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朝日が昇る・・・
闇を払拭するかのように山に川に森に街にと光の絨毯を広げていく。
その中を1台の戦車が土煙を上げながら走っていた。



詩子「ふ、ふあわぁぁ〜〜・・・・眠い」

1人ワルキューレのコックピットシートに座る詩子は大きくあくびをした後、「う〜ん!」と背伸びをする。
コリャからワルキューレという名前の戦車の・・・コリャは相棒と言っていたけど・・

レクチャーを朝方まで受けていた詩子は寝不足の目をこすりながら、
詩子「ねぇ、ワルキューレはいつコリャさんと知り合ったの?」
そう詩子は超思考性戦闘情報分析システム・・・ワルキューレと名づけられたコンピューターに話し掛けた。

ワルキュ「マスターとですか? う〜ん、どう言ったら良いのでしょうね」
コンピュータとは思えない口調、そして思い悩む感情など人の心を持ってるかのように答える。

詩子「言いにくいことなの?」

ワルキュ「『わたし』と言う存在のことと、この戦車のことだとニュアンスが代わるんですよね」

詩子「??」

ワルキュ「そもそもワルキューレという戦車はマスターのお父さんが使用していた戦車の名前なんです。
そして『わたし』と言うワルキューレが産まれたのは約10年前です」

詩子「あっ、そうなんだ。 っと言うことはワルキューレ・・あなたを作ったのはコリャさんなわけなんだね」

ワルキュ「・・・・・・」
その問いかけに返答は無かった。

詩子「んっ?どうしたのワルキューレ?」

ワルキュ「・・・その質問にはお答えできません」

詩子「なっ!? 何よそれ!! 私はあなたのマスターなのよ!!」


 ザザァァー!!


急停車するワルキューレ

ワルキュ「いつ、わたしがあなたのマスターになったんですか!わたしのマスターはコリャだけです!」

詩子「だったら何で私を乗せてるのよ! それに私だって好きで乗ってるんじゃ無いわよ!」

ワルキュ「わたしだって、あなたみたいながさつで無神経で胸ペチャな人なんて乗せたくないわよ!」

詩子「うぅぅ〜!!」

ワルキュ「うぅぅ〜!!」


2人はコックピットのホログラムモニターごしに睨みあっていた。




 ヒュゥゥゥゥーー・・・ドカーン!!



激しい音と共にワルキューレの車体が揺れる。

詩子&ワルキュ「な、何なの!?」
正面モニターに外部映像が映し出される。そこには・・・

ワルキュ「AH−1対戦車攻撃ヘリ!? いつの間に?」

詩子「攻撃ヘリって・・・あんた、ちゃんと周りを見てなさいよ!」

ワルキュ「何ですって! あなたこそマスターからわたしを受け取ったのならちゃんとしてよ!」

1人と1台の言い争いは更にエスカレートし、果ては好きなアイドルの好みにまで発展していった。
だが、その間にも敵からの攻撃は容赦なく続く。


 ババババババッ!!
 バシュッ! ダダダダダダッ!!

命中弾までは無かったが、爆音と衝撃が車体を揺さぶる。


詩子「うるっ!」 ワルキュ「さいわねぇ!!」


同時に叫ぶと、詩子はハンドルバーを握り、セレクターをDモードにするとアクセルを踏み込む。
ワルキュは武装を展開、サーチレーザーを使い敵を索敵していった。

詩子「ワルキューレ! まだロック出来ないの? くずくずしてんじゃないわよ!」
ワルキュ「あなたこそ、しっかり操縦しなさいよ! わたしの柔肌にキズを付けたら許さないわよ!」

遅い来るコブラからの攻撃を巧みに避けるワルキューレ、
詩子のドライビングテクニックによる回避行動は的確に攻撃を避け、反撃できる最適な位置に移動していく。

詩子「あとは任せたわよ、ワルキュ!!」
ワルキュ「了解!マスター!! バルカン・ファランクス展開、自動追尾完了!」

上部砲塔に付けられた対空・対ミサイル用CIWS・・・バルカンファランクスが敵コブラをロックするように動く

ワルキュ「発射トリガーをマスターへ!」
詩子「ありがとワルキュ! さて、私たち可憐な乙女を苛めたお礼をさせて頂きましょうか・・ファイヤー!」

スティックのセーフティーカバーを外し、トリガーを押し込むと・・・

 ヴァゥゥゥゥゥ!!

