本日の一言   

2000/2/5

撮っちゃOh、で、しゃべっちゃOh

 パソコン雑誌をぺらぺらめくっていたら、「ワイヤレスカラーテレビカメラ」という記事が目についた。能書きを読んでみると見かけ上は普通のビデオカメラの格好をしているが、それで撮すと画面が無線で近くのテレビ受像機に飛び、そのままテレビ画面に映るというものであった。価格は6千円、電波の飛距離は5m、商品名は「撮っちゃOh」であった。

 「オモチャにしてはちょっと高いな、でも無線で電波が飛び、部屋のテレビに映るというのは面白いな」ーーそう思っていたためかショッピングに出かけた折に、ついついそれを買ってしまった。店先で品を手に取った時、箱に「誰でもカンタン、すぐ撮れる、すぐ見れる」とキャッチコピーがあり、子供達の楽しそうな姿が描かれていたからだ。
 
 早速、家に帰って取りつけ工事を行ってみた。室内アンテナをちょっと調整し、カメラに電池を入れ、テレビの空きチャンネルを探し3chに設定したらもう準備は終わりであった。さあ、カメラをスイッチオン。−−「ほほう、映る、映る」−−我が声が大きかったせいか家族一同が驚いたようにテレビ画面に注目した。

 そして、すぐ居合せた小さい子供達がカメラを意識し、いい顔をし始めた。大人達もカメラが自分の方に向けられると衣服を整えたりした。しかし、それも一瞬のことで、すぐさま子供達はカメラの前で飛び跳ね、手をあげたりした。指で顔を崩し「べえーっ」という表情も示し、頬をつねったりもした。当然、それを見た家族達が笑い、相好を崩した。

 カメラは、我が家の場合は居間の隅の方へ持って行くと画面がカラーからモノクロに変わり、やがて乱れて行った。普通のビデオカメラと較べれば、「やっぱりオモチャだなぁ」というのが実感だった。ただ、違う点はビデオカメラはテープが媒体であり、一方この「撮っちゃOh」はカメラの画面が、そのまま無線でテレビ画面に飛んで行くところであった。

 子供達はこのカメラを持ち、テレビの画面と照らし合わせながら室内を動きまわった。周囲の大人達も所詮オモチャであることから時間が経つにつれてカメラの扱いを子供まかせにして行った。その様子を横目で見ながら、私は同封のマニュアルに目を通しているとこのカメラを使っての遊び方が色々と紹介されていた。

 その一つが、カメラをラジコンカーに積んで走ると、テレビの画面が地表の目線と一緒になり、まるで運転席にいるような迫力になるいうものであった。「えっ、ラジコンカーから映像が送れるの、それは凄い!」。思わずそう叫んだ。自分が無線でラジコンカーを操縦していると、ラジコンカーから無線で映像を送ってくる、これはまさに驚きであった。

 実は何を隠そう、この商品を購入した一番のきっかけは、ここにあったのである。冒頭に述べたパソコン雑誌にもこの点が触れてあったので実際に品物を手に取り、確かめたくのが直接動機だったのだ。ラジコンカーを無線で操縦するのが第一時代とするならば、そのラジコンカーからテレビに映像を送って来るのが第二時代だとも解釈したのである。

  さて、ここで話はちょっと変わるが、皆様はこの数年、景気回復策を望む声が高まり、その対策として「個人消費の向上」が叫ばれていることはご存知だろう。一方、消費者側には「先行き不安」と「モノあまり現象」から購買力が低下、ゆえに企業側は「モノが売れないからリストラ」を行うという、デフレスパイラル状の中での叫びのことだ。

 この時、企業側は何を売ればよいか、どうしたら景気浮揚策になるかを真剣に取り組み始めた。政府が多額な国債を発行し景気刺激を図ってもこれでは長続きをする筈がなく、「官の次は民」だとばかりにその責任と役割りに燃え始めたのである。いや、これこそが企業自体の生き残り策であり、企業間競争での勝ち組への条件だと気付いたとも言えた。

 そんな矢先、各企業は一筋の光明として「消費者は自己納得さえすれば購買行動を起こす」といったキーワードをつかんだ。「一定の金額以下ならば遊び心でも買うことがある」という経験則も発見した。過去には浪費と思われていたことも「時代の変化と共にその価値感も変わる」という現象もとらえ、これもビジネスに役立て始めたのだ。

