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七瀬「はぁ・・はぁ・・・・」
キ〜コ、キ〜コ・・・
七瀬「うおおおっ!」
キ〜コ、キ〜コ・・・・
みさき「あれれ、何だかスピードが落ちてきた気がするよ」
椎名「みゅ〜♪」
キ〜コ・・キ〜コ・・・
七瀬「はぅ〜、だったら代わってくれても良いじゃないですかぁ〜」
キ〜コ、キ〜コ・・・
みさき「ゴメンね、私お腹空くと動けなくなっちゃうんだよ」
椎名「てりやきバーガー食べたいぃ〜」
七瀬「あ、あんたねぇ! 助けてくれたのは良いけど、何でいざとなったらバッテリーが切れるのよぉ!」
キ〜コ・・キ〜コ・・・
椎名「わたしの轟天号は最強だもん!」
みさき「そうだよねぇ、繭ちゃんは命の恩人だよね♪
椎名「みゅ〜♪ もっと頑張るの!」
七瀬「うぐぅ・・・泣きたい・・とても泣きたい気分だわぁ!」
そう叫びながら必死に椎名の乗ってきた電動アシスト付きの自転車を漕ぐ。
後ろの荷台には、みさき先輩が。
そして七瀬に肩車している繭は、2つのお下げ髪を手綱代わりよろしく楽しんでいた。
みさき「んっ? ・・・くんくん、この匂いはワッフル?」
椎名「あっ! 茜お姉ちゃんだ!! みゅぅ〜♪」
繭の指差す方を見る七瀬・・・っと言うより繭に無理やり頭を向けられたとも・・・
七瀬「ぐはぁ! あたた・・って本当だ茜じゃない。茜ぇ!!」
1人歩きながら袋から甘ったるい香りを出しながら口にしたワッフルが止まる。
茜「・・・・七・・瀬さん? それに皆さん・・」
ピーピー! カチャ
浩之「あっ委員長、オレだよ!現場に到着して深山先輩達を確保したぜ。指示を頼む」
送った通信にしばらく間があった後、声を落ち着かせたような智子の声が聞こえた。
保科「あぁ、深山さんに澪ちゃん無事やったんやな、そら良かったわ」
浩之「? 何かあったのか?」
保科「・・・・・あのな、本部が襲われたんや」
浩之「何だってぇ!? で、大丈夫なのか? みんなはっ!」
浩之のトーンが変わるのを聞き、深山達の表情も同じように強張る・・
保科「本部と言っても、敷地内にある車両倉庫やから、ココにいる皆は大丈夫なの」
浩之「そうか、それを聞いて安心したぜ」
通信機のマイクを持ちながら額を流れた汗をぬぐう。
他の皆も安心したように安堵のため息をもらした。
保科「だけど、試作の最新鋭戦車が奪われたあげくに車両倉庫を破壊されたのが痛いわ」
浩之「なるほど・・・って、住井と南は大丈夫なのか! あいつら警備&整備担当じゃないか」
保科「そんなら大丈夫や、怪我は大したこと無いんやけど・・・ちょっとな」
ちょっと言いにくそうに言葉をとぎる・・・それを浩之は待った。
保科「あんな、住井くんの証言から最新鋭戦車を奪ったのはウチとそっくりな奴らしいや」
浩之「何だって! そんな事したのか委員長!! どうしてそんな事を・・・」
保科「アホぉ! ウチがそないなことするかいな!! それにどうしてウチがここに居るんや!」
通信機からの怒号に跳ねるスピーカー・・・
浩之「まぁ、そう言えばそうだな。悪かったって。で、そいつは本当に委員長にそっくりだったのか?」
保科「ほんまみたいや。ウチもどうなってるんかサッパリや!」
通信機の向こうからパネルを叩く音が響く。それに対するヒントに浩之は心当たりが合った。
浩之「実はこっちでも分からないことがあってな。あの爆発の原因は・・・芹香さんと琴音ちゃんみたいなんだ」
保科「な、なに言うとんや!! そないなことあるわけ無いやん!」
浩之「あぁ、自分もこの目で見るまではな。ただ、そっちの委員長の偽者と何か関係あるかもしれなんだ」
保科「・・・・・・」
深山「ちょっと良いかしら藤田くん」
そう言い、浩之から通信機のマイクを受け取る。
