(NIRA特定研究助成B類:「NIRA政策研究」(月刊)Vol.13 No. 8) 女性が起こす事業型市民活動の可能性 新たな価値創造へのステップ
事業型市民活動とは何か
民間組織の活動には、経済性と社会性という特性がある。経済性とは、何らかの社会的ニーズに応えようとする活動における生産性や営利性の指向をいう。社会性は、社会的な要請に対する義務感であるとか、自らの価値観に基づき社会に対して何らかの働きかけをしようとする活動への指向をいう。経済性指向の純粋類型としては営利企業の活動を、社会性指向の純粋類型としては、宗教団体の慈善活動を挙げることができるが、これらの純粋類型を両端に置きながらも、実際の具体的な活動は、いずれかに明確に区分されるものではなく連続的で相対的な関係の中のどこかに位置している。
本研究では、「事業型市民活動」をこの2つの特性の間にあって、社会性を前提条件としながらも、経済性を考慮し、その活動を事業として継続していこうとする活動と定義する。無償のボランティア活動や慈善活動のみでは、事業の安定性・継続性の面で困難を伴うことが多く、また、無償ゆえの一方的関係に陥るおそれがある。ボランタリーな思いを大事にしながら、かつ責任と解決能力を持ち継続的な社会サービスを提供する活動が事業型市民活動である。
類似する活動として「コミュニティ・ビジネス」と呼ばれるものがある。コミュニティ・ビジネスについては、(1)地域に密着した事業展開、(2)地域のヒト(時間)・モノ・カネ・情報(知識や専門性)などの資源の活用、(3)事業収益の地域への再投資、(4)地域企業との共同や従業者の積極参加による運営、(5)過剰でない正当な利益と地域の社会的問題の解決への貢献といった特性が挙げられている。
事業型市民活動もこれらの特性を有しており、似たようなポジションにあるといえる。しかし、コミュニティビジネスが産業社会の枠組みの中に新しい価値観を持ち込んだのに対し、事業型市民活動は、新たな価値を前提条件として、経済性を取り入れているという点に相違がある。
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