鉢植の木らうんじ14短歌

短歌-日食、夏のいのち


日食
雲の向うの日食
2009年7月22日の日食、せめて住んでいる静岡より大きく欠ける土地へと思い、福岡へ。
船で博多埠頭から志賀島(しかのしま)へ渡りました。「漢委奴国王」と記された金印が出土したことで有名な島です。その碑がある「金印公園」で日食を観察しました。当日の福岡は雲が多かったのですが、雲間や厚くない雲を透して日食の開始から終了までのほぼ全過程を見ることができました。
下記はそのときの短歌作品8首です。

左の写真(2009年7月22日午前10:48撮影)
雲の向うに見えた、食の最大近くの太陽です(↑の先)。このように、雲に透けて見えるときには裸眼で直視できました。しかし、雲はすぐ形を変えたり動いたりするので、太陽は見えなくなったり、逆に雲間に出てきて裸眼では見られなくなり、日食グラスでの観察になったりしました。雲の向うの太陽が撮影できたのは、この1枚だけでした。

木漏れ日−繁りあう葉の隙間がピンホールカメラのピンホ−ルの役目をして、太陽の像が地面に映ったものです。従って通常は円形ですが(このページ下部分に写真)、日食時には欠けた太陽の形となります。このときには雲が多かったため、物の影がはっきりできることは殆どありませんでした。三日月形の木漏れ日は一瞬見ましたが、撮影はできませんでした。


・玄界灘真上にかかる切れ切れの雲に透けつつ欠けゆく太陽
・日食用グラスに望む大空は日輪擁する広大な闇
・欠けゆく日雲間に覗くただ一瞬三日月形の木漏れ日を見き
・アーアーとカラスらの声悲しげに次第次第に細る日輪
・鎌形の細き太陽写真にはあらでこの目に留めんとする
・太陽は欠け極まりてカラスらの声の止むときわずかに涼し
・太陽の欠け極まれるこのときの弱き光を反す海面
・円(まど)かなる形に戻る太陽に安堵せりけん太古の人々

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夏のいのち
日食の日前後の作品から、主に「いのち」を詠んだ10首を集めました。

木漏れ日 ノハカタカラクサ オカチョウジガイ
葉の繁る木の下の木漏れ日 ノハカタカラクサ(野博多唐草)
(別名トキワツユクサ)
オカチョウジガイ
右の線は、そばに置いた定規の目盛り(1目盛りは1mm)


・ハエトリソウ固く閉じたる捕虫葉獲物の虫は薄く透けつつ
・シャクトリムシ尺取る先の定まらずもたげし頭(かしら)宙をさまよう
・枝にかかるクモの巣ひとつCDの面のごとくに虹を宿して
・数多(あまた)なる円の重なる木漏れ日の小さき揺れの止まるたまゆら
・ネコの墓にトカゲひとつが登りいる没年月日の文字を覆いて
・ネコの墓を巡りてトキワツユクサは繁みをなして祥月命日
・ダンゴムシ触るれば玉となる性(さが)をいとおしみいる独りの時間
・朽ち葉のした巻貝住むと知らざりき細長き殻ひきて這いゆく
・チョウジガイと名を知りてより黒土に繁く目にするこの巻貝か
・諸草(もろくさ)の伸びゆく音というもののありと思えて残暑の川土手

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