顕微鏡生物実験室13バナナに描く

バナナで紫外線の作用を調べる

バナナの果皮は紫外線により茶褐色になります。
そこで、バナナを使って紫外線の作用を調べてみました。実験地は静岡市です。

右の写真-太陽光によって、バナナの果皮に文字や模様を描きました。左のバナナは、油性ペンで文字を書いた無色透明セロハンで包み、右のバナナはハート形の穴を切り抜いたアルミホイルで包みました。この状態で、よく晴れた日に直射日光に6時間当て、その後暗所に置きました。この写真は、その翌日セロハンとホイルをはずしたところです。日光が当ったところは茶褐色となり、このように文字や模様が描けました。使ったバナナは小型種のものです。(照射した日-10月8日)。


1バナナの果皮への太陽光の作用

実験1-1:バナナに太陽光を照射する(照射した日-1月7日)
(方法)傷のない黄色のバナナの半分を、下の写真1.のようにアルミホイルで包んだ。よく晴れた日の10:00.〜13:00の3時間、これを直射日光に当て、その後このバナナを暗所に置いた。

バナナ3本

(結果)照射を終わって取り込んだときには上の写真1の状態のままで、ホイルで包まなかった部分も全く茶褐色にはなっていませんでした。写真2.は翌日の状態です。アルミホイルで包まなかった部分だけが、茶褐色になり始めています。そして、写真3.は、それからさらに暗所に1日置いた後の状態です。茶褐色がいっそう濃くなり、アルミホイルで包んだ部分と包まなかった部分との違いがはっきりしてきました。

実験1-2:照射する時間によるちがいは?(照射した日-9月28日)
(方法)2本のバナナの半分をアルミホイルで包み、よく晴れた日に直射日光に当て、その後暗所に置いた。直射日光に当てた時間は、1本のバナナが9:00〜12:00の3時間、あと1本がが9:00〜15:00のの6時間。
(結果)下の写真、この2本のバナナはいずれも、右半分をアルミホイルで包みました。直射日光に当てた時間は、上のバナナが3時間、下のバナナが6時間です。

バナナ2本 左の写真は、直射日光照射後に暗所に置いて2日目の状態です。直射日光に当てた時間が長い方が、濃い色になっています。

しかし、この実験の結果は天候に大きく左右されます。くもりや雨の日では、アルミホイルで包まれていなかった部分も茶褐色にはなりません。晴でも、雲が多い時間が長いとホイルで包んだ部分と包まなかった部分との違いがあいまいでした。逆に快晴で日差しの強い日に実験すると、照射時間が終わって取り込むときには、すでに茶褐色になり始めていました。
季節的には1年中で紫外線が最も強いのは5〜6月ですが、日差しが弱い冬でもよく晴れた日であれば茶褐色になります(実験1-1を行ったのは1月7日)。

バナナの生理的状態も結果に関係するようで、6時間照射したものが、3時間照射のものより茶褐色化が薄い場合もありました。

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2バナナの果皮を変色させるのは、太陽光中のどの光か?
太陽光中には、可視光線以外に赤外線、紫外線が含まれています。バナナの果皮を変色させるのはこのうちどの光でしょうか。調べてみました。

実験2-1:紫外線カットフィルムやセロハンで包んで照射する(照射した日-9月28日)
(方法)次の写真、左のバナナは、一部分ずつを無色透明セロハン、紫外線カットフィルム(紫外線を透過させない)、アルミホイルで包んだ。また、右のバナナは一部ずつを青セロハン、緑セロハン、赤セロハンで包んだ。どちらのバナナもよく晴れた日に9:00〜15:00の6時間直射日光に当て、その後暗所に置いた
(結果)次の写真は、太陽光照射の翌日、それぞれ包んだものを外した状態です。日差しの強い日は、照射の翌日にはこのように濃い茶褐色になります。

バナナに縞模様


左のバナナ−紫外線カットフィルムで包んだ部分は、アルミホイルで包んだ部分と同様に茶褐色になっていません。すると、果皮を茶褐色にするのは紫外線の作用であると考えられます。
無色透明セロハンで包んだ部分は茶褐色になっていますが、何も包まなかった部分に比べると少し茶褐色が薄いです。無色透明セロハンはある程度は、紫外線透過を防ぐと思われます。

