本日の一言
2001/4/30
緑の桜
その昔、いや、今でもそうかも知れないが「♪パッパッパー♪、♪パッパッパー
♪、♪きーいざくらー♪」というCMが流行ったことがある。
確か終わりの方で「カッパ、キザクラ、カッパッパー♪♪」というようなトドメの
音楽があり、画面は女性っぽく擬人化された河童と「黄桜」のラベルが大写しにな
っていたような気がする。
ま、そんなことはどうでもいいのだが、つい先日、ある方から「緑の桜を知って
いますか?」と問われ、「えっ、緑の桜?、黄桜なら知っていますが」と先程のシー
ンを思い出したのである。
「酒の宣伝じゃないよ、本当の桜なんだ」
「あの白いといかピンクっぽい花びらが<緑>になっているんですか?」
「そうだよ、桜の樹に緑の花が一杯咲いているんだ」
「ホントに緑色なんですね」
「疑っているような感じだな」
「いや、そんなことは。――でも、やっぱり疑っていますか」
「よし、わかった。現物を見せてあげよう。まだ時期が早いかも知れないが」
―――それから暫く経って着いた所が草薙の静岡県立美術館。
「これがウコン桜っていうんだ」
「でも、表示パネルにはウコンとしか書いてありませんよ」
「そりゃそうだが樹を見てみろよ、桜そのものだろ」
なるほど、じっくり見れば桜の樹特有の樹皮になっている。
「それにしてもまだ開花していないな。あのソメイヨシノが散ってから咲くんだ」
周囲を見回すと山の側面や通路両脇の桜並木がここぞとばかりに満開になっている。
「もう少し向うへ行ってみよう。あちらにはギョイコウがある」
ギョイコウとは御衣黄ともいって黄緑色の花が咲くと言われている。
「こちらも今いちですね、蕾だか葉っぱがはっきりしなくて」――。
折角、ここまで案内頂いたのにそんな言い方は非礼だったと気づき、慌てて「咲け
ばきれいになるでしょうね」と付け加えたりした。
「そうなんだよ、緑の花がたわわに咲いてとても美しくなるよ」
その表情は、些細な非礼など気にすることもなく、かって見たことのある満開のギ
ョイコウに目を馳せるようであった。
それから約一週間後だった。再び静岡県立美術館に出かけた。
ヨメイヨシノや山桜は散っていたがこのウコンやギョイコウはまさに花盛りであっ
た。花見シーズンが終わった後にひっそりと、そして豪華に咲いている緑の桜。――
この桜の発見は、皆があまり知らないことだけにちょっとした優越感でもあった。
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