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【ドタバタ温泉旅行】
                    震天 さん

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 -- 第三話 --


 さて、今回もおさらいを……と言うのも面倒だ(主に作者が)。
 という事で、第一話、二話を参照するように。
 まあ、今から旅館の外にある娯楽街へ出かけることになった。
 ただ、カレハ先輩、亜麻さん、紅女史は温泉を心行くまで堪能しているので不参
加。
 2大おじさんはみんなに忘れられているため参加出来ずにいる。

「うわぁっ!」

 プリムラはこういう所に来た事が無いのだろう。
 あっち見てはこっちに行き、こっちを見てはそっちに行くというかなり忙しい奴
だ。

「プリムラ、あまり俺たちから離れるなよ」
「うんうん!」

 聞いてるのか? こいつ。

「まあ、今まで施設暮らしが多かったから」
「初めて見るものがほとんどなんですよ」
「なるほど」

 唯一最強の魔力を……云々。
 まあ、仕方ないといえば仕方ないか。

「仕方ないな。ただ……」

 あまり触れたくは無いが、そろそろ暴走しだしそうなので放って置けなくなって
きたな。

「麻弓、亜沙先輩。物事には限度があるって知ってますよね?」
「もちろん♪」
「そんな常識な事、土見君の講釈を受けなくてもわかってるわよ♪」

 ホントかよ……。

「とにかく、持ち金をすべて使わない程度に抑えて……」
「稟君……」
「なんだ、楓?」
「もう、聞こえてませんよ?」
「なに?」

 楓が娯楽街の先を指差す。
 それを目で追うと、既に片っ端から遊んでいく二人が見えた。
 しかも、プリムラもノリノリでついて行ってるし……。

「は、早……」

 ほんの一瞬、ほんの一瞬目を離した隙に、目の前から二人は消えていたという事
だろう。

「はぁ、もう手遅れだな」

 仕方ない。
 あの3人は放棄するか。

「旅館に戻る時間は確認しておいたし、時間になれば旅館で会えるだろう」
「そうだね」
「私たちも少し回りましょうか」
「だな」

 結局4人で廻ることになる。

「ところでキキョウ、シアはまだ復活しないのか?」
「うん。結構時間がかかりそうなの」
「大丈夫でしょうか、シアちゃん」
「まぁ、大丈夫だろう」

 いろんな意味で図太い奴だし。

「さて、俺たちも少し遊ぶか」
「じゃあ、稟。あれあれ!」
「ん?」

 キキョウが指差すもの。

「射的か……」
「稟、やり方教えて」

 そうか、神界にはこういうものはないのか……。

「じゃあ、一緒にやってみるか」
「よーし! 当てるぞぉ!」

 2人分の料金を払い、俺とキキョウで挑戦してみる。

「この弾をここに入れて……」
「ふむふむ」
「狙いを定める。この時、なるべく銃を的に近づける」
「こ、こう……?」
「そして、トリガーを引く」
「えい!」

 スカッ!

 キキョウの撃った弾は的を外した。

「あ、あれ?」
「外れ、だな」
「キキョウちゃん、惜しかったですね」
「次は当てれますよ」
「よぉし! まだ始まったばかりだもんね。次こそ……」

 スカッ!

「……」
「……また外れたぞ?」
「うぅ……次!」

 スカッ!

「次!」

 スカッ!

「まだまだ!」

 スカッ!

「もう一回! ……あ、あれ?」
「弾切れ……」
「うぅ〜……稟〜……」

 1回5発なんだが、始めて1分も経たずに全部撃ち切ってしまった。
 しかも全部外れ。

「キ、キキョウ。どれが欲しかったんだ?」
「うぅ……あれ……」

 キキョウが指差したのは小さなクマのぬいぐるみ。
 そういえば、さっきから狙ってたみたいだな。
 あまりに的外れな場所に弾が飛んで入ってたから全然気付かなかった。

「あれか。よし……」

 ぬいぐるみに照準を合わせる。
 射撃は随分久しぶりだから腕が落ちてるかもしれないけど……。

「ていっ!」

 ぽてっ!

「あ……」
「あたり……ですね」
「すごいです、稟様!」

 ま、当てれて良かったよ。

「ほら、キキョウ。これが欲しかったんだろう?」
「……じぃ〜……」

 な、なんで俺、睨まれてるんだ?