 例えば、今までにない新しいもの、それも手頃の価格の、家族で楽しめるもの、といった条件を充たす品の売れゆきには、特に注目した。ヤングやファッションに力を注いでいた企業も、健康や美容、高齢化社会といった別分野の商品にも関心を高めた。同時に、販売チャネルや販促方法にも新しい手法を導入、多様化を行ったりした。

 さらにもう一つ、これが大事なところだが情報化時代にあっては情報ニーズを活用し、それを商品化していくことが大切だと気付いた。それも、今までは情報といえばマスコミや大型の情報機器、或いは情報インフラしか連想しない人が多かったが、今後は個人の利用出来る情報機器、端末、組込み商品の発売が企業発展のカギだという点であった。

 考えてみれば、その世界での売れ筋商品は既に幾つか出てきていた。カーナビや持ち運び自由のMOやFD、玄関先のカメラ、室内や風呂の自動温度調整機器など、情報関連機器はいつのまにか地歩を固め好況商品となっていた。その最たるものが携帯電話であり、今やそれも各種機能を付加した携帯情報端末へと変化し、爆発的な伸びを示していた。

 近頃、”B to C”という言葉がよく囁かれるになってきた。ビジネスtoコンシューマーの略で、消費者のニーズ、ウォンツを探り、それに対応した商品の研究開発こそ需要創造であり、景気の浮揚策でもあることを指している。その意味では今回の「撮っちゃOh」は試金石でもあり、別項で触れたScan Talk Reader もその例だと言えるかも知れない。

  話が長くなってしまったが要は本欄で言いたいことは、これからの情報関連の機器及びそういったサービスなどは、企業発展のために、景気回復のために、耳目をそば立てていくべきではないか、ということである。出来れば自からも購入、操作したりして、ビジネス用、家庭用、社会用を問わず、新情報機器の発見、創造をすべきだと言いたいのである。

 今や、コンビニにはATMが設置され銀行機能の一部を奪う時代になろうとしている。その先はさらに付帯サービスが増え、流通と消費者の間で構造変化を起こす時代はまず間違いはない。家庭でもインターネットの発達によりカラオケやギャンブル、株式売買、支払い決済などのネットビジネスもより進むことであろう。
 
 今よく言われるIT革命とはそういった世界でもあるのではなかろうか。自動車の運転でいえば、目的地を設定することによりクルマ自体の制御機能と、道路の管理制御機能により、自動的に安全かつ効率的な運転がされるようになるのも夢ではない。その時に乗客(もはや運転手ではない)は何をしていればよいのか。そういう時代が目前なのだ。

 ついでに言えば、高速道路などに取り付けられたりしている自動取締りカメラは、もはや不要の古情報機器に位置付けられるのではなかろうか。スピードなんて300kmでも500kmでも要は事故さえない起きなければいいからだ。信号や踏み切りも正確かつ効率制御さえできれば渋滞緩和につなげる方法いくらでもある筈だ。

 これらの例を上げていけば枚挙にいとまがない。
 これからは消費者ニーズを見つけ、それを製品化すればいくらでも売れる時代だということである。地方の中小企業も情報をテーマにし、自社技術を生かせばヒット商品の誕生は夢ではないということである。既存商品で不況を嘆くより、新情報機器で夢を語ろうということである。

 今回は「撮っちゃOh」や「Scan Talk Reader 」を例に余計なことを長々と述べてしまったが、ご容赦願いたい。それもこれもこのテの新製品には私が大変興味があるからだ。景気回復の引っ張り役としてもそういった企業に頑張ってもらいたいという願望もある。個人消費の喚起は、「新情報機器の開発・販売」が出発点だ。

  ありゃりゃ、長くなっちゃった。ーー「これぐらいのことで、ここまで読ませるなんてもってのほかだ」−−そんな声も聞こえてきそうな気がする。すかさず「それは失礼しました」と謝りたいところだが、「それならばこういった文章を落語風に面白く読ませる機器を開発してください」と言い返すかも知れない。そういった商品にも飛びつきたいのだ。               オシマイ

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