宇宙

地底の住人


 
静かです。まだ風も吹きません。まだ、時間が存在していないのです。最初に熱い空間がありました。空間の中に温度の違いがありました。その熱いものは、人の形をしていました。

やがてその人の形は、熱い空間から外に出てきました。そして、熱い空間は収縮を始め、天と地に別れました。その時はじめて時間が生まれたのです。

外に出た人の形にはまだ骨がありませんでした。骨は、網の目のように人体に浸透している柔らかい軟骨のようなもので出来ていきました。その柔らかい軟骨のようなものは、液体状のものから、その液体状のものは、気体状のものから、その気体状のものは、エーテル状のものから、そのエーテル状のものは、霊的なものから発生したのです。結局、物質的なものは最初にすべてをおつくりになった神の念い(おもい)によって作られました。
そのかたはいかなる一者よりもさきにいましたかた。そのかたは数字の「一」として表れている「古代の一者」。
 
 念いの力は、魔術的に作用しました。念いを集中させると、花を早く成長させることが出来ました。自然界も「古代の一者」の念いが作り上げていったのです。良い念いは、水、嵐、周囲を支配していた火を鎮めるように働きました。最初の地球は大部分、火山のような性質だったのです。

そして、長い時間が経過しました。
人が大地に満ち、星が空いっぱいに輝きました。


惑星
 ジーン・ウールは、星空を見るのが大好きでした。
その日は本当に満天の星空で、月も出ていました。青い月の光の中で何かが光って見えました。  1999/11/25

家の明かりが小さくなりました。風邪を引いているお父様が、早く床に入ったのでしょう。
ジーン・ウールは、外に出ていきました。真夜中です。
青く光るその人は小さくて、ジーン・ウールを見つけると走って逃げていこうとしています。
どうして、追いかけようなんて思ったのでしょう。信じられません。
でも、ジーン・ウールは追いかけていきました。小道を飛ぶように駆け、川を渡り、丘の麓まで来てその小さな人を見失いました。
ジーン・ウールは、朝までかかって家に帰りました。家まで帰ると朝の太陽が顔を出しました。

また、その夜もジーン・ウールは小さな青い人を見つけました。今度はそうっと見つからないように後を付けていきます。
その小さな人は、丘の麓から小高い山に登っていきました。ジーン・ウールがハアハアフウフウといっている間に、またその小さな人を見失いました。ジーン・ウールは、昼までかかって家に帰りました。

さあて、次の日ジーン・ウールは小さな青い人と会うことが出来たのでしょうか。イエスです。
驚いたことにその小さな人は、今度は木の切り株に腰をかけてジーン・ウールを待っていてくれました。
「・・・・・」「・・・・・・・」
耳に聞こえる言葉ではない言葉が聞こえてきました。
1999/11/26

「どうして追ってくるの?」
風が吹いて頭上の枝が揺れました。そして月の明かりが小さな人を一瞬照らしました。
小さな人は、帽子を目深にかぶっていました。

「それは・・あなたが逃げるからよ。・・で、何をしていたの?」
「・・・・・」何も言いません。・・・「探し物です」少したって言いました。
「探し物って何を探しているの?」
「今は言えません。」・・・・・

でも、ジーン・ウールは、ほんの少しだけ話をしただけだったのに、とても不思議な気持ちになりました。まるで、古い友達にあったような懐かしい気持ちでいっぱいになったのです。
それは、その小さな人も同じだったのかも知れません。
その小さな人は、青い皮膚をしていました。とても不思議だけれど、皮膚は金属のように輝いてジーン・ウールの心を鏡のように映しました。
そして、小さな人はにっこりしました。

「あなたに決めました」
「僕の名前は、サトといいます。あなたはジーン・ウールですね。今あなたのことはみんな分かりました。」
「・・・何を言っているのか分かりません。」

ジーン・ウールは唖然としていましたが、でも心のどこかで思ったかも知れません。
自分以外の人に自分のことをみんな分かってもらえるってことは、本当はとても嬉しいことなんだもの。嫌なところもいっぱい持っているけれど、良いところもいっぱい持っているってこと、本当は分かってもらいたいですよね。

「今に分かります。僕はあなたをパートナーに選びました。」
「なに?人生のパートナー?」ジーン・ウールはおどけて言いました。
「・・・冒険のパートナーです。それもとても危険な冒険です。だ・・大丈夫かなあ」
サトは心底不安に思ったようです。自分から冒険のパートナーなどと言っておきながら、好きなことを言っている。勝手にしなさい。
サトは語り始めました。  1999/11/27


