ルーペ身近な理科室6


***電子レンジで、ゆで卵をつくる***

−電子レンジ調理の科学−電子レンジ


電子レンジでは、ゆで卵はつくれない、そんなことをしたら卵が爆発する。
電子レンジ調理法の常識と思われていることです。
でも、あります。
電子レンジで安全に、ゆで卵をつくる方法が。
マイクロ波の性質を利用するのです


先ず、このページの下の方の出来上がりの写真を見てくださいここをクリック


電子レンジでの調理とは?

   普通食品を調理する方法とは、焼く、ゆでる、煮る、蒸すなどです。つまり、直接火で、または高温の水や蒸気で食品に熱を加えます。 電子レンジでの調理はこのどれでもありません。では、なぜ調理できるのでしょう。
  
  普通の調理法での加熱とは、熱というかたちで食品にエネルギーを与えることです。エネルギーをもらった物質の分子はその運動が活発になります。分子が激しく動いている、これが温度が高い状態です。
   電子レンジがオンになっているときには、マイクロ波と呼ばれる波長の短い電波が電子レンジ内に出ています。食品に含まれている水の分子に、このマイクロ波が当たると、マイクロ波は水分子にエネルギーを与え、水分子は激しく動かされます。つまり、熱を加えられた場合と同じことになります。そこで、熱くなり調理ができるわけです。

  ところで、食品は容器に入れてから電子レンジに入れます。マイクロ波は、この容器の材料となっている物質である、ガラスやプラスチックなどの分子に対してはどのように作用するのでしょうか。
 このような容器に入れふたをして電子レンジで調理した食品も、容器自体も熱くなります。するとマイクロ波は、ガラスやプラスチックにもエネルギーを与えるのでしょうか。それとも、マイクロ波はただガラスやプラスチックを通りぬけただけなのでしょうか。また、マイクロ波はどんなものでも通り抜けてしまうのでしょうか。例えば金属も。
これらのことを調べるために、つぎのような実験をやってみましょう。


●ガラス、プラスチック、金属に対するマイクロ波の作用は?

ガラスのコップ、プラスチックのコップ、金属のコップ(プリンカップなど)を、それぞれ2個ずつ用意します。


3種類のコップそれぞれ2個のうち、一方には水を10mlずつ入れます。
・もう一方は3種類とも空のままです。

このとき、空のままのコップ3個は、少しの濡れもないよう気をつけてください。これらのコップを乗せる電子レンジの皿についても同様です。
この6つのコップを電子レンジに入れて10秒(500Wの場合)、チンします(もし、直前にほかのものを調理して電子レンジ内が温まっていたら、完全にさめるのを待って行ってください)。取り出してみるとそれぞれどうなっているでしょうか。
(金属にマイクロ波を当てるのは電子レンジに負担をかけるので、実験は10秒以内にとどめてください)
(取り出すときには、少し触ってみて熱くなっているようなら、軍手などをはめた手で取り出してください)

水を入れたコップのうち、ガラスのコップとプラスチックのコップは2つとも水は熱くなり、容器のガラスやプラスチックも温まっています。でも、金属のコップに入れた水は冷たいまま、コップも冷たいままです。金属はマイクロ波を通さないことが分かります。
空のコップは3つとも温まっていません。ガラス、プラスチック、金属はどれもマイクロ波からエネルギーをもらわないことが分かります。水の入ったガラス、プラスチックのコップが温まったのは、熱くなった水がガラスやプラスチックを温めたのです。

電子レンジ調理で食品が温まるのは、食品に含まれている水分がマイクロ波からエネルギーをもらったからです。同じワカメでも、からからの乾燥品は電子レンジでチンしても温まりませんが、水でもどしたものなら温まります。

