泉谷 しげる


DISCOGRAPHY Part 03 (1980 - 1991)



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オールナイトライブ

1980

★★★

 Asylum からの3作目にして最終作. BANANA の面々をバックに従えての池袋文芸座でのライヴ・アルバム.このアルバムを最後に泉谷氏は今度は Polydor に移籍しますが,これってやはり放浪癖? また,公式アルバムとしては,『泉谷しげる登場』・『ライブ泉谷〜王様達の夜』・『HOT TYPHOON FROM EAST』に続く4作目のライヴ・アルバムですが,この人,とにかくライヴ・アルバムの枚数が多いです.制作に行き詰まるとライヴ・アルバムをリリースしてお茶を濁している,などという意地の悪い批判もありますが,そうではなくて,多分本人が好きなだけだと思います.ただ,収録曲が, ELEC 時代の『地球はお祭りさわぎ』から2曲に『黄金狂時代』から4曲, Asylum 移籍後の『80のバラッド』から3曲に『都会のランナー』から2曲と,相変わらず ELEC 時代の曲が半数以上を占めているのは,少々残念な気も....

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NEWS

1982

★★★

 Polydor 移籍第1作であると同時に, ELEC 時代の『地球はお祭りさわぎ』・『黄金狂時代』に続いて3作目となる泉谷氏自身の単独プロデュース作品.実は前2作(『80のバラッド』・『都会のランナー』)同様,加藤和彦氏にプロデュースを依頼したものの,加藤氏のスケジュールの折り合いがつかず,本人のプロデュースという事になったらしいです.バックを固めるのは『オールナイトライブ』同様, BANANA の面々.解説に,「ロッキード事件/イトウモトコ/現在の日本/米ソの核戦略/近親相姦/孤独な飛行士のイメージ,で製作された」とあるように,泉谷氏自身によると「音楽をやめよう,って感覚ではじめた,音楽ではなくて,音による『時評』」という事らしいですが,コンセプトとしては結構面白く,個人的にはこの第1期ポリドール時代の作品の中では,最も楽しめた作品でした.

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39°8′

1983

★★

 Polydor からの第2作目. Asylum 時代の『80のバラッド』・『都会のランナー』で自らの新しい方向性を打ち出したかに見えた泉谷氏でしたが, Polydor に移ってからの作品はどれも,その路線から意識的に外れた試行錯誤を感じさせるものでした.泉谷氏自身も「このアルバムはリハーサル」という意識だったらしいです. ELEC 時代の旧友,仲井戸麗市氏がゲスト参加,『しゃ・か・り・き』を提供しています.

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REAL TIME

1984

★★★★

 1983年11月6日,渋谷公会堂でのライヴを収録した2枚組.バックを固めるのは 2019 Replicants の面々で,仲井戸麗市氏も参加しています.内容は, ELEC ・ FOR LIFE ・ Asylum ・ Polydor の各時代の作品がバランス良く収録され,泉谷さん自身もノッていますが,このライヴの写真の泉谷さんはまるで渥美清,おじさんしてます.

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ELEVATOR

1984

★★

 泉谷氏によれば,「『39°8′』はリハーサルのつもりだったが,『エレベーター』でまたリハーサルやってしまった」という事で,またも試行錯誤的なアルバム作りを展開していますが,この第1期ポリドール時代の作品,正直言って試行錯誤のまま終ってしまった感じ強いです.もっとも, FOR LIFE 時代,評価の高かった『家族』の後に『光石の巨人』でその評価をブチ壊したように,今回も『80のバラッド』・『都会のランナー』と同じ路線をあえて避けて試行錯誤に走るあたり,この人の生き方が感じられて好感は持てますが,お世辞にも成功したとは言えないと思います.また,個人的な好みから言えば,前作やこの作品で聴かれるようなデジタル・サウンドが最もしっくり来ないのが,この人のような気がするのですが....

