らうんじ10短歌
1.メタセコイア
メタセコイア(和名アケボノスギ)は、はじめ化石として知られていました。それが1940年代に中国の四川省や湖北省に生きた木が発見されたことから”生きた化石”とよばれるようになりました。その後世界各地で栽培され大木に育っています。静岡市の城北公園にもメタセコイアの木が並ぶ静かな道があります。下の6首はここを歩いたときの作品です。
メタセコイアの道(左の写真)。メタセコイアの若葉(右の写真) 静岡市大岩本町の城北公園で(2003年4月29日撮影) |
繁りあう葉より降りくる木の霊と薄き木漏れ日メタセコイアの下 |
生きている化石なるこのメタセコイア幹の梢は遥かに見えず |
その遠き命の歴史メタセコイア巨木は今を枝はるものか |
太古なる森を思うもメタセコイア同じ姿に立ちてありしか |
メタセコイア太古の森林その内に抱かれていし暗き空間 |
メタセコイア繁りあいつつ木の下の道暗くして犬が人曳く |
2.ホタル
我が家の横に小さな水路が流れています。生活廃水も流れ込んでいますが、5月末から6月中旬にかけてここにホタルが見られるのです。 一時は絶えてしまったのではないかと思った年もありましたが、2003年には多い日には7,8匹も見られました。命は確かに受け継がれています。体長は約15mm、ゲンジボタルのようです。 草むらに、葉の上に、流れに渡した鉄板の橋の上に、そしてときにはガラス戸の向こうに点滅していたりしました。 こうしたホタルたちを詠んだ6首です。 (写真は2003年5月から6月にかけて静岡市向敷地で撮影) |
この年もホタルは生(あ)れていたりけり霧雨の闇に光流るる |
乱舞するほどにはあらね昨日(きぞ)ひとつ今宵はみっつホタルを見たり |
葉の繁み深くホタルがこもるとき光の洞がそこに現わる |
熱からぬ火は愛(かな)しかりホタルひとつ手に囲うとき漏るる光か |
玻璃戸のうらホタルが少し動きたり人魂のごときそれの明滅 |
生垣のカイズカイブキの葉の繁みホタルふたつが相寄るを見き |
<参考文献>
メタセコイア
『週刊朝日百科植物の世界127 ビャクシン、スギ、セコイア』P217〜219(朝日新聞社)
ホタル
『学研の図鑑昆虫』P49 (学習研究社)
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