深山「保科さん、藤田くんの言うことは本当よ。確かにあれは芹香さんと琴音だったわ」
あの出来事を思い出すかのように一度うつむき、そして
深山「ただ、同じ容姿をしてても本物じゃないわ。琴音の姉として、その事は保証します」
深山と姫野の間に複雑な感情があることを悟る智子
保科「分かりました。かなり現状は複雑な用途を辿ってるみたいですね。詳しいことは本部でお願いします」
深山「ありがとう・・・それから了解しました。 あっ、藤田くんに代わるわね」
浩之「そう言うわけだ、俺達は本部に戻るから。これからの事はみんなで決めようぜ」
保科「うん、そうやね。気をつけて戻って・・・あっ、ちょっと待ってな」
向こうから、智子とあかりのやり取りが背後に聞こえる中、
保科「今、佐藤くんから連絡があって例のやつのテスト準備が完了したみたいなの」
浩之「本当か! 雅史のやつちゃんとやっていてくれたんだな。で、今どこに?」
保科「現在、佐藤くんがそちらにAV−8Bハリアーで向かってるわ」
腕時計を見て時間を確認すると
浩之「分かった、オレは雅史と一緒にバシリスクへ向かうから。後はよろしくな」
保科「ほい、気をつけてな」
通信を切ると他のみんなに状況を説明し、浩之1人を残して深山達は来栖川邸へと戻っていった。
浩之「ふぅ〜・・何だか大変なことになって行きそうだな。オレも本気にならないと。 綾香・・・みんなを頼むぞ」
しばらくすると傍に垂直降下して来たハリアーを背後に浩之はめったに見せない真剣な表情を浮かべた。
本部にある司令室のエレベーターの扉が開くと、中から口髭と執事の服装をした大柄の男と、顔立ちの似た女性2人が現われた。
1人は東鳩高校の学生服を着た大人しい感じの中にも凛とした・・・それでいて、ぼぉ〜とした雰囲気をもつ女性。
もぅ1人は寺女の制服を着た、若々しさを全身に現したような元気な女性だった。
あかり「あっ、芹香先輩に綾香さん。それに長瀬さんもどうされたんですか?」
セバス「ははっ、セバスチャンでよろしいですぞ。ささっ、お嬢様」
芹香「・・・(コクリ)」
うなずくとキャプテンシートに座る智子のそばに近づき話をした。
保科「えっと、現状は芳しくありません。相手・・・敵なんやけど謎だらけで分からないことだらけです」
綾香「車両倉庫の件もあるし、私達も気を引き締めていかないとね」
保科「そうやな、綾香にも何かあったら出てもらうかもしれへんからよろしく頼むわ」
任せて!と言うように智子に対して右手の親指を立ててみせる。
セバス「来栖川私設軍は全てここの指示の元に動くようしております。大変でしょうが皆さん頑張ってください」
芹香「・・・・・・」
3人の安心感から本部司令室の重い空気が晴れた感じだった。
保科「でも、車両倉庫が破壊されたのは痛いわ。本部防衛に回す戦車が減少やし・・・」
綾香「あん、それなら大丈夫よ! 頼りになる戦闘車両と戦車マスターを呼びに行かせてるから」
保科「そうなんか?それなら安心やな。で、何個師団なんや?」
その言葉に芹香はちょっと困った顔をし、綾香はクスッと笑うと・・
綾香「ふふっ、たったの1台よ」
保科「・・・・・えっ? 何やてぇ! たった1台ぽっちで何が出来るんや!相手は最新鋭戦車が相手なんやで!?」
誰もが智子の意見と同じと言うように不安にざわめき始めた。
綾香「大丈夫、大丈夫! なんせあの伝説の英雄とも言われた人だしね、セバスチャン?」
セバス「えぇ、彼と彼女に任せれば鬼に金棒ですぞ!」
その自信のある言葉に多少の安心感を感じ智子はシートに腰を降ろした。
綾香「あっ、通信機を借りるわね」
そう言い、周波数を合わせると通信機に呼びかけた。
綾香「ハロー! 私だけど、今どの辺を走ってるかしら?」
〜続く〜
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