プリズム

みんなの実験室15

**水に沈む木・浮かぶ石**

ふつう、木は水に浮き、石は沈みます。しかし、水に沈む木や浮かぶ石があります。また、重い金属である鉄でできた船が水に浮きます。
そもそも、水に浮くか沈むかはどういうことによるのでしょう。


水中の木と石
    (1)水に沈む木や浮かぶ石がほんとうにある?

 ヒノキとカシの木片を水に入れたら、ヒノキは浮きましたが、カシはゆっくりと沈んでいきました(図1)。ほかにコクタンやローズウッドなども水に沈む木です。

 また、石英斑岩と軽石を水に入れると、石英斑岩は沈みましたが、軽石は浮きました(図2)。

木は必ず水に浮き、石は必ず沈むものではないことが分かります。

(2)水に浮くか沈むかはどんなことで決まる?

水中の人 浮力と重さ  実験をしながら考えて見ましょう。
 
水中のものには、上向きの力である浮力がはたらきます。プールや浴槽に体を沈めると、体が軽くなる感じがしますね。図3のように床に両手をついて体を水平にすることは、空気中では難しいですが、プールなどの水中では楽にできますね。浮力を受けるためです。

 上向きの力である浮力に対し、重さは下向きの力です。水中のものには、この2つの力がはたらいています(図4)。浮力が重さより大きければ浮き、それより小さければ沈みます。

では、浮力の大きさはどんなことによるのでしょう。下の図5・図6のような実験をしてみました。
図5−てんびんの支点の左側と右側に等しい距離の点をとり、そこに5円玉をつるします。2つの5円玉は同じ重さですから、つりあいます(a)。次に、容器に入れた水の中に、左の5円玉だけを入れます。すると、その5円玉は浮力を受けて軽くなりますから、てんびんの左側が上がって傾きます(b)。また次に、右の5円玉も同じように容器の水の中に入れます。すると、右の5円玉も浮力を受けますから、てんびんは再びつりあいます(c)。

てんびんの5円玉

では図5の、2つの5円玉の一方だけを、5円玉と重さが等しい別のものに変えたらどうなるでしょう。
図6−支点の左側と右側に等しい距離の点をとります。この2つの点のそれぞれに、5円玉と、それと等しい重さの油粘土をつるします。

てんびんの5円玉と油粘土
左側の油粘土の方が体積は大きいですが、重さが等しいですからこのようにつりあいます(a)。
次に、油粘土・5円玉の両方とも、容器の水の中に入れます。すると、左側の油粘土の方が上がって、てんびんは傾きました(b)。図5cの場合とはちがう結果です。

同じ重さでも、体積が大きいものの方が大きな浮力を受けることが分かります。

水中のものが受ける浮力の大きさは、そのものの水面下の体積と同じ体積の水の重さと等しいのです。

水中の浮き球 図6の油粘土は、重さは5円玉と等しいですが、体積は5円玉より大きいです。そこで水に入れると、5円玉より大きな浮力を受けて5円玉より軽くなり、てんびんは油粘土をつるした側が上がりました(図6b)。

すると水に浮きやすくするには、重さはそのままで体積を大きくすればよいということになります。そうするためには、中に空所をつくればいいわけです。
図7は、水に浮かんだ陶器の浮き玉です。陶器は水に沈みますが、この浮き玉は内部に大きな空所があり、そのぶん体積が大きくなっているので、大きな浮力を受けて浮きました。
このとき浮き玉が受けている浮力は、浮き玉の水面下部分と同じ体積の水の重さです。それは浮き玉の重さと同じです。
すなはち、浮力=重さ となって、このように静止しました。


(3)なぜ木が水に沈んだ?なぜ石が浮いた?

ヒノキ・カシ顕微鏡像  では、図1・図2の木や石が、水に沈んだり浮いたりする理由を考えてみましょう。
石をつくっている物質は同じ体積の水より重いので、ふつう石は水に沈みます。しかし、軽石は、内部に細かい空所がいっぱいあってスポンジ状なので浮きます(図2)。軽石は、火山の噴火でどろどろに溶けた溶岩が吹き出てきて、泡を含んでかたまったものです。肉眼で見ても、スポンジ状なのが分かります。

 じつは、木をつくっている物質も、同じ体積の水より重いのです。ではなぜ多くの木は水に浮くのでしょう。肉眼で見たかぎりでは、木は軽石のようにスポンジ状ではありません。
図1で水に入れたヒノキとカシを薄く削って顕微鏡で観察してみました。左の図8が、その写真です。ヒノキには細長い空所があります。この空所があるためにヒノキやほかの多くの木は水に浮きます。この空所は、木が生きていたときは、水やそれに溶けた養分の通り道でした。
カシでは、この空所が図8の写真のようにとてもせまいです。そこで、受ける浮力が小さくてカシは水に沈みました。カシ以外の水に沈む木も、やはり空所がせまいです。


(4)なぜ鉄の船が水に浮く?

水中の杯
鉄は、同じ体積の水より重いので水に沈みます。おなじく同体積の水より重い陶器の杯2個で、図9のような実験をしました。

内部まで水を入れた状態にすると、杯は水に沈みます。しかし、内部に水が入らないようにして上向きに置くと、このように浮きます(図9b)。図7の浮き玉のように中に空所があるからです。
鉄の船もちょうどこのような状態で水の上にあるので浮きます。ですから内部に水が入ると沈んでしまいます(図9a)。


(5)なぜ氷は水に浮く?

水分子集合状態  氷は水に浮きます。液体の水と固体の氷とは、同じ物質のはずなのになぜでしょう。 この理由は、顕微鏡でも見えないさらにミクロな構造から説明できます。
 
 図10の小さい白丸は、水の分子を表わしています。分子の集合状態が、液体の水と固体の氷とではちがいます。

 液体の水では、分子はぎっしり集合し、互いに動いています。そこで液体の水は決まった形をとりません。一方、氷では分子は隙間がある配置で規則正しく並び、自由には動けません。氷が決まった形をとるのはそのためです。
 内部に隙間を抱えた構造なので、氷は水に浮きます。氷は同体積の液体の水より軽いのです。

ほとんどの物質は、液体の状態と固体の状態を同体積で比べると、固体の方が重いのです。その意味で水は例外的な物質です。


(6)ミカンを使ったこんな実験

ミカンの浮き沈み
ミカンをそのまま水に入れると浮きます(11図a)。

皮をむいて再び水に入れると沈みます(同b)。

皮をむいたミカンを完全に凍結させてから、また水に入れると浮きます(同c)。

そのミカンを、そのまま水に入れておくと、次第に解凍します。するとまた沈みます(同d)。

なぜこういうことになるのでしょう。(1)〜(5)に述べたことから考えてみましょう。

 ミカンの実と皮の間には、空所があります。また皮の内側の白い部分は、スポンジ状にふわふわしています。だから皮付きのミカンは水に浮きます(a)。しかし、皮をむくと、これらがなくなって沈みます(b)。凍結させると、b のときより体積が増えますから、それだけ大きな浮力を受けてミカンは浮きました。解凍するとまた体積が減って、受ける浮力が小さくなって沈みました(d)。

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<参考資料>
1)うきしずみ(大日本図書) 折井英治・折井雅子=著 P24〜33 
2)やってみよう なんでも実験 Vol
.2 P30〜35 (NHK出版)

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