プリズム

みんなの実験室17

**身近なモノたちのサーカス**

身近なものを使い接着剤不使用で5種類のバランスオブジェをつくりました。いずれも危うく見えますが、バランスを保っています。
その理由を考え、さらに支点と重心の位置関係で分類してみました。

         
1)突先で平気な洗濯ばさみ  2)宙乗りフォーク    3)斜塔を真似る容器  4)曲乗り鉛筆  5)直立不動の卵

〔内容要約〕
・オブジェはその重心が支点の真下か真上のどこかにあれば、バランスを保って静止します。このとき、支点を中心にオブジェを反時計回りに傾けるはたらきと時計回りに傾けるはたらきは等しくなっています。
・1)と2)はオブジェの重心は支点の真下のどこかにあります。オブジェを傾けると、重心は元の位置より高くなりますが低い方へ戻ろうとしてゆらゆら揺れ、やがてもとの位置に戻ります。
・3)4)5)はオブジェの重心は接地面の真上のどこかにあります。オブジェを傾けると、重心は元の位置より低くなります。そして重力によりさらに傾き、もとの状態には戻れず傾けた方へと倒れます。

 (図による説明はここに)        (重心−物体の各部分にはたらく重を1つの力で代表させるとき、それが作用する点。物体の外にある場合もある。



                              〔個々のオブジェ-作り方、バランスについて〕


1)突先で平気な洗濯ばさみ
・作り方
 台は割り箸1本です。長さの半分を机の端からはみ出させて置きます。机に乗っている部分には上に重い本を置いて押えます。オブジェ本体−カラー針金をCの字形に曲げ一方の端に小麦粉粘土を丸めて刺し、もう一方の端を洗濯ばさみではさみます。そのまま洗濯ばさみの片足を割り箸の先端に乗せます。落ちるようならばカラー針金の曲げ具合や小麦粘土の量、洗濯ばさみの位置や角度を調整します。、
・バランスについて考える
 つりあって静止しているとき、オブジェの重心は支点の真下のどこかにあります。下のA図の点線のうち、支点の下のどこかの1点です。このとき、支点を中心に、オブジェを反時計回りに傾けるはたらきと時計回りに傾けるはたらきがつりあっています。次のようなことをしてみます。
A図−カラー針金だけを割り箸に置きました。支点を中心にはたらく次の2つのはたらきはつりあっています。・針金左側-オブジェを反時計回りに傾けるはたらき(矢印@) ・針金右側−オブジェを時計回りに傾けるはたらき(矢印A)。
B図−カラー針金の左端に小麦粉粘土を丸めて刺しました。反時計回りに傾けるはたらきが大きくなってカラー針金全体がA図の場合より反時計方向に傾きました。
針金の支点側の端を洗濯ばさみではさんだ場合、洗濯ばさみにも時計回りに傾けるはたらきが生じます。

   
←(バリエーションの例)

突先で玉乗りをする人形に仕立てました。

上と下の玉は小麦粉粘土です。下の玉は果物に見立て、緑色のプラスチックを切って玉に差し込みました。
人形は厚紙に描いて切り抜きました。右足を少し長くして上の玉に差し込みました。

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2)宙乗りフォーク
・作り方
 2本のフォークの櫛形部分を互いの隙間に刺しいれて組合せます。ちょうど両手の指を組むように。爪楊枝の尖った方を櫛形部分の組合せの隙間に差し込みます。爪楊枝の尖っていない方を、指の先に乗せるとフォークはぶらぶら揺れますが落ちません。爪楊枝の、指に乗せた部分をそのままコップのふちに乗せます。

・バランスについて考える

  つりあって静止しているとき、重心は支点の真下のどこかにあります。
支点を中心にはたらく次の2つのはたらきはつりあっています。・櫛形の組合せの側−反時計回りに傾けるはたらき(矢印@)、柄の側−時計回りに傾けるはたらき(矢印A)。


←(バリエーションの例)
左は2つのフォークを差し込んだ10円玉をコップのふちに置きました。
右は爪楊枝と色画用紙でつくったトンボを、立てた割り箸の上に置きました。

どちらもバランスは宙乗りフォークと同じに考えられます。

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3)斜塔を真似る容器
・作り方

   この容器は、アウトドア用組合せコップの一番外側の2つです。中に入れ子になっている3つのコップは外してあります。容器底面の外縁部分は、面取りしたように平らになっています
はめ込まれている上の方の容器を取り外し、下の容器の底面にくっつけて小麦粉粘土又はビー玉を入れ、上の容器をはめ込みます。その容器を少し傾け、面取りされた平らな面を机の面につけて立てます。立たなければ小麦粉粘土やビー玉を増減したり配置を変えたりして調節します。この写真の容器の場合はビー玉3個(直径17mmを2個、12.5mmを1個)で斜めにたちました。(左の写真)。

ほかの容器を使う場合も、ビー玉の数を増減したり配置を変えたりして調節します。

・バランスについて考える

    中が空だと、この写真のような姿勢をとると左に倒れてしまいます。接地面の右側にビー玉が入ったので、接地面を中心にしてのバランスがとれて倒れません。
このとき重心は、接地面の真上のどこかにあります。

←半透明のプラスチックびんを使ったものを並べて示します。このびんの底面の外縁部分も面取り状に平らになっていますから、その面を机の面につけて立てました。ビー玉は直径17mmを1個、12.5mmを11個でバランスがとれました。

←(バリエーションの例)
アルミカンの底面に沿わせて直径12.5mmのビー玉を入れて立てました。左のカン(160mL入り)には14個、右のカン(280mL入り)には8個入れました。
アルミカンも、底面のふちが面取り状に平らになっています

