ルーペ身近な理科室4.

ふ し ぎ 物 質 ゴ ム

クエスチョンマーク

<ゴムにドライヤーの熱風をあてると、だらーんと伸びると思いきや…>


●のびたゴムに熱を加えると…

<実験1>箱に張った輪ゴム
右図のように、空き箱に輪ゴムをかけます。輪ゴムの長さの中心の位置に、クリップをとりつけます。クリップの位置を示すしるしを、箱に書き込みます(図の赤点)。クリップの左右どちらかの側の輪ゴムの部分にドライヤーの熱風を吹きつけるとクリップはそちらに動いていきます。つまり、のびたゴムは熱を加えられるとちぢみます。
それをそのままおいてゴムが冷えてくると、クリップはもとの位置に近づき、ゴムがまた伸びたのがわかります。

私が実施したときの細かい条件や数値などを記しますと−

ゴムはごく普通の輪ゴムです。箱の長い方の辺(長さ27cm)にゴムが平行になるようにかけました。ゴムは切れない程度に伸ばします。
クリップの左右どちらかにドライヤーの熱風をあてるとき、そちらがわ全体に熱風がかかるよう、ドライヤーを左右に動かしながら吹きつけるとよいようです。クリップの位置は熱風をあてた側へと7mm〜8mm移動しました。
見るときは片目を閉じて、箱につけた目印とクリップの中央の位置が合うようにしてから、そのまま目の位置を動かさず、熱風を吹きつけてみてください。動くのがはっきり分かります。

<実験2>
輪ゴムの長さの中心付近を額やあご、首などの肌につけ、両端を手で持って急激に引き伸ばします。すると、輪ゴムの温度が上がったのが感じられます。1度でわからなかったら、くりかえし何回も引き伸ばしてみてください。


●ふしぎ物質ゴム
多くの物質は、熱を加えられると伸びます。ところが、引き伸ばされたゴムは逆であることがこの実験で分りました。ゴムはひねくれもの?
そもそも、ゴムは引っ張られると伸び、引っ張るのを止めるとまたちぢむというのは、多くの物質にはない不思議な性質です。これはゴムの分子構造によります。

ゴムの分子構造は、紙をジグザグに折りたたんだようになっている長い分子が単位になっています。この長い分子が何本も絡み合って成り立っているのです。そこで、引っ張るとこのジグザグが伸びます。そして引っ張る力がなくなると、もとのジグザグにもどるのでちぢみます。


/\/\/\/\/\ ――引っ張られると―→ ――――――――――――――――


<実験1>では
伸びた状態のゴムに熱を加えました。熱エネルギーを得たゴムの分子中のそれぞれの原子は、活発に動いて分子はジグザグの状態にもどるのでゴムはちぢみます。
<実験2>では
ゴムが急激に引き伸ばされると、発熱するのがわかりました。

引き伸ばされると発熱し、そこに熱を加えられるとちぢむ。ゴムは伸びちぢみするときに、エネルギーの発散・吸収を伴うというわけです。


●蛇足
多くの他の物質とは逆に、熱を加えられるとちぢむというのはゴムのおもしろい性質です。
しかしそれ以前に、ゴムは引っ張られると伸び、それを止められるとちぢむ−これだけでゴムは既にふしぎ物質と言えると思います。ゴムを見たことがない人には、非常な驚きでしょう。普段見慣れていることは、あたりまえと思ってしまう−そして驚いたり感動したりしなくなってしまうのです。
向井千秋さんが最初の宇宙飛行から帰った後で語ったという、次の言葉は印象的でした。「手を離すと、持っているハンドバッグが下に落ちるというのが新鮮です」。記憶で書きましたから、言いまわしやニュアンスは多少違っているかもしれませんが。


<参考文献>
1)尊敬されるお父さんのための理科実験教室(南雲堂) ガリレオ工房 高橋宏 、滝川洋二、 長浜音一、 水上慶文 著
2)
・理科らしくない理科(裳華房) 小出 力 著


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