宇宙

未来

この物語は、「エメラルド・タブレット」とシュタイナーの「黙示録の秘密」を下敷きにしました。

惑星
【人が再び海洋を征し、鳥の如き翼もて空を飛びし時、雷光を利用することを学びし時、その時にこそ戦いの時始まらん。両者の戦闘は大ならん。光と暗黒との戦争は大ならん。地球を粉砕する暗黒力を使いて国が国に対して蜂起せん。軍の諸兵器は人類種族の半数が滅亡するまでに地球人を一掃せん。その時、朝の太陽らいで来たりて人の子らに布告を発して述べん。「おー人々よ、汝らの兄弟らに対する抗争を止めよ、かくてのみ汝らは光にと到り得るなり。おー我が兄弟よ。汝の不信をやめて道に従え、しかして汝の正しきことを知れ」
その時、人々は兄が弟に抗し、父が子に抗して争うならん。その時、わが祖の古代の家、暗き海洋のうねりの下なる処より隆起せん。その時、すべての人々が目標への光を求める光の時代あらわれん。その時、光の同胞ら人々を治めん、夜の暗黒は消え失せん。】(タブレット12より)


惑星
 
ジーン・ウールたち秘儀参入者と呼ばれた者たちは、科学者でもありました。彼らは星々の運行を研究し、星々の位置と運行のなかに、地上に起きることがらにおよぼす影響に、法則性があることを知っていました。そして巫女の書が書かれました。ジーン・ウールたち秘儀参入者と呼ばれた者たちは、星々を綿密に観察したのちに、何千年も先に起こることを書きとめました。

 時の輪が完了する前、太陽が東より西へと輝きわたる時、「万人の万人に対する戦い」と名づけられ、道徳的な混乱によって崩壊すると、古代より言い伝えられてきた時代があります。この時代は未来にあります。しかし、非常に遠い過去にさかのぼると、神秘学で土星紀と呼ばれる状態に出会います。この土星紀に時間と呼ばれるものが生まれました。天体の運動は土星紀に始まりました。その軌道は、黄道12宮の12のしるしで示され、ひとつの惑星がそのような星座のひとつを通過すると、それが一宇宙時間と呼ばれました。12の宇宙時間がありました。12の昼の時間、12の夜の時間、それらが24の循環となり、この24の循環は宇宙において重要な時期を形成しました。そして、この天体の循環を管理する時間の王が存在しました。

 ジーン・ウールは、とても静かな時間を過ごしていました。すべてが透明でした。何もかもが輝いて見えました。きっと、ジーン・ウールが、苦しみも悲しみも耐え難い孤独も、すべてを受け入れる気持ちになったからでしょう。
そんなジーン・ウールの透明な心を、長い時間待っていたもう一つの存在がありました。その存在は、輝く太陽のまぶしい光のなかから現れました。ジーン・ウールは何が起こったのか分かりませんでした。

「ジーン・ウールよ」
雷鳴のような声が、空から降ってきました。ジーン・ウールの足下で無心に草を食べていたアンタレスが立ち上がり、ぽろりと食べかけの草を落としたかとみるや、次の瞬間一目散に地面の穴に飛び込みました。ジーン・ウールは驚いて空を見上げました。まぶしくて何も見えません。

その存在は、ジーン・ウールの目にも見えるように、光を落としてくれたようです。真っ白くて長い髪と、胸まで垂れ下がる白い髭と、長い裾をもった白い衣を着ていました。手には杖を持っていました。杖の先には白い蛇が、自分のしっぽをのみこんでいます。

「私は、始まりであり、終わりでもある。私は進化の調整者であり、時間の調整者でもある。ジーン・ウールよ。お前に未来と、お前の果たすべき役割がなんであるのか見せてやろう。」
言うが早いかジーン・ウールは、渦巻きに巻き込まれて、長い長い螺旋状のパイプを竜巻のように駆け登っていきました。


惑星
 20世紀にローマ法王がダーウィンの進化論を認めました。時代でいえば、つい最近のことです。でも、もう一つ別な進化論が存在します。この進化論は、実は聖書のなかに書かれていて知られざる、もう一つの進化論なのです。

 ジーン・ウールはいつか、宇宙空間をただよっていました。そこに星がありました。星は生きていて、しかもさまざまな色彩に包まれていました。その星の霊的な大気のなかに、さまざまな色とさまざまな形のオーラが変化しつづけていました。