 星の種がありました。種にはいろいろな記憶が込められました。植物が種から花を咲かせ実をつけそして、次世代にどう引き継がれていくのか。鉱物が鉱脈まで育つにはどんな環境が必要なのか。自然が気象とどう関連していくのか、動物たちはどうして子孫を残していけるのか。それらすべての記憶が地球という星の種には込められているのでした。いつか、地球が年老いて消滅したとしても、地球という星の種は意識として残り、やがて地球意識を持った新しい新星が生まれるのです。

 サトの青い皮膚の人種はとても古い魂で、地球中心部には太陽系第10番目の惑星に太古に住んでいた人々が監禁されているというのです。そして青色人種はある目的から地球の深部で働いているのだとサトは語りました。その太陽系第10番目の惑星に住んでいた人々とは、肉体を持たず血を好み、人間の間に入って否定、消極、悪そのものの存在で、太古に地球人をまったく奴隷状態で支配していた。その奴隷状態は″光の子″の大聖者(マスター)たちが来て彼らを捕らえ地球中心部に幽閉するまで続いた。しかし、その幽閉から免れている存在がいるのだとサトは語りました。

「なぜ、この世からまったくの悪をなくさないの?そんな力のある大聖者だったら、可能ではないの?」 ジーン・ウールは不思議に思いました。
「・・もし悪が全くなくなったら、心の葛藤もなくなって不安も憎しみも怒りも何も存在しないとしたら、悔いる人生もないわけだ。人生をやり直す必要もなくなったら・・それは、素晴らしいことかい。」
「・・・・素晴らしいと思うわ」ジーン・ウールは答えました。
「では、人間生まれ変わる必要もないわけさ。悪がなければ理想的で完全な人生を歩むことが出来るんだからね。」サトはジーン・ウールの頭の中に語りかけました。
「理想的な一度きりの人生を、人は望むものよ。一度きりだと思うから、素晴らしい人生にしたいと思って努力するのよ。誰も苦労する人生など選ばないと思うわ。」ジーン・ウールはつぶやきました。
「人は何のために生まれて、どこへ向かおうとしているのか、考えたことがあるかい?」
「・・・・・・・・・」ジーン・ウールは沈黙しました。これこそがジーン・ウールの目下の主題だったのです。

「僕が君を必要な理由を言うよ。君は自分では分かっていないようだけど、君は誰よりも勇敢で、いまだ一度も心に悪を持ったことのない人なんだよ。」
「そうだったかしら」
「この世に君と同じくらい純真な人はいるだろう。だけど、勇敢で怖れを知らず、智恵深い人は他にはいない。今、実は大変なことが起きているんだ。」
さあ、大変です。一体何がおきているというのでしょう。1999/11/28

 ジーン・ウールは、とても不思議な娘です。どんな困難が起きたとしても「自分は必ずやり遂げるに違いない」と思うのです。どんな悲惨な目にあったとしても、「これがこうしてこうなった」と、その過程を学べて良かったなあ、と思う人なのです。だから、不安も絶望もいまだ心の中に忍び込むことすら出来ませんでした。
どうしてだと思いますか?
それは、彼女の名前に秘密がありました。「ジーン・ウール」その名前は力の言葉。その音を耳にすると、不思議な力がわいてくる。そう、ジーン・ウールは神々から特別に恵まれた名前を持つ娘なのです。ジーン・ウールは「いつでも、どこでも、どんな時でも、私は頑張れる」そう思っている人なのです。

 サトは語りました。アトランティス大陸が生まれるはるか昔に、蔭の者らの時代がありました。暗黒の詮索者らは、地球の大深淵から呼び出してはならない者を呼び出して、偉大な力を得ようとしました。暗黒の詮索者らは、上位宇宙サイクルへ行くことは出来なかったけれど、下位の宇宙の門を開くことは出来たのです。彼らは大深淵より存在者を呼び出しました。この者たちは形なく姿は見えませんでした。彼らは人間の生き血と人間の悪意がない限り、姿を持ってこの世に生きることの出来ない存在でした。しかし、名前が呼ばれ、血の犠牲が捧げられたときにやってきました。彼らは人間の外形をしていたが、真の姿は蛇の頭を持った男や女だったのです。その蛇頭人は最近この国の指導者の魂を追い出して、その肉体に入り込みその指導者になりすましているというのです。人間の目には分からなくても、青色人にはお見通しなのです。そのにせ指導者は遠いアクテュルス星より膨大なエネルギーを取り込み、この星の支配者になるという野望を抱いているのです。ふたたび人間を奴隷化するつもりなのだとサトは言います。

