ルーペ身近な理科室

****** キノコの胞子紋を描かせる ******

キノコのかさの裏側のひだにできる胞子で、ひだの模様通りの胞子紋を描かせる実験です


キノコの増え方
キノコは種子ではなく胞子で増えます。胞子はキノコのかさの裏側のひだにできて、やがてそこから離れます。胞子ひとつぶひとつぶは顕微鏡でないと見えません(このページ最後の写真)。胞子からは菌糸という糸のようなのがのびてきます。キノコの体は、かさの部分もじくの部分も菌糸が集まってできているのです。
下の左の写真はシイタケのかさの裏側のひだを顕微鏡で見たものです。たくさん見える丸いものは担子柄というものの先で、ここに通常4個の胞子ができます。右の写真はシイタケの菌糸の顕微鏡写真です。軸の部分をほぐして見てみました。

シイタケのかさのひだ シイタケの菌糸
シイタケのかさの裏側のひだの顕微鏡写真(10×40) シイタケの菌糸(軸の部分をほぐしたもの)の顕微鏡写真(15×10)


胞子紋のとり方
じくの部分を切り取ってかさだけにしたキノコを紙の上に伏せておくと、ひだから紙に胞子が落ち、それによってひだの線の通りの放射状の模様ができます。これを胞子紋といいます。この胞子紋をとってみましょう。

シイタケシイタケの胞子紋まず、いちばん手に入りやすいシイタケで試してみてください。かさが開いて間もないのを使います。

キノコのじくを切りとってかさだけにして、それを紙の上にふせます(写真-左)。
上からコップなどでふたをしておくと成功しやすいです。一晩そのままにしておいてください。その後、そっとキノコをもちあげると、ひだと同じもようが紙にできています(写真-右)。

このまま2〜3日さわらないでおくと、こすってもとれなくなり、ずっと保存できます。



シイタケの胞子 左の写真はひだから落ちてきた胞子を顕微鏡で見たものです。
じくを切りとったシイタケのかさの部分を、スライドガラスの上に伏せて胞子をスライドガラスに受けました。
それを顕微鏡で見て見ました。

胞子があまりにぎっしりの部分は見にくいため、まばらなところを選んでこの写真を撮りました。
この胞子から菌糸がのびて、かさとじくから成るキノコの体ができるわけです。
シイタケの胞子の顕微鏡写真(15×40)


キノコとは
キノコと普通の木や草とはどうちがうのでしょう。
普通の木や草は緑色ですが、キノコはそうではありませんね。木や草の緑色は、クロロフィル(葉緑素)という色素です。クロロフィルは光のエネルギーをつかまえてくれます。木や草はこのエネルギーを使って、根から吸い上げた水と、空気から取り入れた二酸化炭素から糖やデンプンをつくります。これを光合成といいます。そして、糖やデンプンは木や草が生きるためのエネルギーのもとになったり、その植物の体をつくるための材料になったりします。

こうして、クロロフィルをもつ植物は光合成して、自分の体をつくる物質や生きるためのエネルギー源を自分でつくることができるので、食べ物を食べる必要がありません。ここが動物とはちがいます。
ところが、キノコはクロロフィルをもちませんから、光合成はできません。そこで、体をつくる物質や生きるためのエネルギー源をなんとかしなければならないのですが、動物のように動き回って食べ物をさがして食べるのではありません。

キノコは、落ち葉やかれ木、生きている木、ごみすて場のごみ、動物のふんなんかの上にはえてそこから養分を吸収する、という生き方をしています。なかには、虫に生えるキノコもあります。冬虫夏草といいます。冬は虫で夏には草になるという意味ですが、じつはこれ昆虫やクモに生えるキノコのことです。生きたセミ、アリ、ガ、ハチなどにとりついて養分をすいとりやがてこれらの虫を殺してしまいます。

生物を、動物と植物とに大きく分けるという分類方法は昔から長く行われていた分け方です。その分け方だとキノコは植物に入れられていました。でも、今は少なくとも学問の世界では、キノコはクロロフィルをもつ植物とは別のグループである菌類に分類されています。
菌類とはカビやキノコのことで、、緑色のクロロフィルをもたず光合成できないので、ほかのものにとりついてそれから養分をもらって生きています。


<参考資料>

1)『グリーンブックス102植物の観察実験法』P52〜53(ニュー・サイエンス社)浜島繁隆・鈴木達夫著
2)『科学のアルバム57キノコの世界』P20〜21(あかね書房)伊沢正名著


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