6月議会 一般質問の報告 |
小沢の里の現在 |
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かつては坂小学校の小沢分校。廃校になりキャンプ施設として活用後、 現在は発掘調査による出土物が保管されている。古い木造校舎だが、 静かな雰囲気と周辺の自然環境を愛する市民は多い。(現在立ち入り禁止) |
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「校舎」の中にはこのように土器などの発掘調査による埋蔵物が保管されてい る。 |
栗原一郎 小沢の里が、市民交流スペースや環境教育などの市民活動促進のために活用していくことを考えないか。現在の蔵文化財の保管庫としての機能は好ましくないのではないか。埋蔵物をもっと活用するため、保管庫は別に移すことが必要ではないか。 (本文はこちら) |
有尾教育部長 小沢の里の埋蔵文化財の保管状況についてまず説明したい。 埋蔵文化財は郷土の歴史や生活、文化を知るうえで非常に貴重なもの。三島市でも山中城や向山古墳群などいくつもの発掘調査によりいくつもの貴重な資料が出土している。埋蔵文化財は発掘の後、整理・分析・記録をして一定の手続きを経た後、譲与を受け保管される。現在、小沢の里のほか、中央町別館倉庫にも分散して保管している。 文化財の大きさは一定ではないが、保管箱を使って入れてある。大から小まで千差万別。数もバラつきがある。 収納量としては、タテ44cm、ヨコ60cm、深さ14cmの保管箱に換算して小沢の里には約1842箱保管している。中央町別館には960箱ある。 このような出土品の保管状況が適切かということであるが、小沢の里は坂小学校の分校跡地を箱根の里ができるまでの間、青少年健全育成の施設として活用後、平成4年に埋蔵文化財保管庫となり現在に至っている。保管庫としては建物が木造のため火災の心配があるほか、職員の作業の施設と離れているため整理作業もし難い。無人のため盗難やイタズラ等による文化財の損傷の恐れなどが懸念される。 そういった意味で必ずしも理想的な保管場所ではないと考えるが、出土品の保管場所に困っている状態なので、あそこに保管庫を置く以上はなんらかの維持管理をしなければならない。市としては定期的な巡回、点検については地元の小沢区のみなさんや元青年団員の協力で維持管理に努めているところである。 |
関野総務部長 仮に、現在保管されている埋蔵文化財が他の施設への移設が可能であることを前提に活用施策等を考えると、議員ご提案の自然環境を生かした施設としての活用も可能性として浮かんでくるのではないか。現存する建物は木造建築で旧坂小学校の小沢分校なので、それがかえって中高年の市民のみなさんに過ぎ去った時代の映画の1シーンを再現させたような郷愁を覚え、市民への開放を含めた保存と活用が求められるのかもしれません。 また、現地に立ちますと季節感豊かな自然に囲まれ心落ち着く憩いの場所としての雰囲気を醸し出している。 自然を生かした活用方法を考えるということであるが、案としては、環境教育の場、社会教育の場、農山村振興の場、等々としての活用が考えられる。 具体的には青少年の活用としては子どもたちのキャンプ施設、自然探索をする場合の宿泊施設や、農山村関係では里山づくり構想における農山村交流センターとして周辺整備とあわせた交流スペース、推定平安鎌倉古道の休憩所等があげられる。 しかしながら施設の活用にあたって、貸し出しや維持管理の方法、必要とされる管理経費、そして何よりも利用者の安全対策のための財政措置、管理運営主体など利用目的による問題点や課題が異なってくるので用途ごとに慎重に検討する必要がある。 特に、管理主体や運営方法については市民のご意見を取り入れながら進めていく、市政と市民の協働をテーマに検討していくこともひとつの方法と考える。 しかし、市民利用に門戸を開放するか否かについては埋蔵文化財が移設されることが大前提となることを理解していただきたい。 |
栗原一郎 可能性の問題として一定の方向が示された。 しかし、答弁のとおり埋蔵品をどうするか。というところに大きな課題があると、あらためて感じるところだ。言うまでもなく埋蔵物は発掘を行った結果としてだきt得られた貴重なものである。この問題を考えるうえで、まず、発掘ということについて考えてみたい。三島市では山中城、向山古墳群含め、いろんな発掘に取り組んできた。このことに大きな財源が投入されてきたという経緯がある。その金額については一定の把握をしているが、これについては当局からお答えいただきたい。 |
有尾教育部長 発掘については、開発行為を行う事業者、道路建設(県や国)などが行っており、事業者等の協力に基づき発掘に要する費用を負担している。発掘調査はかなり古くからやっているのですべては把握していないが、平成元年から平成16年度まで、約168件。これは事業者・国・県・市が行ったものも合計件数。費用としては事業者の直接負担もあり正確には把握し難いが、約10億3千万円。このうち、国県市が原因者となり負担したものは約7億5千100万円。 |
