身近な理科室5
ワタの花−その色の変化の異変
<色が変わる花>
咲いてから散るまでの間に色が変わる花はめずらしくありません。例えばマツヨイグサは、夕方咲いたときは黄色ですが、翌日の午前中しぼむと黄赤色に変わります。ニシキウツギは咲きはじめは、うすく黄色みがかった白でだんだん紅色になります。また、フヨウの一種スイフヨウは咲いたときは白ですが、しだいに赤く変わっていきます。
<ワタの花色変化>
綿の素材をつくってくれる植物であるワタも、色が変わる花の一例です。咲いたときは、うすいクリーム色ですが翌日しぼむとピンクに変わります。下の写真は、1999年9月20日に開花したワタの花の、開花当日と翌日の状態です。これが同じ花なのです。(ちなみに右の写真のピンクになった花の左上に2つ見える、すじの入ったものは実で、これが熟して割れると中から白い綿毛が出てきます。これは種子に生えた毛です。)
開花当日 | 開花翌日 |
<ワタの花色変化の異変>
ところが、この色の変化に異変が起こったのです。
1999年9月中旬、台風が来そうだというのでワタの鉢植えを屋外から室内に避難させました。その次の日に1つ花が開きました。鉢植えはまだそのまま室内に置いておきました。すると、花は開花翌日にしぼんでももピンクにならず、クリーム色のままだったのです。よくよく見れば、花びらの先がうっすらと紅を帯びていましたが。下はその花の開花当日と翌日の写真です(開花日1999年9月16日)。
開花当日 | 開花翌日 |
その後、この鉢植えは屋外にもどしました。それから咲いた花は、通常どおり開花翌日にピンクに変化しました。それが、このページの最初に載せた写真の花です。
<ワタの花色はなぜ変化しなかったか>
●ワタの花色が変化しなかった理由は何でしょう。すっかり
分かったというわけではありませんが考えたこと、調べたことを記します。
色が変化しなかったワタの花は、開花してからしぼむまで ずっと室内に置いてありました。受けた光はガラス越しに入ってくるものだけです。普通のガラスは、紫外線をいくらか遮ります。花びらで、ピンクの色素がつくられるためには、紫外線が不足だったのではないか、と考えたのです。
●これについて文献で調べてみました。下記はその文献からの引用です。
・週刊 朝日百科 植物の世界 第10号(朝日新聞社) P1−292より
…白い花がしだいに紅色になってくるときには、新たにアントシアンという色素がつくられる。アントシアンは花青素(かせいそ)ともよばれ、白や黄色を除くさまざまな色調を発現する。…アントシアンが花冠でつくられるためには、光が必要であり、またこの色素は花冠の色素の中では、ふつう最後に生成されてくる。…
・週刊 朝日百科 植物の世界 第55号(朝日新聞社) P5−224より
…最近の研究では、紫外線が色素の合成に関係している遺伝子の働きを活性化し、その結果合成された色素が、有害な紫外線の防御物質として働いていることがわかってきた。…
●やはり紫外線が関係しているようです。そういえば、紫外線が多い高山の植物の花は平地の植物の花より濃くあざやかな色をしています。
実験計画を立てて、ワタの花が咲く季節にもっと詳しく調べてみようと思っています。
ワタだけでなく、花色が変わるほかの植物についても。
<参考文献>
1)花の色の謎(東海大学出版会)
安田齊 著
2)週刊 朝日百科 植物の世界 第10号(朝日新聞社)
3)週刊 朝日百科 植物の世界 第55号(朝日新聞社)
4)放送大学教材物理の世界(放送大学教育振興会) 阿部龍蔵 編著
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