鉢植の木らうんじ11写真

フォト覚え書き-タンポポとその仲間たち

我が家(静岡市)の近くや旅先で見かけたタンポポとその近縁の植物たちの記録です。観察と覚え書きを写真に添えました。


1. 在来種と外来種
タンポポには昔から日本にあった在来種と、外国から入ってきた外来種とがあります。このどちらであるかは、総苞片(そうほうへん)を見ればだれでもたやすく見分けられるとされてきました。ところが1990年代になって、そう簡単に言えないことが分かってきたのです。
このことを次の写真のタンポポで説明します。これは我が家の近くの田の畔に咲いていたものです。

畦のタンポポ
タンポポを含むキク科の花は、花びらのように見えるのがひとつの花で、小花とよばれます。小花が茎のてっぺんに、ぎゅっと集まってひとつの花のように見えるものを頭花(とうか)といいます。

そして、頭花を下から支えるようにしてついている緑色の「がく」のような部分が総苞です。総苞はたくさんの総苞片(そうほうへん)が鱗のように重なって成りたっています。この写真中、右側の花、→の先はひとつの総苞外片(外総苞片ともいいます)を指しています。

総苞外片がそりかえって下にたれていれば外来種、総苞外片が立っていれば在来種のタンポポである、と言われてきました。

この写真のタンポポの総苞外片は、そりかえっていますから、上記の分け方では外来種ということになりますが。

しかし1990年代から、在来種と外来種との雑種が見られるようになったというのです。雑種には、外来種のように総苞外片がそりかえって下に向いているもの、横向きのもの、在来種のように立っているものまであるようです。

ですから、この写真のタンポポは雑種かもしれません。DNAを調べるなどしないと、厳密な判定はできなくなってしまったのです。


2. これらは在来種でしょうか
下の写真のタンポポ2種はどちらも総苞外片が立っていますから、以前なら直ちに在来種と判定されたでしょう。でも、こういう雑種もあるとなれば、わかりません。もし在来種ならば、カントウタンポポかトウカイタンポポの可能性が大きいでしょう。

在来種タンポポ?


3. 中間形の総苞
中間型のタンポポ
総苞外片がこんなあいまいな様子をしているものをみつけました。

左側の花は、ある部分にはそりかえった総苞外片があり、ほかの部分は立っている総苞外片だけです。

右側の花は、一部の総苞外片が中途半端にそっています。
これらは雑種でしょうか。


4. シロバナタンポポ-在来種です
我が家の庭や、近くのあぜ道などに毎年シロバナタンポポが咲きます。黄色のものに比べると数は少ないですが。これは在来種のタンポポです。

シロバナタンポポ
シロバナタンポポは関東以西に分布しています。九州や四国にはシロバナタンポポ以外のタンポポは分布しない地域があります。そのような地域では「タンポポの花は白い」と思われているということです。

次の俳句は、昔ある新聞の投句欄に見かけたものです。作者名は忘れてしまいましたが。また、用字もこれでよかったかどうか定かではありません。

 ・白一面たんぽぽの花田原坂

田原坂は西南戦争の激戦地です。
作者には、タンポポの白が戦死者の魂のように見えたのかなと思ったものでした。


5. モモイロタンポポ
モモイロタンポポ
2001年5月、静岡県榛原郡吉田町で行われていた「しずおか緑・花・祭」の会場で見たモモイロタンポポです。和名モモイロタンポポですが、上記にあげたタンポポとは属がちがうようです。

学名はセイヨウタンポポがTaraxacum officinale 、カンサイタンポポがTaraxacum japonicum、シロバナタンポポがTaraxacum albidum、モモイロタンポポがCrepis rubraです。それぞれTaraxacum、Crepisが属名、その後のが種名です。

つまり、セイヨウタンポポ、カンサイタンポポ、シロバナタンポポは同じ属ですが、モモイロタンポポはそれらとはちがう属というわけです。

モモイロタンポポは南イタリアからバルカン半島に分布するということですが、近年日本では園芸植物として育てられ、野生化しているのもあるということです。


5. おばけタンポポ
おばけタンポポ
2004年4月中頃、我が家近くの田のほとりで見かけたいわゆる「おばけタンポポ」です。

小花がつくところが長くひろがっていて、茎が扁平になっています。帯化(たいか)という現象です。茎の巾は1.4cmもありました。おばけタンポポの左に3本ある正常なタンポポと比べてみてください。
こうなるのは突然変異だとか、農薬または環境ホルモンが原因だとかいろいろいわれているようですが。