「これは?」
「ジーン・ウールよ、これは地球だ。今から地球に起きることを見なさい。」

一体何があったのかジーン・ウールには分かりませんでした。でも、一瞬の間に地球のオーラは色彩と形を変えていきました。その輝きは地球のある一点から広がっていきました。
「ここは、どこなのですか?」ジーン・ウールはアルバロンガに聞きました。
そうなんです。ジーン・ウールをこの宇宙空間に連れてきてくれた老人は、自らの名前を「アルバロンガ」と名乗りました。

「ゴルゴダの丘だ。いま、救世主の傷口から血が地球に流れたのだ。」

宇宙から見ていると、それは壮大なドラマでした。地球に新しい力が流れ込んでいきました。地球進化にとって重要な新しい力が入ってきました。この力は、地球と共にずっと未来にまで作用する力なのです。

アトランティス時代以後、人間は霊的な世界から、次第に物質からなる世界に沈んでいきました。かって人間の先祖たちは、神話の世界や夜空の星とその位置から物語を読むことが出来たのに、時代を下るに従っていつしか霊的な世界を見ることも、感じることも出来なくなっていきました。
アルバロンガはまた螺旋状のパイプをのぼっていきました。

そこは未来でした。そう、今よりもずっと未来に来る世界です。

 アルバロンガは語りました。
「地球には最初に霊的な母体があった。この母体から低級な動物がこらえきれずに離れ、物質界に落ちていったのだ。早く霊的な母体から離れたものは、地上で見るまに硬化し、初期の進化段階に留まらねばならなかった。こうしてさまざまな動物達が、さまざまな進化段階にとどまったのだ。人間は最後まで待つことが出来た。人間は最後に霊的な母体から離れて肉体のなかに下った。動物の形、姿はすべて人間の情熱を表しているものに過ぎないのだ。」
「では、人間は自分の持っている獣性をすべて動物の姿として外に放り出したのですか?」
ジーン・ウールは驚いて聞きました。
「いや、すべての獣性を放り出したのではない。まだ自分のなかに持っている。ただ人間は動物の形、姿を進化の歩みから投げ出すことによって、今日の高みへといたったのだ。しかし「万人の万人による戦い」のあと現れる人間は、今日とは違った姿をしているだろう。」
「今とは違う姿とは、一体どのような姿なのですか?」
アルバロンガの言葉は、テレパシーで直接ジーン・ウールの心に話しかけてきました。

「人間は心の中で思ったことを、顔には出さないでいることが、今は可能だろう。ところが万人の万人の戦いの後にやってくる時空では不可能になるのだ。」
「どうしてなのでしょうか。」
「万人の万人による戦いののちに、二種類の人間が存在することになる。悪人は悪人のしるしを額に書き込まれることになり、善人は善人のしるしを額に書き込まれることになるのだ。」

驚いてジーン・ウールは地上を見ました。
そこには確かに二つの人種が存在していました。ある朝突然に、人間の姿は人間の心の似姿として現れました。まるで人間の身体がゴムで出来ていて、夜のうちにゴムの身体から空気を抜き取ったかのようでした。すると、このゴム製の身体は縮んで、人間は動物の形姿となってしまうのです。このゴム製の人体のなかに内的な魂の力があって、この魂の力がゴムの身体に人間の形姿を与えていたのだが、人間が大事なある時期に眠っている状態が続くと、天使が人間の睡眠中、仕事を始めるのです。
結局、人間は自分で作り上げたものだけを所有するのです。

アルバロンガは語ります。
「宇宙では、人間が自由を習得することはない。自由とは、地上での人生を過ごす間に習得するものだ。しかも、人間が自由を習得できるのは、地球上でのある特定の時期だけなのだよ。」
その大事な時期に、目覚めていないで眠っていると、後に大変なことになるのだと、アルバロンガは語りました。
「大事な時期って、なんですか?」
ジーン・ウールは、不思議に思いました。