「ど、どうした?」
「……自分で取りたかったのに……」

 そういうことは先に言え。

「じゃあ、これは俺からのプレゼント、ということで。な?」
「……」

 うっ、まだ恨めしそうに俺を見てるよ……。

「……プレゼント?」
「?」

 急にキキョウの様子が変わった。

「どうかしましたか? キキョウさん」
「……プレゼント……」
「キキョウ?」
「ありがとう! 稟!」
「は?」

 今頃?
 っていうか、態度変わりすぎだろう。

「♪」

 まあ、喜んでるようだし、深く考えないでおこう。

「あの、稟様。まだ、弾数は残っているんですよね?」
「ん? ああ、後4発残ってるぞ?」

 1発で当てれたからな。

「あの、私も……お願いしても良いでしょうか?」
「へ? ああ、いいよ。どれ?」
「あの……あれを……」
「え? お守り?」

 何のお守りなんだろう?
 まあ、あれくらいならいけるだろう。

「それっ!」

 ぽてっ!

「はい。ネリネ」
「ありがとうございます!」
「ところで、何の……」

『料理成功祈願』

 ……どんなお守りなんだ?
 こんなお守りあったんだ。
 っていうか、ネリネ、切実過ぎるぞ……。

「ま、まあ。頑張れ、ネリネ」
「は、はい……」
「そうだ、楓。お前もなんか無いか?」
「え?」
「いや、一人だけ何もなしじゃ不公平だしな」

 まだ3発残ってるんだ。
 後最大3つは取れる。

「そ、それじゃあ……」

 何も考えてなかったのか、今になって選んでいる。
 こういうところが楓らしいよな。

「あれをお願いします」
「ん? あれで良いのか?」
「はい。特に欲しいものは無いので」

 楓が選んだものは小さな箱。
 閉じているために何が入っているかわからないが、まあいいだろう。

「それっ!」

 ぽてっ!

 しかし、なんでこんなに簡単に取れるんだろう?
 屋台のおじさんが少し睨んでるよ。

「はい、楓。なにが入ってるんだ?」
「なんでしょう?」

 楓が箱を空けて中身を見る。
 だが、途端に顔を赤くして、蓋を閉じてしまう。

「? 楓?」
「い、いえ! な、ナ、なんでも、ナイ、デス!」

 最後なんか片言になってるぞ?

「楓、中になにが入ってるの?」
「た、たいした物は入ってません!」
「そういわずに、少しだけ見せてください」
「だ、だめです!」

 なに焦ってるんだろう?
 そんなに見せたくない中身なのか?
 そういうものほど見たくなるものだ。

「楓、どうしてもだめなのか?」
「ど、どうしてもです!」
「仕方ない……」

 俺は楓にはわからないようにキキョウに目で合図で送る。

「楓、見せてくれ」

 まあ、こう言えば楓は、

「だ、だめです!」

 と言って、箱を後ろに隠す。
 こうまで予想通りに動くとは。
 それを後ろで待ち伏せしていたキキョウがそれを奪う。

「隙あり!」
「あ! だ、だめっ!」

 と言っても、もう遅いんだけどな。

「キキョウ、なにが入ってるんだ?」
「……」

 キキョウが固まってる。

「キキョウさん?」

 ネリネも横から覗き、同じく固まる。

「二人とも?」
「「だ、だめ!」」
「は……?」

 今度は二人から止められた。
 いや、楓もだから3人か。

「ど、どうしても?」
「「「どうしても(です)!!」」」

 どうやら、俺は見ることはできないらしい。
 ……って、待てよ?

「おじさん、あれの中身なに?」
「「「あ……」」」

 そうだ。
 商品を出した本人なら知ってるはずだ。
 何で早くに気付かなかったんだろう?

「ああ。あれかい? あれは……」
「「「わあぁぁぁぁぁーっ!!!」」」
「……だよ」
「は?」

 3人の妨害があって何を言ったのかわからなかった。
 くそ、どうして教えてくれないんだろう?

「ところで」
「ふぇ?」
「残り2発。早くやってくれないか?」
「あ、わ、悪い……」

 仕方ない、適当に当てるか。



 結局、あの後キーホルダーとなぜか招き猫を当ててしまった。
 何でこんなもの狙ったんだろう?

「お兄ちゃーん!」

 周りの奴が一斉に振り向くから大声で呼ぶのはやめろって言ってるのに……。

「お兄ちゃん! ……あれ、なんで困惑してるの?」
「困惑する事があったからな」

 あの後、3人にいくら聞いても教えてくれない。
 何で俺だけ蚊帳の外なんだろう?
 今も俺から少し離れてるし。

「ところで、亜沙先輩と麻弓は? 一緒にいたはずだろう?」
「う……」
「リムちゃん?」
「いや、なんとなくわかった」

 あの二人だ。
 プリムラですら追いつけない領域に突入したに違いない。

「ところで、なんで楓お姉ちゃん、お兄ちゃんから少し離れてるの?」
「さあ? さっき射撃で取ったやつを渡してからずっとああなんだ」
「ふぅん。……あ、猫だ!」

 今になって気付いたのか?

