過去・否定・現在 第五話
『おっはよ〜舞人♪』 机に突っ伏している俺につばさは元気良く挨拶をしてくる。 ・・・今日はテンション高いな。 『ああ、おはよ』 俺は力無くそう言った。 『ん?どうしたの?舞人。元気ないじゃん?』 『いや・・・ちょっとな・・・なぁ、つばさ、放課後付き合ってほしい所があるんだが』 『ん、いいけどどこ行くの?』 『花見に行った丘だ』 『あの丘?また桜でも見たくなったぁ?』 『いや、そう言うわけじゃないんだけどな〜どうしてももう一度行きたかったんだ』 『ふ〜ん、わかったよ。あ、ヤマとゾンミも呼ぶ?』 『ん、まあ別に良いけど』 『じゃあちょっと聞いてくるね☆』 そう言うとつばさは山彦と星崎のいる方へと向かっていった。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ しばらくしてつばさは星崎と一緒に俺の席へと帰ってきた。 『ヤマは用事があるんだって〜まあ女だよね〜。で、ゾンミはちょうどバイト休みだからいいだって♪』 『さくっち〜また行きたくなったの?』 『ああ』 俺はそれだけを二人に告げるとまた机に突っ伏していた。 つばさと星崎は不思議そうな顔をしていたに違いない。 だが今はそんな事には頭が回らなかった。 あの丘にもう一度・・・ その気持ちだけが最優先だった。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ 放課後。 『それじゃ、行こっか♪』 星崎は何故か上機嫌で、一人足早に先を歩いていく。 そんな星崎を追う様に俺とつばさは肩を並べて歩いている。 『ねぇ、舞人。また行きたい理由話してくれない?何か隠してるでしょ?』 歩いていると不意につばさが尋ねてくる。 『やっぱり、つばさに隠し事は出来ないな』 『や、彼女なんだから隠し事なんかしたら怒るよ』 そう言うとつばさは笑顔で俺の頭を叩く。 やっぱり俺が好きになった女だけはある。 つばさのおかげで気分が少しは楽になった。 『あの丘に着いたら話すよ』 『よっし☆』 ・・・ ・・ ・ そんな事をしていると目的の丘が見えてきた。 『とうちゃっく♪』 星崎はやはりどこかテンションが高かった。 どうしてあそこまでテンションが高いのかは謎だった。 『ふぅ』 俺は一息つくと辺りを見渡す。 今日、ここを訪れたのは2度目。 もちろん生涯で2度目だ。 夢で見た光景を思い出す。 だが、全く記憶にない。 やっぱりただの夢か・・・。 俺はそう思う事にした。 ・・・ ・・ ・ 『舞人、さっきの話の続き〜』 『ん、ああ』 そう言うとつばさと星崎に俺が見た夢の話をした。 が、星崎は一人テンションが高く俺の話を聞いていないようだった。 つばさは最初から最後まで話しを聞いていてくれた。 『そんな夢みたんだ〜まあ気になるのはわかるけど気にしすぎはよくないよ』 そう言うとつばさは話を続けた。 『だって舞人はここに来たのは前の花見の時が初めてなんでしょ?』 『ああ』 『だったら気にするだけ無駄だって☆』 つばさは満面の笑顔で俺に言ってくれた。 そうだ。 気にする必要なんか無い。 あれはただの夢だ。 俺はそう思う事にした。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ 『ゾンミ〜帰るよ〜☆』 一人街の風景を眺めていた星崎につばさは告げた。 『あ、うん。今行くよ♪』 そう言うと星崎は俺達を追って駆けてくる。 夕焼けの中、舞い散る桜がとても幻想的だった。 ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ その夜、俺はテレビゲームに明け暮れていた。 疑問が消えたわけではないがつばさの言うとおり見に覚えの無い事で悩んでも仕方が無い。 そう思う事にした俺は【万物の霊長ホモサピエンスVS近代化の象徴パーソナルコンピュータ】を開始したのだ。 『今宵も淫楽肉奴隷の剣は冴え渡っておるわ〜』 俺はいつもの調子を取り戻し、ゲームの世界へと浸っていた。 ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜ららららら〜♪ 不意に電話が鳴った。 『誰だ?こんな時間に・・・』 俺は愚痴を言いながらもゲームを続行した。 みんなも知っての通り、俺はゲームをする時はその世界へと浸ってプレイするのだ。 ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜ららららら〜♪ ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜ららららら〜♪ ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜ららららら〜♪ ちゃらら〜ら〜ら〜ら〜ららららら〜♪ ・・・・・・・、プチッ←キレた音。 『あ〜もう、うっさい!(怒)』 一向に切れることの無い電話を俺は怒りながらも取り上げた。 携帯電話のディスプレイには・・・ 【発信者:星崎希望】の文字が書かれていた。
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