おばけタンポポには、茎が複雑に曲がって、異常な形の頭花をいくつもつけたグロテスクなのがあるようですが、これはそれほどではありません。

おばけタンポポが毎年でてくるところがあるということです。この場所にも来年また見られるのか、注意してみることにします。

なお、タンポポは花が咲き終わると花茎は傾いて倒れます。この写真に見られる、3本の正常なタンポポがその状態です。


6. 果実をとばすタンポポ
冠毛をつけたタンポポ
タンポポは花が咲き終わると、花茎は傾いて地面に倒れます。そして再び伸びて真っ直ぐに立ち上がり、果実を飛ばします。

これは、2004年5月1日に見た、果実をつけたタンポポです。右のにピントを合わせました。冠毛をつけた果実はほとんどが飛んでいった後で、まさにこれから飛び立とうとしているのがいくつか。

この後、さあーと吹いてきた風に乗って一斉に飛んでいきました。

湿ったところに落ちて発芽しますが、発芽率は外来種のセイヨウタンポポが90%以上なのに対し、在来種は平均60%だそうです。


7. これらはタンポポではありません
タンポポとまちがえられやすい植物のうちの2つで、左のがノゲシ、右がオオジシバリです。どちらもよく見ればタンポポとは容易に区別できます。
タンポポは地面から伸びた花茎のてっぺんにひとつだけ頭花があり、花茎には葉がつきません。しかし、ノゲシには花のついた茎に葉があります。
また、オオジシバリはタンポポに比べて花も葉も薄いのです。そして頭花はひとつの茎に数個つきます。この写真のオオジシバリは咲いている1個の頭花以外につぼみが2つ見えます。
このほかに、タンポポとまちがえられやすい植物としては、ノゲシに似ていて葉に鋭いとげがあるオニノゲシ、オオジシバリに似たジシバリ、そしてニガナなどがあります。
ノゲシ
オオジシバリ
ノゲシ オオジシバリ


[後記]
1)
タンポポの分類は非常に難しいもののようです。葉の形は栄養条件によって変わるので分類の手がかりにはなりません。
外来種か在来種かの見分けは総苞外片が立っているか、そりかえっているかだけではできなくなっていることは上に述べた通りです。
そこで、総苞の長さ、総苞長に対する総苞外片の比(総苞外片は内側の総苞より短い)、総苞外片先端の小角状突起の大きさなどを分類の手がかりにするということです。
在来種には、カントウタンポポ、トウカイタンポポ、カンサイタンポポなどがありますが、そのどれであるかは上記の特徴により判断するというわけです。外来種のセイヨウタンポポとアカミタンポポの区別も小角突起の有無によるということです(セイヨウタンポポにはなくアカミタンポポにはある)。
来年はこうした特長を詳細に観察してみようと思いました。

2)そのほか、このページをつくりながらタンポポを材料とする実験や観察で、やってみたいことが次々に思いうかんできました。
外来種、在来種、雑種の見分けはDNAを調べる以外に、花粉の観察でもある程度できるようです(下記参考資料-ホームページ3)
花の開閉と環境条件との関係を調べる。タンポポは光がある程度強いと開花し、弱くなると閉じるといわれていますが、温度などの影響もあるようです(下記参考資料−文献1)。
花茎の運動の観察。花が終わると花茎は横に倒れます。冠毛のついた果実が出来るころには再び立ち上がります。
開花してから果実ができるまでを観察する。冠毛のついた果実はどのようにしてできてくるのでしょう。果実の形は在来種と外来種でちがうということなので(下記参考資料−文献1)それも確かめたいと思います。
オバケタンポポは同じ場所に来年もでてくるでしょうか。
栄養生殖の実験。これは以前実施したことがありました。タンポポの根(とても長い!)を掘り出し2〜3cmに切る。これを水平に土の上に置き、うすく土をかける。やがて上の切り口からは葉が、下の切り口からは根が出てくる。


[参考資料]
(文献)
1)『タンポポの観察実験』P42〜50(ニュー・サイエンス社)山田卓三著
2)『週刊朝日百科植物の世界7 ガーベラ、タンポポ、チコリ』P202〜213(朝日新聞社)
3)『静岡県の自然春の植物』P50〜52(静岡新聞社)黒沢美房・近田文弘・斉藤全生・杉野孝雄・杉本順一・戸田英雄著
(ホームページ)
1)日本の代表的なタンポポ属
http://www.econ.fukushima-u.ac.jp/Staff/KIKUCHI_Sozo/taraxacum.html
2)タンポポ調査・近畿2005予備調査実施要綱参考資料2
http://www.nature.or.jp/shoko/Tampopo/Kinki_2005/2004YobiChosa/2004YobiJisshi-Sanko_2.htm
3)
タンポポ調査・近畿2005予備調査実施要綱(第1版)
http://www.nature.or.jp/shoko/Tampopo/Kinki_2005/2004YobiChosa/2004YobiJisshi-3.htm

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