いざ、仙台へ

目が覚めると、辺りはぼんやりと明るくなってきた。時計を見ると朝の6時だ。いくらなんでも早すぎる。もう一度眠りにつきたいところなのだが、オイラは一度目が覚めたらよっぽどのことが無い限りは再び眠りにつくというのは不可能に近い。それはこれまでの人生でよくわかっている。しばらくボーっとしていたのだが、それは非常に退屈なものである。CDプレーヤーから聞こえるaikoの声も退屈そうに聞こえてくる。ボーっとしているのにも飽きたので、外へ出る事にした。トイレの洗面台で顔を洗い、それから併設されているコンビニで飲み物を買って、ベンチに腰掛けて時の過ぎるのを待った。地獄の時間だ・・・・・。車の中を見ると、2人は起きる気配が無い。幸せな人たちだ。彼らは頭の上に爆弾が降ってきても目を覚まさずにスヤスヤ眠れる人種なのだろう。

ふと、改めて辺りを見回すと、どの車もやはりオイラ達と同じように椅子を倒して寝ている。SM-Xに乗ったカップル。家出してきたんじゃないかと思えるような1ボックスに乗ったおっさん。スカイラインで一人さびしく寝ているにーちゃん。駐車場の周りにも、バイカーと思われる面々が、寝袋で転がっていた。やはり道の駅は、車中泊の定番スポットらしい。

8時を過ぎてくると、いいかげん2人を起こしたくなってきた。とは言え、彼らも理由もなく眠っているわけではない。その前の晩にはミステリーツアーなるイベントものに参加し、朝方まで犯人を探して居たというので相当眠かったらしい。が、そんなことおいらの知ったこっちゃない。時間も無いことだし、車のドアを開けて、「おきろー!」と言って、否応なしに顔を洗いに行かせた。寝たければ出発してから寝ればいい。ただそれだけのことなのだ。
  

憧れの地 松島!

今回の旅の最大の目的は日本三景の松島を見ることにある。美味しいものを食いまくるのが目的ではないか?と言う意見も聞く事はあるが、あくまでも松島が目的なのである。(たぶん)第一回目の旅行では雨に祟られて松島の風景を見ることが出来ず、涙ながらに帰ってきたので今回は楽しみにしていたのだが、今日の天気予報は「くもり」だった。実際に空を見てもどんにょりと雲が立ち込めていたので今日は諦めるしかないか・・・・・。などと考えながら車を走らせていると、何時の間にか雲もなくなり、青い空が一面に見えてきた。これは松島に行くっきゃない!と、早速、待ち合わせをしている仙台の友達に電話。

「もしもしー、とりあえず時間通りに着きそうだよ。それでさ、今日は松島行きたいんだけどいいかな?」

「OK、OK、んじゃ郵便局の前で待っているからそこまで来てね。」

待ち合わせ時間を少し過ぎて郵便局の前に辿り着くと、なつかしい顔が2人現れた。永井ちゃんとスミちゃんの2人組だ。この2人とも某チャットで知り合ったのがきっかけで、僕ら3人とも長い付き合いである。永井ちゃんスミちゃんは高校の同級生で昔から仲がいい。二人を車に乗せ、いざ松島へ。街中を抜けて郊外へ出ると、視界が開け、空の青さも際立つ。

「あー、あのガソリンスタンド!なつかしいねー。」

工藤クンが、ボロボロのガソリンスタンドの方を見ながらそう言った。オイラにもそのスタンドは見覚えがある。確かに4年前にガソリンを入れたスタンドだ。当時もボロボロで、雑草も生え放題でやっているのかやっていないのかがわからないほどなのだが、なぜかガソリン単価が異様に安いというので見覚えがある。チラッと燃料計に目をやると、すでに「E」を針が刺そうとしている。(入れるなら今だ。)そう思ったのだが、4年前と比べて外観のボロさも、値段の安さもかなりレベルアップしており、近寄りがたい雰囲気さえかもし出している。んー、これは止めておいたほうがいい・・・・。オイラの頭の中から声がした。懐かしかったのは確かなのだが、勇気が足りなかったようだ。結局、数軒先のスタンドでガソリンを入れる事にした。

昔、ガソリンを入れたスタンドがあると言うことは、それは4年前に通った道だという事だ。そう考えると、道自体に懐かしさを感じ始めていた。見覚えのある山道を上り下りして、最後の坂を下る頃には、目の前に松島の風景が見え始めていた。変わらない風景。ただ、4年前と違っていたのは天気と観光客の数だけだ。少なくとも4年前のように、雨が降っているときには観光客は居ない。渋滞の後ろにつき、駐車場でも空いている場所を探すのに一苦労・・・・。