「ネコネコ!」

 猫なら招き猫でもいいのかよ。

「ほら」
「わぁい! ありがとう、お兄ちゃん!」

 まぁ、残ったキーホルダーは俺の鍵にでもつけておくか。
 さて、旅館に戻るまでまだ時間あるし……。

「あの二人はちょっと止められそうにないしな」
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「ちょっとおなか減らない?」
「……減ったのか?」
「……うん」

 言われれば、ちょっと腹減ったかな?
 夕食まではまだありそうだしな。

「よし、なんか食うか」
「おー!」

 まぁ、こういう場合、相場はたこ焼きか焼きそば、etc……。
 でも、夕食前にそんなもの食べたらちょっときついか。
 妥当に飴で手を打っておくか。

「りんご飴にあんず飴、って言うのはわかるんだが……」

 最近自分で疑わしくなって来るんだよな。
 自分の常識は世間一般の常識とあっているのだろうか、と。
 周りがあれじゃあ、そういう部分も麻痺してくるからな。

「なんだ? このたこ焼き飴、って言うのは?」
「たこ焼きの飴、でしょ?」
「いや、そうなんだが……」

 あのたこ焼きが甘いのか?
 それとも、たこ焼きの味がする飴なのか?
 どっちにしろ、そんなもの買う勇気、俺には……。

「おじさん! たこ焼き飴1つと、りんご飴2つ、あんず飴2つね♪」
「はいよ!」
「おい……」

 誰だよ、あれを買う物好きは……。

「はい、お兄ちゃんの分だよ♪」
「お、サンキュ。……って待てや、こら!」
「なに?」
「何で俺がこれなんだよ!」

 俺に渡されたのはさっきから言ってるたこ焼き飴。

「だって、稟。さっきからそれ見てたからそれがいいのかな、と思って」
「キキョウ。大いに違うから」

 だが、まだ食べてはいないとはいえ、食べ物を返品するは……。

「……(ニコニコ)」

 屋台のおじさんが笑顔でこっちを見てる。
 返品は無理っぽいな。

「なぁ、これ……美味いのか?」
「さぁ? 今日初めて売れたから」
「……あそ……」

 つまり、皆怖くて買えなかったんだ。
 かといって捨てるわけにもいかないし……。
 いや、それ以前に、美味いかどうかもわからないようなものを売るなよ。
 周りを見てみると、キキョウや楓、ネリネにプリムラだけではなく、行き交う人
々まで俺に注目している。
 そんなに食う人が珍しいのか、この飴。

「……(ごくっ)」

 あ、勘違いしないでくれよ!
 別に美味そうに見えたわけじゃないからな!
 これを食べる覚悟を決めようとしているだけだからな!
 ……でも、もしかしたら案外美味いのかもしれない。
 まさか、あのたこ焼きの周りに飴を絡めただけ、というものは売らないだろう。
 なら、こう考えるのが自然だ。
 甘さは無く、たこ焼きの味がする飴だ!
 俺はそう思い込み、一気に口に頬張った。

「(ばくっ!)」
「「「「「「おぉーっ!」」」」」」

 俺がそれを口にすると、周りから賞賛の声があがった。
 なぜ?

「稟、どう?」
「美味しい……ですか?」
「……」

 俺は二人の問いかけに答えることができない。
 この、なんともいえない味……最高に……。

「……お兄ちゃん?」
「稟君……なんだか、顔が蒼いですよ!?」

 不味い!
 顔が蒼くなるほど不味い!
 ついでに言おう!
 体も震え始めている。

「……ぐはっ! ……おやっさん、なかなか……いい毒を……盛って、くれたな
 ……(がくっ)」
「きゃぁーっ! 稟ー!」
「し、しっかりしてください、稟様!」
「だ、誰か、お医者様を!」
「お兄ちゃーん! 死なないでー!」

 ああ、なんだか……意識が……朦朧と……して……き……た……。



 毒を盛られた(?)飴を食べてしまった稟。
 あまりの効き目に意識を失ってしまった稟の運命や如何に!?
 ……続く?

「そんな、中途半端な次回予告はやめてくれ」



 その頃の2大おじさん。

「ねぇ、神ちゃん」
「なんでい?」
「私たち、忘れられてるって事……無いよね?」
「「……」」

 忘れられてますよ、おじさん達。

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箱の中は何っ!?

……こほん。
や、だって気になります。(ぉ
私が思うに……使うときが来るとすれば楽しみです♪
……一応事前にご相談を!?(マテヤ

それにしても……純朴なプリムラの笑顔がなんと残酷なことか。
天然なのか、はたまた狙ってってるのか……
後者だとしたらお兄さんは怖くなってしまいます。(ぇ

たこ焼き飴 vs ネリネお料理のカードも気になりますね〜。
一口で稟を跳ばすとは、なかなかの威力です。たこ焼き飴。
お守りは効く……のでしょうか。

そ し て──
オトウサマ方の運命や如何に!?(笑
再び「待て、次回」なのです♪

Comment by けもりん


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