(NIRA特定研究助成B類:「NIRA政策研究」(月刊)Vol.13 No. 8)
女性が起こす事業型市民活動の可能性 新たな価値創造へのステップ

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ケーススタディ(その2)生活相互扶助型

   生活相互扶助型としては、静岡市に拠点を置くNPO法人「活き生きネットワーク」と清水市にある「WAC清水さわやかサービス」、袋井市にある「たすけあい遠州」の静岡県内の三団体を取り上げた。共に、有償ボランティアによる介護や家事援助、移送サービスなどを行っている。

   「活き生き」は前述のようなサービスに加えて、介護や電気水道工事などの専門的な人材や企業等と被支援者とのコーディネートも行い、また、有償ボランティアに保母やホームヘルパー、看護婦などの有資格者が多いのが特徴である。「WAC」は介護、家事援助、移送サービスが主であり、デイサロンをつくることが当面の目標の一つになっている。「遠州」は主に高齢者世帯を対象とした夕食の宅配サービスに特徴がある。「WAC」と「遠州」は時間預託制度を取り入れている。

   三団体ともに、両親の介護で苦労したとか、働いているために自分の子どもを保育園に迎えにいけなくて困ったとか、代表者自身の体験が活動の出発点となっている。有償にした理由はそれぞれ微妙に違いがあるが、ボランティア自身の責任感を高めるという点と、援助者と被援助者の間に対等な関係をつくりたいという点が重要である。時間預託制度は、十分な対価を得られないという経済的な限界を、将来における見返りへの期待に裏付けられた労働奉仕で乗り越えるという意味もあるが、それよりもむしろ、前述のような関係の中で、ボランティアが受け入れやすい報酬のかたちの一つとして捉えられている。

   このような活動の中から得られるものは、まず第一に人と人との信頼関係である。特別養護福祉老人ホームを辞め「活き生き」の専従スタッフになった介護福祉士は、年収は減ったが「利用者一人一人と向き合い、その人にとって最善の方法を見つけ出して支えになっている」という実感を掴んだと語っている。

   また、「遠州」では、近隣の農家や精神障害者社会復帰作業所の野菜や卵などを販売する縁側ショップを開いているが、山村地域振興型と同じく、市場では評価されにくい生産物が飛ぶように売れ、彼らにとって少なくない収入になっている。「活き生き」と「WAC」におけるボランティアの労力は、家庭の主婦、高齢者などの労働力や、相応の対価の提供が見込まれないような状況でも理想的な介護サービスをしたいという専門家などの気持ちによって支えられている。

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