松島さかな市場

車も無事に止めることができ、なにともあれ昼飯を食べる事にした。朝ご飯を食べる暇が無かったからかなりお腹が空いている。海岸沿いに林立している食べ物屋街を歩いていると、永井ちゃんが「こっちに魚市場があるから、そこで何か買って食べない?」と提案してくれた。魚市場と聞いて行かないわけにはいかない。工藤クンも薫チャンも目が輝きだしている。これで決まりだ。永井ちゃんの後ろを着いていくと、”松島さかな市場”と書かれた建物に辿り着いた。中に入ると、魚の宝庫。とりあえず、皆で食べられるような寿司やら刺身、名物の笹カマと牛タンをしこたま買い込んでテーブルに広げて皆で箸を伸ばして楽しい昼食。やはりさかな市場は楽しい。新鮮な魚を安く買い、そこですぐに食べる。食堂に入るよりよっぽど楽しいではないか。

松島周遊船の旅

お腹が脹れた所で、最初の目的が「観光」だということを思い出す。飯を食う前から「松島観光船」の看板がやけに目に入る。やはりここまで来たら乗らないわけにはいかない。が、案内役の2人はどー思うのだろう。きっと仙台を訪ねてきた友人たちは「松島行きたいー」「船乗りたいー」と、当たり前の展開に発展し、かなり乗り飽きてしまっているのではないだろうか。そう考えると心苦しい。乗りたいけど乗れない!!心の中で葛藤していると、「船乗ろうか?」と、永井ちゃんの一言。「え?乗ってもいいの?乗り飽きてない??」そう尋ねると「いやー、私、こういうの乗ったこと無いんだよねー。」それを早く言え〜〜!!「スミちゃんは?」「私は乗ったことあるけど・・・・。」ふっふっふ。そんなことを言われてもすでに遅い。

「おし、んじゃ乗ろう!!」

と言うことで、チケットを買おうと窓口に行くと、出発は30分後だという。んー、どうしようか・・・・。と考えていると、

貸し切り船  4人以上のお客様1500円(40分)

と、書いた張り紙が目に入る。これだ〜〜〜!!ちなみに大型の観光船の料金は1人1400円。100円プラスすることにより、30分待たなくていいのに加え、貸切になるなんてすばらしい。窓口のおっさんにそれを申し込むと、貸し切り船のチケットをくれた。それをもって乗り口に行くと、そこにいたおっさんが船まで案内してくれた。

揺れる船の船室に乗り込むと、案内してくれたおっさんが、そのまま舵を握った。どうやらこの人が運転してくれるようだ。「それじゃー、出発しますー。」スピーカーを通しておっさんの声がした。船室一杯にエンジンの音が響き渡ると、船は前に向かって進み始めた。だんだんと松島の島々が近づいてくる。「ここが○○島です。」スピーカーからおっさんの声が聞こえる。どうやらガイドも兼ねているようだ。景色をもっと見たいと思い、船尾の外へ出た。やはり屋根がなくなると眺めは最高である。外へ出ると、かもめが船を追っかけてきた。どうやらえさが欲しいらしい。かもめを近くで見つつ、松島の幻想的な風景に見惚れる。んー、船に乗ってよかった。
このおっさんは割とスピードを出してくれるので、他の船を抜き去っていくので気持ちがいい。大型の観光船の倍くらいのスピードで水面を走り抜けているのではないだろうか。40分コースだったのだが、あっという間に終わってしまった。
大型船に乗りなれたスミちゃんも「こういう貸切の船も面白いねー。小さいから揺れると思ったけど揺れなかったし。スピードも出て楽しかった!」そーか、オイラ達の選択は間違っていなかったんだ。

牛タン

夕方になると、永井ちゃんが一旦家に帰らなければならないと言うので、彼女の家の近くまで送り、オイラ達と、スミちゃんの4人で夕飯を食べに行く事になった。夕飯は工藤クンの強い要望で牛タンを食べに行く事になった。仙台の街中へ戻り、車を駐車場に入れて、とりあえず腹ごなしに仙台のアーケード街を歩く。ここは七夕祭りのときは盛大な飾り付けが行われるので有名な場所である。お土産を買ったりCDを買ったりして時間をつぶす。みんなのお腹が空いた頃、牛タンで有名な某店へ。細々とした道を歩いてようやく辿り着くと