1分間に1000発もの弾丸を発射するファランクスが敵コブラを襲う!
回避行動をとるもウラン破裂鉄鋼弾による弾幕を回避出来ず、蜂の巣のように集弾すると爆砕していった。


ワルキュ「お見事です、マスター! ・・・あっ」
詩子「あなたこそ凄いわよ、さすがは最強戦車と呼ばれ・・・あっ」

ふと、お互いを認め合ってる自分に気づき言葉を詰まる2人・・

詩子「えっと・・・・」
ワルキュ「その・・・・」

先ほどの事もあり素直になれない2人・・・そこに

 ピピィー!

ワルキュ「周囲警戒レーダーに反応! 更にもぅ3機のコブラが接近中です!」


詩子「了解! ・・・ワルキュ、さっきの続きはまた後でね」
ワルキュ「ふふっ、そうですね。楽しみにしてますわよマスター♪」

お互い今度はホログラムモニターごしに「クスリッ」と笑うと目の前に広がる現状を確認していった。

 パシュゥゥー!!

1機のコブラからATM−4が発射! 有線誘導のワイヤー引きながらワルキューレへと向かった。
それを情報モニターから読み取ると、

詩子「対戦車ミサイル? ワルキュ、アブソーブ・シェルを展開! それから「アレ」を使うから用意してね♪」
ワルキュ「アレですか? 了解♪」
返事と同時にアブソーブ・シェルを起動させるワルキューレ。どこか楽しげだ。

ワルキュ「着弾します!!」
ワルキューレを中心に光のドームが包むと、そこにATM−4が着弾した。

 ゴォォォ!!

激しい爆発と衝撃がワルキューレと詩子を襲う・・・・だが、そこには無傷のワルキューレがいた。

詩子「ふっふっふっ、そんなものでは私とワルキュは倒せないわよ♪ 発射準備はOK?」
ワルキュ「充填完了ですわ。いつでも発射OKです!」

爆風と煙が去った後には、140mmアモルフ砲塔の接続部左右のカバーが開かれる。

詩子「わかったわ。 じゃあ・・・」
一瞬、間をおく。

詩子「じゃあ、ワルキュ! ILMS−ONE発射!!」

ワルキュ「了解、マスター!」


開かれたカバーから一閃の光が左右から2つ発射されコブラに向かう。
回避行動を取るコブラを追いかけるように光は曲がりコブラに命中!
コブラを包むように覆うと光の球体の中をスパーク・・電撃が襲う。

 バシュッ!

爆発音と共に光が広がり、コブラの姿を消滅させていた。


詩子「うぅ、目がチカチカするよぉ〜・・・でもさすがはILMS-ONね、凄い破壊力だわ」
ワルキュ「ふっふっふっ! この最強戦車ワルキューレ自慢の超兵器の1つですしね♪」

詩子「さて、残りはと・・・」
残ったコブラは回避行動しながら商店街の方に後退していく。

詩子「逃がしはしないわ! ワルキュ、全速で追うわよ!!」
ワルキュ「了解です、マスター!」


2人の息の合った戦いをしていた場所から少し離れたビルの屋上でコブラを操っていたドッペル琴音は・・

ド・琴音「・・作戦どおりです。そちらに向かわせましたので後はお願いします」
??「了解! こっちは準備OKだから任せて」

通信を切るとテレポーテーションを使い、その場から消え去っていった。

続く


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