30

SCAR PEOPLE

1986

★★★

 忌野清志郎氏プロデュースにより,自主制作された4曲入りミニ・アルバム.前作での仲井戸麗市氏に続いて,今度は忌野氏と組んでおります.この3人,1970年代前半のいわゆる『ニュー・フォーク・ブーム』に登場した人たちの中では,その終焉後 Rock 色を強めていって成功したという点で共通点がありますが,もともとその素養があったんだと思います.結局,あのブームもかなり作られたモノであったわけで,『反体制』を歌っていながら『体制』に踊らされていたわけで,そういう意味では,ブーム終焉後のこの時期こそ,この人たちにとっては好きな事がやれたんだろうね....?  Rock してます(笑).




31

泉谷しげる

1987

-

 1976年に FOR LIFE からリリースされたアナログ盤ベスト・アルバム『Very Best of Shigeru Izumiya』(18)に,『国旗はためく下に』1曲を追加収録したベスト CD.

32

吠えるバラッド

1988

★★★

 Victor 移籍第1作.何とこれで5つ目のレーベルですが,この Victor 在籍期間が一番長かったのは,やはり一番好き放題させてくれたからなんでしょうね? リリースまで3年間を費やしたこのアルバムですが,泉谷氏自身かなり気にいっているみたいで,著書の中で「120点満点.レコードであれだけ興奮したのは『80のバラッド』以来」と書いています.確かに Polydor 時代の一連の試行錯誤的な作品群と比較すると,かなりテンション上がっていますし,仲井戸麗市氏をはじめとするバック陣のサポートも素晴らしく,かなり充実したサウンドを聴かせてくれる作品ですが,この1作だけで『泉谷復活』と喜んでしまうわけにはいかないのでした.実は私, '80年代の泉谷氏の作品ってほとんどリアルタイムでは聴いてなくて,久々に買った『'90's バラッド』が気にいったもんで,後から Polydor 時代の作品群とこのアルバムを聴いたんですが,リアルタイムで聴いていたら,この作品の衝撃はもっと大きなモノだったかも知れません....

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HOWLING LIVE
SHIGERU IZUMIYA with LOSER

1988

★★★

 前作でバックを務めていた,仲井戸麗市(G)・下山淳(G)・吉田建(B)・村上秀一(Ds)による "Loser" を従えての,オリジナル・アルバムとしては通算5作目にあたるライヴ・アルバム.1988年4月5日, "PIT" にて収録.ホント,この人ライヴ好きなんですね? でも今回はテンション上がりすぎ.... これまでで最高のバック陣を従えて,ノリにノっているのは良いのですが,少々空回りしてしまっているような気がします.各曲のアレンジも凝り過ぎかなって感じ,オリジナルの方が好きです.

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IZUMIYA SELF-COVERS

1988

★★★★

 前にもどっかで書きましたが,個人的には,私,ある程度キャリアを積んだアーティストが何故かセルフ・カヴァーやりたがるってゆ〜の,あまり好きくないんです.さらに,泉谷さんの場合,ライヴ・アルバムの数が他のアーティストに比べて多いので,さらにカヴァー出す必要はないんじゃないか? という感じで,「あ〜あ,また『春夏秋冬』か〜」くらいに思っていました.実際に聴いてみての感想は,セルフ・カヴァー・アルバムとしては期待していた以上に良い出来で,中でも一部歌詞を変更ならびに追加している『行きずりのブルース』が気にいっていたりするのです.

35

'90's バラッド

1989

★★★★★

 というわけで,泉谷さんの作品については, ELEC ・ FOR LIFE 時代はほぼリアルタイムで聴いていたのですが, Asylum に移ってからは,『オールナイトライブ』しか聴いていなかった私が,初めて CD を入手したのがこのアルバムでした.買ったきっかけは,「泉谷さん,今どんなことやってるのかな?」という感じでしたが,聴いてみてかなりの衝撃を受けました.そこには ELEC ・ FOR LIFE 時代には見られなかった泉谷さんの姿がありました.それで,後から『80のバラッド』以降の作品を聴いたわけですが,やはりこの作品を初めて聴いた時ほどの衝撃は受けられませんでした.今回のバックもまた LOSER ですが,何故かクレジットは『泉谷しげる』で, "with LOSER" とはなっていません.

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Day by Day

1991

-

 FOR LIFE からリリースされた,デビュー20周年記念ベスト・アルバム. ELEC 及び FOR LIFE 時代の代表曲全18曲を収録.