカーに行けばいいのにねぇ。

昼間何も食べずにいきなり呑んだため、かなり酒が回った頭じゃまともな事

考えつく訳ありませんな。

「なるよーにしかなんねーよ」

そう呟きつつ夢の中へ。

疲労&酔いであっという間に寝てしまったとさ。

 

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