アルバロンガは、語りました。
「ある霊的な存在達が、人間を通して進化できるのは、人間が共に進化の道を歩むからなのだ。霊的な認識、高邁な思想、友愛の精神、それらを求めないで、世界で起こっていることに興味を抱かず、気にもせず、無関心で、日々成り行きにまかせて生きていると、たとえ救世主と同じ時代に生まれあわせても気づかず、寝過ごして重要な機会を逃してしまうのだ。」
「どうして、気がついてくれないのでしょうか?」
ジーン・ウールは、とても悲しく思いました。
「それは、人間がある時期から眠っているからだ。」
「眠っている?」
「ジーン・ウールよ。今人間は、やっと進化の中心点を過ぎたばかりだ。しかし人間はアトランティス時代の中心点から眠っているのだ。それは太古の霊視力がなくなったからだ。人間は世界を見ていない。『見る』というのは、世界の内面までを見通すことなのだからね。人間は闇の時代を生きている。闇の時代は、人間が物質的世界にだけまなざしを向けて、その背後にある霊的な世界を見ない時代ということだ。」
「気がつかないでいると、その人間はどうなるのでしょうか。」
ジーン・ウールは不安になって聞きました。

「もう時間はない。そのために天使達がある仕事をしているのだ。天使が人間のなかに未来の理想を呼び起こそうとしている。天使達は人間の睡眠中に人間の霊的な部分にあるヴイジョンをつくっている。そのヴィジョンとは「将来自分のかたわらにいる人が幸せでなかったら、いかなる人間も心安らかに幸せを享受してはならない」というものだ。しかし、人間が目覚めず眠っていると、天使がある時仕事を始め、人間の体の中にあるものが産み出されるのだ。そして朝目覚めたときにそれを見いだすのだ。」

それは、額、顔つきにその人が善人か悪人かが書き込まれるというのです。魂の内奥が顔に表れるのです。体全体が魂のなかに生きるものの模像となるのです。良い衝動を発展させたか、悪しき衝動を発展させたかが、額に書き込まれるのだとアルバロンガは言いました。

 これらのことが起こるのは、ある本によって、黙示録の7つの封印が解かれたからです。この本とはどの本のことでしょうか。その本はどこにあるのでしょうか。

聖書のなかでは、「本」という言葉はごくわずかのところにしか出てきません。このことを見過ごしてはなりません。創世記5章1節には、「これは人間の系統の本である。神は人間を創造し、人間を神の似姿につくり。彼らを男と女に創造した」云々とあります。

「本」という言葉がふたたび現れるのは、第一福音書の第1章です。「これは、アブラハムの子、ダヴィデの子、イエス・キリストの誕生の本である。アブラハムはイサクを生み、イサクはヤコブを生み」云々と書かれています。ここでも、系譜が数え上げられています。長い系列をとおして流れてきたものが数え上げられています。

そして、「本」という表現はふたたび、ヨハネ黙示録のなかにあらわれます。子羊のみが7つの封印のある本を開くにふさわしい、という箇所です。「本」という言葉はいつも決まった意味で使われているのです。「土地台帳」という表現のほうが、本というかっての言葉の意味を残しています。

本という言葉は、何かが連続して記入されているものを指す言葉でした。綿々と相続されるような、所有権を記したものを指す言葉でした。伝えられていくものを明らかにする文書を指す言葉でした。
旧約聖書においては、本という言葉は、血をとおして受け継がれる系統を記録する文書を指しています。系図を記録する以外の意味では、本という言葉は使われていません。おなじく、第一福音書において、本という言葉は系図を記録したものを指すために使われています。
つまり、時間のなかでつづいて生じることの記録以外のものが、本という言葉で示されていることはありません。ほぼ、年代記とか、歴史とか言う意味で、本という言葉は使われたのです。

 いま人類のなかに置かれ、文化期から文化期へと人間の自我のなかに書き込まれ、人間の魂のなかに書き込まれ、万人の万人に対する戦いののちに封印を解かれるこの生命の本のことを、黙示録は言っているのです。この本のなかには、諸文化期が記入されています。(シュタイナーの黙示録の秘密より)

 この本は、既に存在しています。この不思議な物語を読んでいる、あなた自身で探して下さい。
トートが時代を指さし、シュタイナーがどんな本かを述べています。これがヒントです。

そして、もし三千年紀の始めまでに人間が霊的な生活に向かわないと、これらの出来事は現実のものとなりうるのです。そして、三千年紀は西暦2000年に始まります。もう待ったなしなのです。

これが、「万人の万人に対する戦い」と呼ばれた後の時代に表れてくるのです。
これは未来に起こると予言されている世界です。秘密中の秘密です。
でも、これもまだ通過点に過ぎません。



      

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