(NIRA特定研究助成B類:「NIRA政策研究」(月刊)Vol.13 No. 8) 女性が起こす事業型市民活動の可能性 新たな価値創造へのステップ
はじめに
近年、市民のニーズの多様化・個別化が進むなかで、公平性・画一性を前提とする行政や利潤を追求する企業では対応が困難な社会サービスに取り組むセクターの台頭が待たれている。公共サービスのあり方についての価値観の全市民的な共有が難しくなり、ニーズのある人々が十分な対価の支払能力を持たない状況で、「自分が必要だと思うから」という生活価値判断に基づいて柔軟に取り組む市民活動への期待は大きい。そのような活動では、女性や高齢者、学生など、産業社会の中では脇役を演じていた人々が活躍している。
中でも女性は、その感性<生物学的な理由に発するものではなく、幸か不幸か、歴史的に男性よりも産業社会に同化していないという意味における感じ方>を活かして、上記のような活動の中で、経済的価値基準では測り切れない「新たな価値」を形成する主体となっている。新たな価値とは、われわれの満足の本質的な部分を構成するものであり、「物の豊かさから心の豊かさへ」という使い古されてはいるが、何ら解決されていないスローガンに対する答えの一つでもある。
このような「新たな価値」の連鎖が、市民活動の脆弱な運営・活動基盤を活性化させ、当初想定していた枠組みを乗り越えて地域の暮らしを豊かにしていく可能性を高めている。
女性による活動は多岐に及ぶが、本研究では既に事業型として自立しつつある山村地域振興型と生活相互扶助型の2タイプの市民活動について、「新たな価値」の形成に着目してケース・スタディを行う。タイプの異なる活動に共通する新たな価値の形成について検証するとともに、それを媒体として様々な組織や活動と連携し、女性を中心とした市民活動が自立・発展していく可能性について検討する。
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