お祭りといなりずし

 焼津に住んで10年になる。焼津も祭りの多い街だ。4月の「港祭り」。8月の「荒祭り」。10月にはあちこちの神社で毎週祭りがあって、花火がポンポンあがってるし。夏にもあちこちの商店街で「七夕祭り」が繰り広げられている。11月にはえびす講があって夜中までにぎわってるし、まだまだほかにもいっぱい。

 しかし私にとっての「祭り」は、生まれ育ったいなかの秋祭り。よその人が見ればさびしいって思うかもしれないけど、私にはふるさとの祭りが一番心躍る、祭りらしい祭りって思うのだ。
 浜松に住んでいたときも、浜松祭りは私にとっては遠くから眺めるだけのもので、よその祭りだった。ほかのところでも。静岡では何があったのかしら?と思うほどだ。4月はじめの静岡祭りは、ようやくここ2、3年見に行くようになったくらい。
 私の子供たちも、祭りはいなかの祭りが一番だと言うのだ。「焼津の人たちにも見せてあげたいね。」とサキは言う。
 屋台の引き回しと、独特の太鼓のリズム。笛の音(私の同級生が吹いている)。小さい頃から慣れ親しんだそれらの響きが、毎年その時期になると私を呼び寄せるようだ。

 ところで、お祭りの時にしか食べられない=お祭りのときに食べるもんだと思っている食べ物ってありますよね。
 私の場合、田舎の神社で振舞ってくれる「甘酒」。――甘酒は好きじゃないけど、これだけはおいしいって思う。そして、このときだけはおかわりもしてしまう。
 味噌おでん。――これは、近所のまんじゅう屋さん(「てんぐまんじゅう」が名物)が祭りの日だけ作って売るもので、こんにゃくとたまごだけなんだけど、それがおいしい。
 そして、母がつくるいなりずし。


母のいなりずし

 わりと甘めのいなりずしですが、私にとって「いなりずし」は、やはりこの母が作ってくれるいなりずしです。
 実はおととい、実家へ帰ったときにテーブルの上にあったいなりずしは、母が作ったものではなく、買ったものでした。このごろ血圧が高く、膝も痛くてたいへん、と言っていたので、やっぱ今年は作れなかったんだなと思いました。口に出して言うと、また無理して作ると思ったので言わなかったんですが…。

 きのう私は熱が出てしまって、朝早く喘息が出たこうへいに吸入をさせたあと、また寝てしまいました。そのまま起き上がることができずに昼過ぎまで寝てしまい、どーもヘンだと思って熱を計ったら38度。薬を飲んでまたゴロゴロ寝ちゃったわけです。
 夕方になって熱が下がり、やっと頭痛もとれて起きてきたら、なんと「いなりずし」がたくさん出来上がっていました!
 「今年はからだがえらいから作るのやめようと思ったけど、買ったの出しておいたら誰も食べないから。やっぱ買ったのじゃねえ。」と母。

 早速ひとつ口に入れる。う〜んこれだ、やっぱし! 厚めの油揚げに味がしみておいしい。形がまた独特です。真四角のおあげを4等分。一つ一つが□の形。それに甘めのすしめしをつめると、三角形になる。だから、売ってるのと全然違う。私はお店で買ういなりずしって、どーしてもほんもののいなりずしって思えないんです。…もちろんいなりずしなんですけど、私の中で「違う!」って声が聞こえる。…自分で母の味をまねして作ればいいのに、ついつい味付けした油揚げを買ってしまう。きつねうどんが好きなので、よく買っちゃうんです。
 母がたくさん作ってくれたいなりずし、焼津へ持って帰ってきました。あしたもいなりずしね。


  柿のカンジュース


 第一、柿なんてジュースにするか?
 実家へ帰る途中、休憩した場所に自販機がいっぱい並んでいて、その中に「柿」のジュースがあるのをお父さんが見つけたのです。
 「おい、柿のジュースがあったぞ!」
 柿が大好きなお父さんは、気になって仕方ないらしい。その時は「そんなの〜。」と言われて買うのをとどまったんですが、こちらへ帰ってくる途中もう一度立ち寄って、そのカンジュースを買った。「100円だった!」と2本も。
 「100円〜? 売れないから安いんじゃないの〜?」と、私と子供たち。
 「ほれ! 飲んでみ!」とお父さん。
 子供たちは一口飲んで「ゲッ…!」 私もなめてみた。(飲まなくてよかった。) そしてお父さん、ワクワクしながら一口飲んで、「べ〜〜!!」
 「やっぱ売れないから安くしたんだよ。」「2本も買っちゃって、ど〜すんの?」「岐阜名産だって。なんでこんなとこで売ってんだろ?」…森町も柿が有名ですからね。
 ひとしきり柿ジュースで盛り上がり、そこで時間をつぶしたおかげで、藤枝バイパス10時から無料ってのの恩恵に授かり、200円は取り戻せたのでした…。


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