オーラのたび ドーレア夫妻(イングリとエドガー)作
吉田新一 訳
福音館書店


 このお話はノルウェーにお住まいのWAVEさんから紹介していただきました。
昨年、福音館書店より復刻絵本として再出版されたものです。

オーラは元気な男の子。
ある朝、氷の花の咲いている窓をのぞくと外にはオーロラのまぶしい光。
眠気が一気に吹き飛んで彼は外に飛び出してゆきます。
ここから、うさぎと一緒にそりに乗っての冒険が始まります。
結婚式の前夜祭に参加したり、サーメの人に会いに行ったり、漁村で魚を捕るお手伝いをしたり、
様々な経験をする度にノルウェーの伝統的な美しい情景も広がってゆきます。
人々が着ている鮮やかな民族衣装、独特な木製教会など,古き良きノルウェーを語ります。
素朴な優しさに包まれた数々の絵に心がホンワカしてくるのです。

・・そして季節は巡り春になって白夜の季節がやってきます。
オーラが毛わたガモの羽を集めながらがけの上まで登っていくと、そこには明るく輝く太陽がのぞいていました。
「みてごらん、うつくしい真夜中の太陽を!」
と子供たちがさけびます。

待ちに待った季節の到来なのです。
やがて、たくさんのお土産をかかえてオーラは家に帰ってゆきます。

 これといって何か事件が起こるわけでもなくトロルやノームが出てくるお話でもありません。
しかし穏やかな文章にその絵の持つ温かみと優しさが加わって叙情豊かな作品に仕上がっています。

作者ノルウェー生まれのイングリ女史はパリの美術学校で夫エドガーと知り合いました。
住むことはなかったようですが、二人とも彼女の故郷であるノルウェーをこよなく愛しその幼い頃の想い出
を本にしました。
読むほどに彼女の美しい故郷への愛情が伝わってくる絵本だと思います。

解説に
「ドーレア夫妻の絵は、対象を平板、簡潔に描き、近代絵画の約束である<遠近法>と<釣り合い>をやぶることがあります。
これは、家屋や家具などに施されている装飾的彫刻に見られるフォーク・アートと、
夫妻が学んだモダン・アートの描法をそれぞれ有効に生かしたものであり、こどもが物を見て描く素朴さに通じています。」
とあります。
難しいことはわかりませんけれど、確かに、暖かなその絵は子供の視点の世界のようであります。


ペールギュントのぼうけん 大石 真 文
鈴木 義治 絵 
学研 こども音楽館 第8巻


幼い頃、買ってもらった「こども音楽館」は、一曲につき、レコード、解説書と絵本がセットになっているものでした。
毎月本屋さんから取ってもらっていたので配達が大変楽しみでした。
こども受けする盛り上がりの部分を集めた曲なので、全編聴くと私など飽きてしまうあろう曲も最後まで楽しく聴ける企画だったのです。

先日、シリーズを実家の物置から見つけて我が家に引き取ってきました。
懐かしいのでその中で「ペールギュント」が一番気に入っていたのでスキャンしてみました。
なんだか北欧続きですね。

「ペールギュント」はご存じイプセンの戯曲です。
これにグリーグが曲を付けました。

ペールは常に空想にふける向こう見ずな青年です。
他人の結婚式から花嫁を奪って逃げますがすぐに捨てて気ままな旅に出てしまいます。
遠く遠くアラビアの方までさすらいます。
長い年月放浪を続けた末、ようやく故郷に戻った時、
そこには、老婆になってもずっとペールを待ち続けてくれた幼なじみのソルヴェイグの姿があったのです。
彼は彼女にみとられてこの世を去ってゆきます。

と子供向けはこんなストーリーになってました。
グリーグの音楽もドラマチックなお話の場面が浮かんでくるメリハリの利いた大変美しい曲ですよね。
子供だった私も本のページを開きながら、楽しく聴けた思い出があります。

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