過去・否定・現在 第三話 軽い頭痛。 これが何を意味するのか俺にはわからなかった。 わからなかったし気に留めることもしなかった。 ・・・・ ・・・ ・・ ・ 『よ〜し、皆の者ぉ〜祝杯じゃ☆』 そう言うと俺は大量に買ってきた酒の缶に手をつけた。 そう言うと他の3人も缶を手にした☆ 『『『『かんぱ〜〜い♪』』』』 缶と缶がぶつかり合う鈍い音が木霊する。 ここから見る街は絶景だ。 ありとあらゆる場所に咲いている桜の木を一望できる。 しかも貸切だ。 星崎も良い場所を知っていたものだ。 新学期早々無礼講にも程がある気がするがそんな事は気にしない。 楽しければいいのだ。 『よし、つばさ飲み比べするか!?』 『おっ、いいね〜けど私は強いよ♪』 俺だって強いっての☆ 『あっ、そうだ、負けた時は何をする?』 俺は罰ゲームを何にするかを切り出した。 『や、罰ゲームとかやめといたほうがいいんじゃない?私負けないから』 『ばっ、ぷじゃけるなよ〜俺だって負けないぞ!じゃあ罰ゲームは無しで行くか!』 どちらかがギブするまでのエンドレス勝負に決定した。 『じゃあ合図を頼む』 俺は山彦と星崎に頼んだ。 『わかったわかった。無理するなよ、舞人』 『お〜け〜八重ちゃん頑張って〜』 『『よ〜い、スタ〜ト!!!』』 ・・・・ ・・・ ・・ ・ 結果:桜井舞人惨敗・・・ご愁傷様。 『私の勝ち♪って舞人、こんな所で寝たら駄目れしょ〜が〜』 流石につばさも多少は酔っ払っているようだった。 だが俺がつばさの声を聞いたのはここまでだった。 どうやら寝てしまったらしい・・・。 ・・・・ ・・・ ・・ ・ ん?ここはどこだ? ああ、あの丘か。 しかし、おかしい。周りを見てもつばさ達がいない。 それにその丘には見知らぬ青年と少女が立っていた。 ───これは・・・夢か 『やぁ、初めて訪れた街はどうだった?』 坂道を登ってくる少年に青年は言った。 少年はただ黙っているだけだった。 ───ん?あの子供。まだ幼い頃の俺じゃないか。 『今後・・彼らには近付いてはいけません。』 少女は切なそうにそう言う。 さっきから俯いて黙ったままの少年はゆっくりと口を開く。 『・・・僕は・・・彼らの心に触れてみたい。』 『ははは、心だって?奴らにはそんなものないよ。あるのは欲望の心だけだ!』 青年は微笑を浮かべながらきつく言い放った。 『・・・それでも・・僕は彼らのそばにいてみたい』 少年はハッキリと言い放つ。 『・・・どうやら本気みたいだね』 青年がため息混じりに言う。 『でもこれだけは覚えておきな!奴らは必ず君を裏切る!人間とはそういうものなんだよ』 あたりに風が吹き、桜の花びらが舞う。 『・・・私達以外の者の・・そばにいたいと思うのですか・・・』 『僕は・・もう決めたんだ』 『・・そう・・・ですか』 少女は悲しそうに俯いてしまった。 それでも少年は自分の気持ちをまげようとはしなかった。 『ではこれから儀式を行う。君を人間にするね。』 青年の声は良く聞こえなかった。 ただ、重要な・・・重要な何かを言っている事だけはハッキリとわかる。 『この儀式が終わる頃には君は人間になっている。それとこの丘での記憶は失われる。いいね?』 『・・うん』 そう言うと少年は闇の中へと消えて言った。 『ショータイムの始まりだ!結果の分かっている喜劇だけどね』 青年は高々と声を張り上げそう叫ぶ。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ 『舞人ぉぉ〜いい加減に起きなよ!!!』 ゆっくりと目を開けると俺の顔を覗き込むようにしているつばさがいた。 『ん・・・おはよ』 『も〜舞人ってばあれから5時間も寝てたんだよ』 『5時間!?』 辺りを見渡すと山彦と星崎の姿はどこにも無かった。 どうやら先に帰ったようだ。 『いや〜起きるまで待っててくれたのか〜ありがとう』 俺はつばさにそう言う。 『や、気にしない気にしない☆それじゃ帰ろうか』 『おう』 そう言うと俺とつばさは二人で丘を下っていく。 その途中で俺は振り返る。 さっきの夢はなんだったんだろうか・・・ あの夢が頭から離れない。 『どうしたの??』 『・・いや、なんでもない』 そう言うと俺は振り返りつばさのいるほうに駆けていく。 そうだ、気にしても仕方が無い。 振り返らず前を見ていこう。 ・・・ ・・ ・ その時の俺はあの夢が深い意味を持っているという事に気付かないでいた。第二話へ 第四話へ