本日の一言   

2002/6/2

静浜基地 航空祭

   5月26日(日)の9時半頃だったろうか、バスを降りて約10分ほ
ど歩いた時に航空祭の受付が見えてきた。
普通の民間企業のイベントだったら、ここらで「いらっしゃいませ〜」
という声が聞こえてきそうなところだが、「さすが自衛隊基地」といって
いいかどうか、そんな愛想のいいサービス業的な応対はなかった。
が、初夏らしい服装での爽やかな応対があり、来場客もなんとなく軽や
かな歩調で奥へ奥へと進んで行った。



やがて、頃合いをみて立ち止まってみた。
先程受付で手渡されたパンフレットに目を通すためだ。
と、そこにはイラストで会場周辺の建物や展示物などが描いてあり、自
分の位置もだんだんとわかってくる。
「そうか、あれが管制塔だな」――まずは自分の目指す位置を見定めて
近づいて行く。知り合いのパイロットがその1階にいる筈だからだ。
「○○さんに会いたいのですが」
「どんなご関係ですか?」――ここでも「さすが自衛隊基地」と感じさ
せられたが、結局は2〜3の質問を受けただけで簡単に入室出来た。

 案内された場所は、会場全体を見渡せる飛行場の中央辺りだった
正面は滑走路が左右に大きく広がり、手前側の方には各種の飛行機が右
側方向に向かってズラリと並んでいた。
中には見慣れた飛行機もあったが、翼が折り畳んである新機種や日本の
ものとは思えない迷彩模様の機体も並んでいた。
自分が尋ねて行った民間パイロットの○○氏はそれらの機体を指さし、
親切な説明を続けた。
中には日頃耳にしない専門用語も出てきたりしたが何となくフィーリン
グ的に解釈をして行った。

暫くして「では、その飛行機をもう少し近くで見て来ますよ」とその
場を去ることになった。もう少し会場のあちこちも見たかったからだ。
見渡すと、会場はいつのまにか更にごったがえしていた。
「これが静浜飛行場の航空祭か」――そう思いつつ人々の間をすり抜け、
途中の食べ物店や自衛隊グッズを扱う店を見廻して進んでいく。
前方には滑走路を取り巻くように通路があり、その道路脇には見物場所
に好適な緑地部分が続いていた。
そして、それらの場所には既に人々が腰を下し、弁当を食べたり談笑
をしたりしていた。
道路の左側の滑走路脇にはロープの仕切り線があり、そこから10歩も
踏み込んだ辺りには各種の飛行機が勢揃いしており、機体の脇には万一
の暴漢を意識してか制服姿の自衛隊員が直立不動の姿で立っていた。
このロープの仕切り線一つで自衛隊の世界と、のんびりした民間人の世
界が存立しているのがわかり、何となく異次元を感じさせていた。



その瞬間だった。またもや、突然、「グワッワーン」と空をつんざく音が
した。頭上を走り抜けて行ったのである。
「お、おどかすな」――見れば、ジェット機が遥か彼方へ飛んで行った。
が、自分はそう感じたものの周りの人々はさほど驚いた様子はなかった。
すぐわかったことだが場内のスピーカーがその都度の案内がしており、
周りの人々はそれを知っていたからのようだった。
走り抜けて行った飛行機は、瞬く間に黒点となり、ついには雲の中へ吸
い込まれるように消えて行った。

 しばしの静粛と、沈黙。――
自分は、ここで飛行機の種類を確かめるため先程もらったパンフレット
に目を通してみた。
時間単位で所属基地と機種名、フライト時間などが書いてある。
T−3・練習機、C−130・輸送機、T−4・練習機、RF−4偵察機、
F−15・戦闘機、という順に登場することになっている。ビッツ・S2、
グライダー、県警ヘリ、F−2・支援戦闘機も加わっている。
そして、圧巻は最後の松島基地から飛んでくるブルーインパルスだ。

 そんな時、そばにいた男が「ブルーインパルスは昨日浜松基地へ飛ん
で来て仲間と一杯やっていたよ」とまことしやかに囁いてきた。
「じゃ、浜松から飛んで来るんですか?」と思わず聞いてみた。
「多分、そうじゃない」とぼかしながらの返事だ。アテにはならない。
そりゃぁ飛行機仲間だ、それぐらいのことはあるだろう、と思うものの
だからってそんなことが許されるかな?、と思ったりもする。

 でも、それも束の間。――次は双翼機が空を舞い始める。
回転して飛んだり、翼を縦にして飛んだり、上空へ一直線に駆け昇って
て行くのだ。逆に編隊を組んでの急降下もしたりしている。
しばし、人々がうっとりする時間だ。
あまりにも見事さに、奇声をあげたり拍手をしたりする者もいる。
大方は空を見上げながらガバガバとビールを飲んでいるからかも知れない。
何を隠そう、自分もこの頃にはもう一杯入っていたのだ。

――ショーの模様は割愛する。(どこかで書いている人がいるだろうから)

 いよいよ最後の瞬間だ。
真正面から黒点群、ブルーインパルスがやってきた。雲の間から4機だ。
「あれ、5機じゃないの?」――また誰かが言った。
と言ってる間に、轟音が鳴り響き、我々の頭上を駆け抜けて行った。
思わず首が上に引きずられ、続いて身体がくねられていくことになる。
と、今度は思わぬ方向から2機ずつあらわれる。、突如、白煙をたなびかせ
たりするのだ。



 真正面からあらわれた2機は、近接した機体から白煙を吐き出し、そのま
ま左右に片円を描くように上昇し、そのてっぺんでお互いに中側に落ち込み、
白煙を止めて左右に下り降りて行った。
さあ、その白煙はどんな形を描いたのだろう。
実は、空に残されたのは大きな大きなハートの絵だったのである。
人々は誰彼となく拍手をした。中には頭の上で叩いている者もいた。
まさに航空ショーにふさわしい。

 その時だった。ふと我に返った。
「そうだ、帰りのバスは混むに違いない」――そう思ったのである。
それからちょっと早めにとバスの停留所まで歩いて行った。急ぎ足だ。
バスに乗り込んだ時に、ブルーインパルスは次々と翼を上下に振りつつ遠ざ
かって行った。場内アナウンスが「皆様とのお別れ挨拶です」と伝えていた。
わがバスはJRの藤枝駅へと出発した。
きっと、この後は渋滞、渋滞ということになろう。一瞬の判断がイライラを
生むか、スイスイを呼ぶのかの違いである。
 我輩はスイスイ派。――、藤枝駅で「してやったり」と年甲斐もなくソフ
トクリームを頬ばったりした。後続の連中を舐めてやったのかも知れぬ。
2002−6−2記

 

 

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