(NIRA特定研究助成B類:「NIRA政策研究」(月刊)Vol.13 No. 8)
女性が起こす事業型市民活動の可能性 新たな価値創造へのステップ

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ケーススタディ(その1)山村地域振興型

   今回、山村地域振興型のケースとしては、静岡県天竜市の「くんま水車の里」と、静岡県中川根町の「四季の里」を取り上げた。両者とも、市街地から車で数十分のところにある、農業や林業を主産業とした山間地の集落にある。

   くんまは、県の「ふるさと活性化対策事業」補助金を受けた施設で地元食材を使った食堂と農産物などの加工販売を行っている。四季の里は、ヨモギ饅頭やヘチマ水(化粧水)を中心に、農作物などの加工販売を行っている。両者とも年間売上が1億円を超え、地区の中心産業の一つになっている。

   両者とも、市場に出せないために捨てられたり、自家消費するしかなかった少量の農産物や加工品を地域の食文化として活かそうとしたこと、また、一方で、農家の女性が外で働くことを認められ、現金収入を得る場所が欲しいと考えていたことなど、共通の動機があった。初めは朝市から始まり、少しずつ、その商品価値が認められ事業が拡大していった。その過程で、商品販売所のような多額の投資を伴う事業形態に移行しようとしたとき、くんまでは、四千二百万円もの地元負担金を地域住民で組織する「活性化推進協議会」が負担し、四季の里では、有志からの出資によって乗り越えた。女性たちの強い意志と自信が、はじめは懐疑的だった地域の男性たちや他の農家の協力を引き出したわけである。

   それらの活動の中では、地域の高齢者にも、働く場が与えられ、女性と同様に経済的な収入は大きくないが、働く喜びや仲間とのコミュニケーション、そして何よりも、その存在意義を人々に認められているという精神的報酬を得ることに成功している。

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