右のバナナ−青、緑、赤どの色のセロハンで包んだ部分も茶褐色になっていません。果皮を茶褐色にするのは、これらの可視光線ではないと考えられます。また、これらの色セロハンは赤外線を通す(下の参考ウェッブサイト3)ので、茶褐色化は赤外線のためでもないと思われます。

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3〕バナナに人工の紫外線を照射すると…
2)の実験から、バナナの果皮を茶褐色にするのは紫外線の作用のようです。このことをさらに確かめるために、バナナに人工の紫外線であるブラックライトの光と殺菌灯の光を照射してみました。いずれもバナナの半分をアルミホイルで包みました。

ブラックライトと殺菌灯)
ブラックライト-紫外線のうちでも可視光線に近い波長域のUV-A(320nm〜400nm)を出します。その発する光のうち最も強い光の波長(ピーク波長)は352nmです。暗がりでブラックライトの光を蛍光物質に当てると鮮やかに発光します。
殺菌灯-ピーク波長は253.7nmで、この波長の光のみがとび抜けて強く、ほかの波長の光は問題にならないほどです。波長が253.7nmの光は、紫外線のうち最も短波長域のUV-C(100nm〜280nm)に入ります。UV-Cは最も作用の強い紫外線で、殺菌灯は医療現場や食品製造現場などで殺菌に使われます。ヒトの細胞にも影響を与えます。

光の波長域の図 太陽光中のUV-Aは、大気圏でほとんど吸収されずに地表に達します。UV-Aは日焼けの原因になりますが、紫外線のうちでは作用は弱いのです。

太陽光中のUV-Cはオゾン層により吸収されほとんど地表に達しません。

なお、UV-AとUV-Cの中間の波長域であるUV-Bは一部が地表に到達します。地表に届く紫外線のうちUV-Aが92%で、UV-Bが8%ということです[下記参考文献1)]。

実験3-1:ブラックライトの光を照射する
(方法)まず、4Wのブラックライトで照射してみた。ブラックライトから10cm離してバナナを置き、6時間照射した。その後暗所に置く。しかし、その後5日以上経ても、アルミホイルで包んだ部分と包まなかった部分とで色の差はみられなかった。 そこで、ブラックライトを15wのものに変えて同じ方法で実験を行った。

ブラックライト1
  4Wのブラックライト
ブラックライト2
15Wのブラックライト
バナナ2本
15Wのブラックライト照射で、茶褐色化が認められたのは1度だけだった

(結果)15Wのブラックライトで照射する実験は5回行いました。うち4回はアルミホイルで包んだ部分と包まなかった部分とではっきりした差は認められませんでした。1度だけそれらしい差が見られたのが上の写真です。アルミホイルで包んだ部分と包まなかった部分との色の違いは、2日後になっても見られませんでした(左のバナナの写真)。(太陽光で照射した場合には、2日目には茶褐色化がみられます)。このバナナは、その後も引き続き暗所に置きました。3日目にはアルミホイルで包んだ部分と包まなかった部分との差がかすかに見られ、4日目にはそれが少し際立ってきました。そして、上の写真の右のバナナが5日目の状態です。ホイルで包まなかった部分が濃い茶褐色になっています。しかし、包んだ部分との境は、あいまいでした(右のバナナの写真)。

実験3-2:殺菌灯の光を照射する
(方法) 4Wの殺菌灯から10cm離して4本のバナナを置き、殺菌灯の光を照射した。10分毎に1本ずつ取り除き、取り除いたバナナは直ちに暗所に置いた。下の写真は、照射した日から2日後に撮影したもの。

殺菌灯
4Wの殺菌灯
バナナ4本
4Wの殺菌灯で照射後、暗所に置き2日目のバナナ。
照射時間は、左から順に10分、20分、30分、40分。
(結果)
左の写真のような結果になりました。

どれもが、アルミホイルで包まなかった部分は茶褐色となり、包んだ部分との色の違いははっきりしています。そして、照射時間が長いものほど濃い茶褐色となっています。

太陽光照射の場合よりはるかに短時間の照射で、このように濃い茶褐色となりました。

注意!
紫外線の光を直視しないでください。特に殺菌灯の光は作用が強いのです。殺菌灯から発するUV-C領域の紫外線は、白内障や皮膚がんの原因になります。殺菌灯の光を直視したり、直接皮膚に当てたりしないようにします。紫外線を透過させない保護用メガネ(サングラス、ゴーグルなど)をかけ、皮膚は黒い衣服や手袋でおおってください。

