私立幼稚園への補助金について


 県内各市の私立幼稚園に対する補助金の交付状況を比べてみると、三島市においては他市に比べ決して「充分」とは言えないとされています。下の表は、それぞれ2000年度の決算額による比較です。これは、市教育委員会事務局が市議会に提出した資料をもとにしたものです。
 三島市は、園児一人当たりに対し一律2万円の補助金に加え、運営費補助金や職員研修費補助金など総額17,469,295円でした。これを園児ひとりあたりにすると18,447円/人となりますが、県内21市平均31,453円/人を大きく下回ります。しかし、三島市においてこの年度は3歳児に対する一律2万円の補助は支給されていなかったという事情にもよります。これは市立園が3歳児保育を完全実施していなかったためです。ちなみに翌2001年度は30,864円/人(決算見込み)となります。
 各市の状況を下に表示しましたがこの表についての評価は実に難しいものがあります。たとえば、「○○市の園児ひとりあたりの補助金額は少ない」という実態があったとしても、その市に私立幼稚園がたくさんあるのか、少ないのかということでその意味合いは変わってきますし、公立園が多いか少ないかによっても評価のしかたは変わると思われます。
 この私立幼稚園に対する補助金について考えるとき、根本的にそもそもの私立幼稚園の意義や成り立ちについてから考えてみる必要があります。ややこしい話になりますが、どうかおつきあいください。ご意見・ご批判をお待ちしております。



私立幼稚園の存在意義

 教育は「公」による「公教育」と、学校法人による「私学教育」とに大別することができます。もちろん、広い意味からすればたとえば「学習塾」や「母親が子どもに絵本の読み聞かせをする」・・これも教育です。でも、「学校」(幼稚園も学校です)という場において「教育」という営みを展開するのは「公教育」と「私学教育」とに限られています。
 ここで「私立幼稚園」などの「私学教育」の成り立ちなどについて、考えてみたいと思います。私立幼稚園を含む「私立学校」は、国(文部科学省)が定めた基準に基づいて県知事が認可をする「学校法人」によってのみ、設置運営ができます。そして、その運営については法律で定められたその法人の資産(経営に必要な財産)や、収益事業による収益を運用するなどして「自己責任」の中で行っていくのが原則となります。
 これは、「私学教育」が「公教育」とは違った自由な建学の精神に基づいて繰り広げられるという私学の独自性というところからきています。「公教育」は広く誰に対しても教育への権利を保障していく普遍的な営みであることに対し、私学教育はそれとは違ってに独自に自らの教育理念を追及する営みなのです。たとえば、大学教育について言うなら、静岡大学(公教育)と慶応大学(私学教育)があり、それぞれ重要な役割を果たしています。大学教育をめぐる問題はいろいろあるとしても、慶応大学の社会的な貢献やその期待は大きいものがあるでしょう。幼稚園についても同様に、「私学」においては公教育にはない「音楽の専門教育」とか「英才教育」とか「人間教育」とか、いろいろあると思われますがそれぞれ特長のある「独自性」を追及する幼児教育としてきわめて重要だし、それが期待されます。
 子ども(その代弁者として保護者)は公立幼稚園にはない、このような私立幼稚園の意義や魅力を選んで通うこととなります。
 学校法人と自治体との関係は、法人の認可権限をもつ都道府県との関係の中で運営がされます。この場合、市や町の教育委員会は学校法人に対しいかなる法的権限ももっていません。私立幼稚園のあり方などを考える場合、関係行政機関は都道府県であって市や町ではないのです。この点も踏まえる必要性があります。



私立幼稚園に対する補助(助成)金のしくみ

 私学は、公立の「普遍的な教育権の保障」に対し、「独自性の追及」にその存在意義があります。運営費用は「法人の自己責任」とは言え、保護者の経済的負担はおのずから公立よりも大きくなりますので、その運営は公費によって助成される必要性があります。これが「私学振興」という考え方です。「私立学校振興助成法」という個別の法律に基づいて、公的に助成がされるしくみになっています。なお、この法律の主な目的は以下の2つです。
@私立学校の教育条件の維持向上
A児童・生徒の経済的負担の軽減
 そして、このことに基づき都道府県知事が学校法人に補助をするときには、国はこの知事に対しその一部を補助することになっています。(これを「間接補助」と言いますが)
 ですので、私立幼稚園に対しては、「児童の経済的負担の軽減」という目的を含め、都道府県が国の補助金と合わせ、補助をすることになっていますし(法第9条)、現に補助がされています。
 この仕組みこそが私立幼稚園に対する公費助成の柱となります。後に触れますが、市や町も私立幼稚園に補助金を出していますが、それとは意味合いを異にする根本的な、第一義的な助成制度なのです。
 ともすると、市や町から交付されている補助金だけをとりあげ、「多い少ない」の議論となりがちですが、それは「木を見て森を見ない」のに似ています。本来は、この第一義的な補助である県費+国費の補助金額が充分かどうかが最重要で、これをさらに厚く求めていくべきであり、市や町による助成は、制度上福次的なもの、あるいはそれ以下に過ぎないのです。このことがまず踏まえられる必要があります。
 ではその、市や町が交付している補助金について考えてみます。これは「公益上必要があると認められる場合、補助をすることができる」という地方自治法上の根拠に基づいて支給されます。(これも申請によりますが)たとえば、町内会の運営や福祉施設の建設や運営、国際交流協会、商工会議所、農協などに対する助成金など多種多様ですが、意味あいとすると、これらと同様なのです。私立幼稚園の運営や保護者の経済的負担の軽減を、この「公益上の必要性」に大きく依存をしていくことには限界性や難しさがあります。なぜなら、「公益上の必要性」というのはとても抽象的であり、その分対象範囲は広く、毎年多額の補助金総額に及び、これが自治体の財政を大きく圧迫しているので全体とすると削減しなければならないという課題があります。ある特定の補助金を厚くしようとすると他の「公益性」が満たせなくなる・・ということにもなります。こういう中で、何を優先していくのかについてもっと議論や市民的コンセンサスが必要なのです。