「どうしたらいいのでしょう」ジーン・ウールは聞きました。
「たった一つ方法があります。それはジーン・ウール、あなたにしかできない仕事です。」

その方法とは、彼らが人間の姿でいるときに彼らが発音する事の出来ない言葉が一つあるのだというのです。彼らの本当の姿は爬虫類で表情筋が発達していないので、発音できない言葉があるのです。
「彼らに人々の前でその言葉を言わせることです。そして姿を現したときに命を絶つのです。方法はたった一つです。」
「・・・・・でも、誰がそんなことを信用するでしょうか。」
まづ第一、自分自身がその話を信じられないのだ、とジーン・ウールは思いました。

 まだまだ未熟者のジーン・ウールに地底の秘密を明かす時期は来ていなかったというのが本当でしょう。でも、そうは言っていられないほど、事態はせっぱ詰まっていたのです。地球中心部にある不思議な光る石と、もう一つは8月にある宇宙から降る隕石の鉄から出来た剣が必要でした。8月に、ある星から落ちた隕石の鉄には不思議な力が込められていたのです。
ジーン・ウールは三日間というもの全く食をとりませんでした。その間サトより意識を純真で神聖なものだけを考えているようにと厳命されました。

それから、三つの試練を受けなければなりませんでした。
ひとつは水の試練でした。
どよんとよどんだ海を小舟で渡らねばなりませんでした。櫓は海藻で絡まり小舟は身動きがとれません。やがて、まっ暗い海の底から不気味な生き物が近づいてきます。もたもたしていると不気味な生き物がジーン・ウールを襲ってくるでしょう。ジーン・ウールは小舟の舳先に立って叫びました。
「天と地を支配する王、輝く水の精ウンディーネよ、お前の真実の名において命じます。道を開け。」
すると、水の精ウンディーネが現れて海藻を払いジーン・ウールの小舟の前に道が開かれました。そしてジーン・ウールは落ち着いて櫓をこぎ、やがて暗い海から脱出する事が出来ました。

二つ目は風の試練です。
二つの絶壁がそびえています。その間に一本の心細い橋が架かっていました。谷はすさまじい風が吹き荒れています。下を見ると真っ暗闇で谷底も見えません。落ちたら命はないでしょう。吹き上げてくる風に小さな木の橋は、今にもちぎれ飛んでしまいそうです。ジーン・ウールは叫びます。
「宇宙の息吹から生まれ、世界を支配する風の精シルフェーよ、お前の真実の名において命じます。静まれ。」
シルフェーが現れました。そして、谷底を吹き荒れた風は静かに静かになりました。そしてジーン・ウールは見事にわたりきることが出来ました。

三つ目は火の試練です。
ごうごうと燃えさかる火の壁をつきくぐることは、とても勇気がいりました。熱気が行く手を遮ります。
ジーン・ウールは、両手をあげて叫びました。
「始源よりあり、終わりまである火の王サラマンデルよ。お前の真実の名に命じます。私を通せ。」
すると、火の壁の中に通路が出来ました。サラマンデルが現れて厳かに言います。「通れ。」
こうして、ジーン・ウールは見事三つの試練に合格することが出来ました。

 ジーン・ウールは、地下深く降りた広い洞穴の中にいました。あたりは柔らかい金色の光が満ちています。そこには町がありました。そして、町の真ん中に光る石の塔が建っていました。塔のてっぺんには丸い水晶の屋根がのっていました。青色人がその塔にキラキラ光る石を持って入っていきました。彼らは塔の中心の穴に、その石を投げ入れていました。石は、地球中心部の太陽系第10番目の惑星に住んでいた、死のない人々に死を与えるために使われていました。でも、まだ死のない人々に死を与えることは出来ません。彼らに死が来れば、輪廻転生の周期に入らすことが出来るのだが、まだ実験段階だとサトは言います。ずっと遠い未来に可能になる日が来るのでしょうか。

サトはいつか帽子を取っていました。よく見ると、サトの目があるべきところには何もありません。ただすべすべの皮膚があるだけです。でも、優しくて暖かいものがジーン・ウールに伝わってきました。
ジーン・ウールは、地底の青色人から光る石をひとつもらいました。石は四角くてダイヤモンドのように輝いています。この石と8月の隕石で出来た剣が必要なのです。ジーン・ウールは剣を手に入れることが出来るのでしょうか。

でも、今宵の夢はここでおしまい。ジーン・ウールの不思議な話はまたね。



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