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〔4こんなこともやってみました

実験4-1:日焼け止めクリームの効果を試す(太陽光を照射した日9月20日)
日焼け止めクリームが、はたしてほんとうに紫外線をカットしているのかどうか調べてみました。使った日焼け止めクリームは、SPF50+、 PA+++と表示されているものです。UV-A、UV-Bとも防止効果は最高レベルという表示です。SPF:UV-Bの防止効果を表す指数。 PA:UV-Aの防止効果を表す指数。[下記参考ウェブサイト4)]

バナナ2本
(方法)
バナナの一部を無色透明のセロハンで包み、セロハンの上から日焼け止めクリームを塗る。ある部分には、少し白っぽく見えるほど厚塗り、ほかの部分は白さが感じられないほどの薄塗りにした。
よく晴れたの日、9:00〜15:00の6時間直射日光に当て、その後暗所に置いた。

(結果)
写真はどちらも太陽光照射から2日後の状態です。
写真右は、セロハンをはずしたところです。日焼け止めクリームを塗った部分は茶褐色になっていません。少なくとも、SPFやPAが最高レベルの日焼け止めクリームは、9月中旬の太陽光中の紫外線を防ぐと言えます。厚塗り部分と薄塗り部分との違いは現れていません。

実験4-2: 紫外線で文字や模様を描く(太陽光を照射した日-10月8日)
無色透明セロハンに、黒い油性ペンで字や模様を書き、そのセロハンでバナナを包みます。また、アルミホイルに模様の形の穴を切り抜きそのホイルでバナナを包みます。このバナナを快晴の日に9:00〜15:00の6時間直射日光に当て、その後暗所に置きました。その結果がこのページ最初の写真です。

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[以上の実験結果についての考察]
・UV-AとUV-Cとでは、バナナの果皮への作用の強さはずいぶん違います。UV-Aを6時間照射しても、バナナの果皮は、アルミホイルで包まなかった部分は包んだ部分と比べてめだった差がない場合がほとんどなのに、UV-Cはわずか10分や20分の照射で、太陽光を3〜6時間当てたのと同じ程度の茶褐色となります。しかも、UV-A発生源として使ったブラックライトは15W、UV-C発生源として使った殺菌灯は4Wです。
短波長の光ほど強いエネルギーを持つこと、オゾン層が成立してUV-Cが地表に届かなくなる以前の地球では生物は陸上には住めなかったことなどが納得できます。

・自然の太陽光では、UV-Cはオゾン層により吸収されほとんど地表に達しませんから、太陽光照射でバナナの果皮が茶褐色になるのは、地表に届いているUV-AとUV-Bの作用のはずです。おそらく、15WのブラックライトのUV-Aは、よく晴れた日の太陽光中のUV-Aよりずっと弱いので、バナナの果皮が茶褐色にならなかったと思われます。また、UV-Bは当っていないことも関係しているのでしょう。
ブラックライト照射で、ホイルで包んだ部分との境はあいまいながら、1度だけ茶褐色化がみられました。そうなるまでに日数もかかりましたが。バナナの生理的状態により、わずかにUV-Aの作用が見られたということでしょうか。

・野外に生えている植物は、太陽が出ている間はずっと紫外線を浴び続けています。紫外線をさえぎったり、紫外線による損傷を修復したりするメカニズムが備わっていることが考えられます。例えば、葉の緑色の色素クロロフィルや、赤シソやコリウスなどの葉に含まれるアントシアニンは、紫外線をカットしていると考えられています。
なお、バナナの果皮が茶褐色になるのは、バナナの果皮のDNAに化学変化を起こすためだということです[下記参考文献1)]。

(お断り)この実験は、バナナの皮への紫外線の作用を調べたものです。ヒトの肌に紫外線が及ぼす影響については、この実験からは何もいえません。

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[参考資料]
文献 
1)「バナナへの紫外線の作用を調べる実験」『植物の観察と実験を楽しむ』松田仁志・著 P131〜150 (裳華房)
ウェブサイト
1)紫外線速報-紫外線概要- http://www-cger2.nies.go.jp/ozone/uv/uv_index/outline/index.html
2)スペクトル色々:ブラックライトと殺菌灯-http://t.nomoto.org/spectra/000475.html
3)スペクトル色々:色セロハン-http://t.nomoto.org/spectra/000197.html
4)紫外線情報-http://www.yakujien.com/Pages/uv1.html#Anchor-43260


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