「盆休みのため休業」

こういう事もあるもんだ。スミちゃんが永井ちゃんに電話をかけ、第二候補の店へ。そこがなかなか見つからず、4人でうろうろと街中をさ迷い歩く。ようやく辿り着いた頃にはちょうど良い具合にお腹が空いていた。
店に入り、注文をしてしばらく待つと、大皿に山のように盛られた牛タンが到着。4人前が一枚の皿に乗っかって出てくるようだ。そんな存在感があるものを目にしたら、もう食べるしかない!分厚く、そして大きく切られた牛タンを口に運ぶ。ん〜〜〜、美味い!そこらの焼肉屋で牛タンを頼んでも、こんなに美味しい牛タンは出てこない。やはり本場に来た甲斐がある。工藤クンも今までに見たことが無いような幸せそうな顔をして食べている。ここまでの人生で一番の出来事が牛タンと言うのもあれだけど・・・・。

花火

夕飯を食べ終わると、することもなくなったので作戦会議。することも無いから永井ちゃんを呼び出して、一緒に花火でもやろうか?と言うことになり、花火を買い出しにいった。スミちゃんちにも少し花火があると言うことなのでスミちゃんちにお邪魔する。ドアを開けるとスミちゃんの旦那様のお出迎え。そー、スミちゃんは新婚さんなのだ。旦那様に飲み物を頂き、しばらくくつろぐ。ふと部屋を見渡すと赤い団扇が目に入った。赤い団扇に白い文字でこう書かれていた。

「シャア専用」

うわー、これすげえ欲しい!!!かっこよすぎだ〜〜〜!!そう思ったおいらは旦那様に「これ、かなりいいですね。」と素直に感想を述べた。まさか仙台まで来て、シャア専用の団扇を見る事になるとは思いもよらなかった。いい思い出だ。感動に浸っていると永井ちゃん到着。旦那様も仲間に引き連れて、夜の海まで花火を持って出かけた。

浜辺には同じことを考えている若者どもがたむろしており、浜辺のあちらこちらで花火が上がっていた。それはいいのだが、とにかく風が強い。打ち上げ花火を見ていても、「風との戦い」といった感じで、風に流される打ち上げ花火が非常に印象的だった。

強い風が吹き荒れる中、種火に火をつけることに成功すると各自で花火を手にして遊んだ。オイラは黙々と打ち上げ花火をセットし、パンパン打ち上げまくって楽しんだ。風の為にのんびりとした花火は出来なかったのだが、それでも花火はおもしろいもんだ。
スミちゃんちに戻り、お別れをする前に銭湯の位置を調べてもらった。こういうことは地元の人に聞くに限る。場所もわかり、2人に御礼を言って銭湯へ。楽しい一日をありがとう。

スミちゃんに教えてもらったとおり、4号線を南下していくと、程なく目的地が見えてきた。辿り着いてみるとそこは銭湯ではなく、健康ランドのようだった。オイラ達は、スーパー銭湯のようなものを想像していたのだが、それは違ったようだ。とりあえずここしかあてがないので仕方が無い。

健康ランド

健康ランドに入るのは3人とも初めての経験。オイラ達の想像では、スーパー銭湯の豪華版みたいな気持ちでいたのであった。入場料は夜の11時以降は1,000円。あと、0時以降は深夜料金として、出るときに750円。スーパー銭湯と比べてべらぼうに高い。が、話を聞いていくと、どうやら休憩室で寝ることが出来るらしい。つまり風呂に入ったら雑居部屋で朝まで寝るこが出来るようだ。宿という考え方だと非常に安い。オイラ達のモットーは”車中泊”なのであるが、すでに1,000円の入場料は払ってしまったし、出るときにはどーせ750円取られるのである。そう考えたら何も車の中で寝る必要は無い。疲れるだけだ。

ここで朝まで寝るということで3人で話を決めて、各自風呂へ。タオルやら寝巻きまでセットで付いているので確かに安い。風呂から出ると、フロントで毛布を借りて休憩室へ。毛布まで付いているので、本当に至れり尽せりな感じだ。健康ランドがこんな所だとは思いもよらなかった。男子用の休憩室では40−50名ほどが床や椅子で寝ていた。これだけの人数になると、イビキもひどい。寝ようと思ったのだが、気になってなかなか眠れなかった。が、深夜1時を回っていたこともあり、いつのまにか眠ってしまったようだ・・・・。

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