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4)曲乗り鉛筆
・作り方
 色工作用紙を3cm×8cmのサイズに切ります。端から1.5cmほどのところに錐など尖ったもので穴をあけ、そこに鉛筆を芯の方から差し込みます。そのまま押し込んで軸まで入れたら一旦鉛筆を抜き、工作用紙をアーチ形に曲げます。それを下が凸になるよう平らな所に置き、再び鉛筆を軸まで差し込みます。まず鉛筆が宙に浮いた形になるよう、押し込む長さを調整します(下の右の写真参照)。次に湯呑茶碗のふちに置き、落ちないで鉛筆が宙に浮くよう再び調整します。

・バランスについて考える

   色工作用紙と鉛筆が一体になったものの重心は、接地面の真上のどこかにあります。

接地面を中心にはたらく次の2つのはたらきはつりあっています。・鉛筆の左側−反時計回りに傾けるはたらき(矢印@)と、鉛筆の右側−時計回りに傾けるはたらき(矢印A)。



鉛筆を少し右に引き出して右側を長くするとと、時計回りに傾けるはたらきが大きくなります。そこで鉛筆の右側が下がって、ほぼ水平になりました。




さらに鉛筆を少し右に引き出すと、時計回りに傾けるはたらきがさらに大きくなり、鉛筆の右側が下がりました。



湯呑み茶碗のふちのような危ないところに立たせる前に、まず平らな安全なところに置いて鉛筆を押し込んだり引き出したりして左右の長さを調整します。次に立てたいところに置いて、さらに調整します。

←(バリエーションの例)
湯呑み茶碗のふちは細く狭い上に、つるつる滑ってとても立てにくい場所でした。
この写真は机の角に立てたものと(左)と、食卓塩容器のふちに立てたものです(右)。いずれも危ない場所ですが、湯呑み茶碗のふちより立てるのがずっと容易でした。

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5)直立不動の卵
・立て方
 卵の尖っている方を上にして面の上に置き、両手の親指と人差指の4本で支えます。次に4本の指とも数mm卵から離します。するとどちらかに倒れてきますから、反対側に少し押し返します。そして、また4本の指を離し倒れてきた側の反対に押し返します。これを繰り返していると、やがてどちらにも倒れなくなりますから、4本の指をそっと離します。この写真の卵の場合は、立てるまでに約6分かかりました。
・バランスについて考える

  卵の接地面のどこかの真上に、重心があれば卵は立ちます(左図)。
どちらかに倒れてくる場合は、重心が接地面の真上を外れてそちらに寄っていることになります。そこで、上の「立て方」に記した方法で、どちらにも倒れてこない置き方を見つければ、それが重心が接地面の真上にきた状態です。 

これは生卵ですが、ゆで卵でも同じ方法で立てることができました。しかし、尖った方を下にして立てることはこれまでにできていません。尖った方を下にして置くと、卵の接地面が狭いので、重心をその真上にもってくることが難しいためと思われます。

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                   〔これらのオブジェの種類分け-支点と重心の位置関係から

〔1〕重心げ支点の下の場合と上の場合
 下の図AとBについて。A-1もB-1も、弓形の両端に重りを付けたオブジェが支柱に乗せられています。しかし乗せられた向きが上下逆です。そこで、A-1は重心が支点より下、B-1は重心が支点より上です。でも、A-1もB-1も支点を通る鉛直線上に重心がありますから静止しています。このとき、支点を中心にオブジェを反時計回りに傾けるはたらき(矢印@)と、時計回りに傾けるはたらき(矢印A)は等しいです。

オブジェを傾けると、A-1はゆらゆら揺れてやがて元の位置に静止します。しかしB-1ではオブジェは転落してしまいます。その理由は−
Aの場合
オブジェが傾くと、重心はA-2のように元より高い位置に移動します。すると、重力に引かれて下に戻ろうとします。そこで元の位置を中心にゆらゆら揺れ続けてやがて元の位置に静止します。
Bの場合
オブジェが傾くと、重心はB-2のように元より低い位置に移動します。そこから重力に引かれると、さらに下に移動して元の位置にもどることはないので、オブジェは転落してしまいます。

〔2〕5種類のバランスオブジェの種類分け
A(重心が支点より下
 
1)突先で平気な洗濯ばさみ 2)宙乗りフォーク
オブジェを支点に置いたときバランスの位置から多少傾いていても、ゆらゆら揺れてやがてオブジェの重心が支点の真下にきた状態で静止します。よって、置くことは容易です。
B(重心が支点より上)
 3)斜塔を真似る容器4)曲乗り鉛筆5)直立不動の卵
オブジェを支点に置いたときB-1図のように支点の真上に重心がくるように置かないとオブジェは転落してしまいます。それは現実のオブジェでは非常に難しいことです。しかし3)〜5)の場合、支えているのは点ではなく面なので置くことができました。接地面のどこかの真上に重心をもってくればいいわけですから。


<参考資料>
1)おもちゃの科学セレクション(日本評論社) 戸田盛和=著 P13〜16
2)ヴァンクリーブ先生の不思議な科学実験室〔物理編〕 (HBJ出版局) J.P.ヴァンクリーブ=著 戸澤真智子・戸澤加江子=訳 P162〜163 
3)キッチンとお風呂できる!小学生のおもしろ科学実験(実業之日本社) 甲谷保和=著 P58 
4)やってみようなんでも実験 vol.3 (NHK出版) P14
5)やってみようなんでも実験 vol.4 (NHK出版) P10〜14
6)サイエンスショー「バランス大実験」実施報告 http://www.sci-museum.jp/files/pdf/study/research/2015/pb25_081-086.pdf
7)『重心の話』 理科好き子供の広場 http://www.rikasuki.jp/rika_no83/rika_no83.htm


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