就園奨励費補助金を採用している市

 「私立幼稚園への補助金」と言っても、それは「園の運営などに関する補助金」と、「保護者の経済的負担を軽減する」ための補助金とに分けることができます。ここでは、「保護者の経済的負担を軽減するための補助金」を考えます。
 さきほど、「県が国補助を含め支出する私学振興助成法第9条に基づく補助金」と「各市や町が地方自治法に基づいて支出する補助金」とがあることを書きましたが、「就園奨励費補助金」というのは、「各市や町が地方自治法に基づいて支出する補助金」として支出されます。しかも、これには一定のルールがあって保護者の所得によって対象者が限定され、その支給額も異なります。このルールは国が定めたもので、保護者の所得階層によって支給額が決まられます。支給額の三分の一は国庫補助金が含まれます。残り三分の二はその自治体の負担となります。
 以下の表Aは、県内各市の私立幼稚園に対する補助金交付状況のうち、「就園奨励費」を採用している市の補助金交付状況です。補助金総額のうち、多くを占めるのが「保護者への補助金」ですがここに「就園奨励費」制度を採用している市です。

表A

私立園数
私立幼
園児総数
市からの
補助金額
総額
その内訳
私立
園児
一人
あたりの
補助額
備考
保護者への
補助
園運営費
補助
他の補助
(職員
研修費など)
沼津市
24
4,524
152,658,867
120,888,867
31,680,000
90,000
33,744

富士宮市
11
1,996
70,793,467
62,693,467
7,700,000
400,000
35,468

富士市
16
3,916
143,865,034
137,162,034
6,703,000
0
36,738

御殿場市
2
454
22,749,200
14,179,200
8,170,000
400,000
50,108

裾野市
3
327
17,762,517
11,510,517
6,252,000
0
54,320

静岡市
40
7,378
315,852,333
209,183,333
103,229,000
3,440,000
42,810

浜松市
48
11,684
445,688,867
350,790,867
91,298,000
3,600,000
38,145

清水市
16
2,996
99,423,035
82,273,035
13,950,000
3,200,000
33,185

島田市
5
1,388
12,795,133
5,990,133
6,805,000
0
9,218

磐田市
3
578
31,202,183
20,708,183
10,494,000
0
53,983

焼津市
13
2,423
45,052,767
25,251,767
19,516,000
285,000
18,594

掛川市
4
848
12,412,667
5,500,667
6,220,000
692,000
14,638

藤枝市
21
3,257
178,231,000
15,406,000
121,232,000
41,593,000
54,722

袋井市
1
205
9,290,100
5,490,100
3,800,000
0
45,318

天竜市
0
-
-
-
-
-

浜北市
1
638
9,785,313
9,285,313
500,000
0
15,337

湖西市
1
195
11,668,967
7,668,967
4,000,000
0
59,841


備考です
【保護者への補助について】
◎就園奨励費による補助対象外の保護者にも補助金を支給している市
富士市・御殿場市・裾野市
◎国の基準を下回る市独自の基準で補助金を支給している市
島田市・焼津市・掛川市・藤枝市
◎国の基準をもとに補助金を支給しているが、支給額は半額としている市
浜北市
【その他】
◎藤枝市は、この年度私立幼の建設費補助があったので、「職員・団体」への補助が多くなっている。



就園奨励費を採用していない市
 表Bは、三島市を含む就園奨励費を採用していない自治体の私立幼稚園への補助金交付の状況です。(保護者への補助の欄)就園奨励費は国基準に基づき交付額が決められ、国の補助金が支給額の三分の一含まれるのに対し、こちらは市の独自の補助で全額が市の一般財源です。
 三島市では過去において就園奨励費を採用していた時期がありましたが、補助金交付対象者が著しく減少したため、現在の「一律2万円/人の補助」に切り替えた経緯があります。

表B

私立園数
私立幼
園児総数
市からの
補助金額
総額
その内訳
私立
園児
一人
あたりの
補助額
備考
保護者への
補助
園運営費
補助
他の補助
(職員
研修費など)
三島市
6
947
17,469,295
11,320,000
3,000,000
3,149,295
18,447

熱海市
1
74
3,083,500
3,083,500
0
0
41,669

伊東市
2
213
900,000
0
450,000
450,000
4,225

下田市
0
-
-
-
-
-




近隣の町の状況

表Cは三島市近隣の町の状況です。長泉町は就園奨励費を採用しています。
表C

私立園数
私立幼
園児総数
町からの
補助金額
総額
その内訳
私立
園児
一人
あたりの
補助額
備考
保護者への
補助
園運営費
補助
他の補助
(職員
研修費など)
長泉町
1
288
10,348,417
8,558,417
1,790,000
0
35,932




私立園数
私立幼
園児総数
町からの
補助金額
総額
その内訳
私立
園児
一人
あたりの
補助額
備考
保護者への
補助
園運営費
補助
他の補助
(職員
研修費など)
清水町
0
-
-
-
-
-
-

函南町
0
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-
-
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