ここでちょっと、付け加えさせていただきます。「空のコップは3つとも温まっていません」ということについてですが。
「実験してみたら空のガラスのコップは少し温まりました」というメールをいただきました。そこで、改めて実験してみたところ、確かに空のガラスのコップは温まっていました。そして、空の金属のコップもほんのちょっとですが、あたたかくなっていたのです。どちらも、水を入れたコップのように熱いというほどではありませんが。
そうなる理由として考えたことは・・・・。マイクロ波を受けて熱くなった水が周りの空気を温め、その空気が空のガラスコップや金属のコップを温めたのではないか、ということです。プラスチックのコップが温まらなかったのは、ガラスや金属に比べてプラスチックは温まりにくいからだと思います。チンすると電子レンジの内部空間は確かに温まっています。また、空気中の水蒸気がマイクロ波で動きが激しくなる、つまり温まるということもあるかもしれません。
では、私が最初に実験したとき空のコップは温まっていないと感じたのは、なぜでしょう。チンした後、軍手をはめた手で中のコップをひとつづつ取り出し、次に軍手をはずしてコップに触ったので、その間に空のコップは冷めたのではないかと思います。やりなおしの実験では、電子レンジに入ったままのコップにすぐ触ってみました。
これについて、ご存知の方はお教えください。

本に書いてあることを鵜呑みにせず、注意深く観察することの大切さを教えられました。


●卵はなぜ電子レンジ調理で爆発するのか

卵をそのまま電子レンジで調理すると、なぜ爆発するのでしょう? ソーセージ、たらこ、クリなどもやはり爆発します。これらも、卵と同じように皮や殻があります。
電子レンジでは水は急速に加熱されて、たくさんの水蒸気が発生します。その水蒸気が皮や殻の中で逃げられないと、圧力が高くなり一気に皮や殻を突き破って爆発するのです。そこで、皮や殻にあらかじめ傷をつけて水蒸気が逃げられるようにしておけば、爆発は防ぐことができます。でも、卵の場合は殻に傷つけると中身が出てくるし、卵黄も皮をもっているし。


●電子レンジで、ゆで卵をつくる

では、電子レンジで、安全にゆで卵をつくる方法を考えましょう。
卵にマイクロ波を当てると爆発するのですから、そうしなければよいわけです。マイクロ波を通さないもの、つまり金属で卵を包んでしまい、この状態で水でゆでます。

1.まず、生卵をアルミ箔でぴったりと包みます(下の左端の写真)。アルミ箔からのぞいている部分がないようにしてください。
2.これを、耐熱性の筒状コップ(カップ酒の容器がよい)に入れ、卵の上端から1cmくらい上のところまで水を入れます(左から2番目の写真)。
コップの口にラップをかけます。これは、水が沸騰したとき、あがる飛沫が電子レンジ内に飛び散るのを防ぐためです。しかし、水蒸気の逃げ口は必要です。そこで、写真のように端に少し隙間を空けてラップをかけるか、またはつまようじなどでラップにプツプツ20ヶ所ほど孔をあけます。ティッシュペーパーをぬらして、かたく絞ってひろげたものをかけてもいいです(このページ、トップの写真)。

ゆで卵のつくりかた

3.これを電子レンジに入れて5分(500Wの場合)チンします。
4.電子レンジからすぐ取り出します。かなり熱いので、軍手などをはめた手で取り出してください。冷水にとり、手でさわれるほどに熱がとれたらアルミ箔をはづします。
右から2番目の写真は、この卵の殻をむいて白身を割ったところです。黄身は半熟状態で、皮が破れると、このようにねっとりと流れます。
5.右端の写真は、電子レンジから出した後、熱いコップの湯の中にそのまま40分〜1時間おいた卵です。それから水にとってアルミ箔を取り、殻をむきました。このように2つに割っても、もはや黄身は流れないほどに固まっています。


<参考文献>
1)家庭で楽しむ理科遊び(裳華房) 宮田光男・編
2)続・理科らしくない理科(裳華房) 小出力・著
3)電子レンジ百珍(文化出版局) ベルクッキンググループ・編




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