本日の一言   

2000/7/20

パソコン顕微鏡

 先日、なじみのパソコンショップへ顔を出したら「いいものが入りましたよ」と若い店員から声をかけられた。いつもは「大したものは出ませんね」とか、「このデバイスのスピードが早くなりましたよ」ぐらいの返事で、あまり商売気があるとも思えなかったが、この日はちょっと違っていた。

 手早く見せられたのはComputer MicroScope、つまりパソコンで操作の出来る顕微鏡であった。相手は当方のウォンツを的確に捉えての商品提示であった。「ホホウ、顕微鏡ねぇ」ーー当方はバッケージを手に取り、それがインテル社製で結構面白そうなデバイスであることを確かめた。

 面白そうな、というのは顕微鏡の用途もさることながら、パソコンの関連グッズとして「ヘーエ、顕微鏡もPC機器に組み入れられるのか」という驚きと、顕微鏡の画面がディスプレイ上に出て来るならば当然今度は望遠鏡のようなものも登場してくるだろう、という発展的期待感があったからだ。

 そう思うと矢も楯もたまらず衝動的に欲求感が高まり、ろくに画面の精度も確かめずにその場で顕微鏡を購入してしまう結果となった。そして、早速休日のことでもあり家に帰り早速取りつけ作業にとりかかった。USBポートに差し込み、ソフトをインストールすればもう準備はほぼOKだった。

 製品に同封のサンプルを焦点を合わせ、倍率を10倍、60倍、と上げて行くとなるほど「さすが顕微鏡だわい」という画面になってくる。200倍にしようものなら「ヤヤッ、これ何?」といった画面にもなってくる。たまたま居合せたわがファミリーもその様子を食い入るように見つめていた。



 そのうちにファミリーの一人が「この前、眼医者へ行ったら医師の横のパソコンに自分の眼球が大きく写し出されていたよ」と呟いた。毛細血管まではっきりと見えていたそうである。きっと、細身の懐中電灯みたいなもので眼球を覗くとそれがレンズでありPCの画面に直結していたことであろう。

 その眼医者の拡大鏡がプロユースとすれば我が家の今回の顕微鏡はまさにアマチュアユースである。それもオモチャ程度のものだと言えるだろう。よく見ればデザインはカッコよく出来ているがプラスティック製であり、何となく軽い感じで、昔からの顕微鏡といった重みは全くないからだ。

 しかし、偏見を承知で言えば眼医者の機器こそ従順な患者へのおどかしマシーンかも知れないとも思った。眼医に対しては失礼だが、でもその眼医はディスプレーには目もくれず、自分の眼で患者の眼をしっかりと見つめ、治療に専念していたそうである。眼医が故に自分の眼がいいからであろうか。

 ついでに言えば、世の中には知的おどかし機器というものは案外存在するものである。勿論、一つの科学的役割は果たしつつであるが、一方では不慣れな場面に遭遇した小市民向けに一種の雰囲気的に重圧を与え、目的達成に補完機能を果たそうという副次的な狙いのものである。

 ウソ発見器や各種のテスターなどもそういった色彩を帯びていると思えてならない。PCのデータなども鵜のみにされがちのものであるが、器械のみならず建物や人々の服装だってそういった側面をもっている。警察や裁判所の建物、係員の態度、それに医師の姿、口調も無言の説得力を持っている。

 もっとも、それらがいい方向にはたらけば有益には違いない。極悪人がつかまった場合等に、連れ込まれたところが幼稚園のような建物でありガソリンスタンドのような愛想のよい応対ではやはり不自然だからだ。医師の口調も、簡潔に患者に処方箋を守らせる威厳が必要かも知れない。

 とはいえ、先述の知的おどかし機器がまさに関係者の利益創出機器になっていては本末転倒である。小市民がPCの画面に驚嘆するだけで幾らか余分に取られ、それを甘受していてはなんともバカバカしい限りだからである。これからの小市民はそれを見ぬく眼をもち、大市民になる必要があるのだ。

 昨日、2千円札が世に出回ったのだがまだこれの使えない自販機が国内にはごろごろしている。JRにしてもやがては取り替えねばならないだろう。器械といものは関係者はその能力を誇示したがるものだが、必ずしも消費者のためかどうかは疑問である。大方は設置者側の利益創出機だからである。

 PC用顕微鏡の話から、とんだところへ話が及んだが、気になる方がいらっしゃったらどうかご寛恕願いたい。当方はこうしてキーを叩きながら顕微鏡の世界から望遠鏡の世界へ、さらには人心掌握機へと時代の進展を想像しそれが社会平和と人類の幸福につながればと願うだけだからである。

                             オワリ 
                        2000−7−20記


 

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