本日の一言   

2001/5/25

なんじゃもんじゃ


     子供の頃、何か耳慣れぬ言葉を聞くと半ば冷やかし気味に「そりゃ一体なんじ
  ゃらほい」などと言った憶えがある。
  この度も「なんじゃもんじゃの木がある」と聞いて、心の中では「そりゃ、一体
  なんじゃらほい」という気分で、静岡市の城北公園へと向かった。
  同行の案内人の方から「桜の木に雪が降り積もったような感じでとてもきれいだ」
  と言い聞かされつつである。
  現地へ到着してみると、ナルホド雪といえば雪、綿といえば綿のようなこってり
  とした花が緑の樹木の上に一杯載っている。しかも、風が吹けばヒラヒラという
  よりもハラハラといった感じで舞い落ちている。その部分だけを見ればまさに雪
  が降っているような風景でもある。5月中旬のことだった。



  「ホホウ、こりゃキレイだ」――思わずそう口に出す。



  「こっちに来てご覧よ、ここにその謂れが書いてある」
  なんじゃもんじゃの木の咲き揃う片隅に設置された立て看板のことだ。

  読んでみると、水戸光圀公がある神社を訪れた際、あまりにも美しい花の木を見
  て「これは何という名だ」と同行の人に聞いたところ、その人はそれがわからず
  咄嗟に「何と言うんでしょうね」という意味の相槌を打ったところ、「そうか、な
  んじゃもんじゃか」と光圀公が言われ、それがそのままこの木の名の由来になっ
  た、というようなことが書いてある。
  そして、この場所の木は明治神宮から取り寄せられたもので、正式には「ひとつ
  ばたご」という、とも書いてある。
  さらには自生地としては愛知、岐阜などの中京地区と、思わぬ場所になるが対馬
  にしかないとも書いてある。



  もともとこの木が中国や韓国から来たものなら対馬に自生するのもわかるが、そ
  れが一足飛びに中京地区へくるのもわからないので、ついつい帰宅してから広辞
  苑に目を通すことになった。
● 関東地方で、その地方には見られぬ種類の大木を指していう称。千葉県香
  取郡神崎町神崎神社境内のもの(くすのき)、東京都明治神宮外苑のもの
  (ひとつばたご)が名高く、その他筑波山のもの(アブラチャン)、山梨
  県鶯宿峠のもの(りょうめんひのき)などが知られる。あんにゃもんにゃ。
  ――これが「なんじゃもんじゃ」の項で調べたものである。
  先程の水戸光圀公の解説看板とこの広辞苑の解釈とが一致しているようで一致し
   ていないため何となく頭が混乱してくる。念のため「あんにゃもんにゃ」も
   調べてみたら何のことはない。「なんじゃもんじゃ」に同じ、としか書いてな
   かった。まさに「なんじゃらホイ」の心境だった。
    話はとんだ方向へそれてしまったが、要は「なんじゃもんじゃ」と呼ばれ
   る木があり、それに花が咲けばとても美しいということである。
   そして、静岡市にもその場所があるということである。
   ヒマな人は、いや、仕事で忙しい人もその仕事を成功させる話題作りとして
   一度は休日にでも見学されてはいかがであろう。
   ――ここまで書いてきたら、ひょっとしたら人が集まるぞ、「なんじやもんじ
   ゃの雪見餅」でも売って大儲けするか、という気持ちが湧いてきた。
   ムムッ、これはいかん!我が輩の立場はもっと文化チックに俳句でも読むと
   着飾らなければならないのだ。
● 富士山と なんじゃもんじやで 雪見酒 ●
――それにしてもこんなもんだ。          2001−5月 記
 
  

 

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