栗原一郎 たいへん大きな金額が費やされてきた。 このことについて論点はいろいろある。今回の質問においては2つの問題点を設定したい。ひとつは発掘のあり方。年を経るごとに費用が費やされ、そして埋蔵物は増えていく。そのあり方がどうなのか。 もうひとつはその発掘によって得られた貴重な出土品・土器の管理や利用のあり方。どう活用していくのいか。 ふたつの問題を提起したい。 さっそくだが、発掘そのものについて、今後どうしていくのか。発掘の法的根拠は文化財保護法。第99条「地方公共団体は(中略)埋蔵文化財について調査する必要があると認めるときは、埋蔵文化財を包蔵すると認められる土地の発掘を施行することができる」とある。「施行することができる」というのは任意規定である。確認したいがどうか。さらに、「調査する必要があると認める」とあるがその権限は誰に属するのか。 |
有尾教育部長 「することができる」というのは一般的には任意であると解釈できるが、一方では努力義務が求められていると考えている。なので、埋蔵文化財の包蔵地への開発については教育委員会で一定の事前調査の後発掘調査を行っている。 「必要性」については、埋蔵文化財の包蔵地について学芸員が昭和47、8年頃と思われるが市内の踏査などにより地図に示してある。該当地の開発が行われるについては試掘調査を行い、遺跡や出土品が出た場合、発掘の必要性があると認めている。 |
栗原一郎 すぐれて専門的な事柄なので学芸員の専門性に依拠することが大きいと思うが、権限が誰に属しているかと伺っている。地教行法からすればこの権限は教育長にあるのではないか。 これからの発掘について、このままやり続けるのか。現在までの発掘の到達状況などを踏まえ極めて限定的に行うとか、やや乱暴な言い方になるが、原則的に行わないなどの考え方もあり得るのではないか。 これからの発掘のあり方について教育委員会で議論していただきたいがどうか。 |
西島教育長 埋蔵文化財は一度失われてしまうと取り返すことができない。発掘をやめてしまうという判断はできない。今後については、地図上に示された箇所に開発行為がかかる場合は発掘をしていくものと考えている。 |
栗原一郎 どういう形でやっていくのかについて、バブル期の開発ラッシュが終わり、一定のメリハリをつけて考えていくべきではないかということである。この点について教育委員会で議論をしてほしいと重ねて申し上げたい。 先に進むが、管理と利用という点。現在の小沢の里での管理は必ずしも適切ではないと答弁された。具体的に伺いたい。文化庁も「もっと文化財を活用しなさい」「しっかりと保管をしなさい」と通知している。この通知で活用の形を例示している。 @博物館等での展示A学校での教材B住民の身近な施設での展示C学術的な資料としての利用、などである。これらはたとえばの話。もっと多様な活用があり得る。現状の利用の状況を資料としていただいている。一定の活用は図られていると伺えるもののもっと活用できはしまいか。学校での教材としての利用など。 教育長に伺いたい。埋蔵物は教材としてどのような評価をするか。また、山中城跡の発掘物を学校との連携の中で活用していきたい旨、過日答弁があったが具体的にはどのような形か。 |
西島教育長 小学校や中学校で貴重な歴史教材として活用が図れるとは思うが、ただ現品をそのまま持っていくか写真等で表すか、いろいろ考えられる。実際に出土品が「ここから出たよ」として扱うのと、単に写真とはまた意味が違うと思われる。破壊されて困るようなものは別だが、そうでないものについては貸し出しすること等は可能と考える。 ![]() |
栗原一郎 「学校に貸し出す」と考え示されているが、もう一歩踏み込んで、学校に置くという考えはないか。たとえば、その学校がある地域の埋蔵品については、その学校に置くなど。それでこそ活用がしやすいのでは。 |
有尾教育部長 いまのところ、その地域からの出土物をその学校に展示しているケースはない。展示については棚などそれなりの設備が必要。管理上の問題もある。常にそこにあることで、かえって目にとまらなくなる恐れもある。なので、社会科の授業等でそのときに貸し出しをして手に触れて歴史を学んでもらうのもひとつではないか。 |
栗原一郎 教材に関する基準がある。学習指導要領に沿って、小学校、中学校、それぞれ備えるべき教材が示されている。これが2001年、改定された。土器に関しては「模型」。土器の模型は学校に備えなければならない教材であった。各校に1セットあるはず。ならば「模型」ではなく、本物のほうがより良いのではないか。 |
西島教育長 教材は、標準的な出土品が模型になっているものである。それらをもとにしながら郷土から出たものについて、比べてみたりする、実際はこれが本物だよという形で市内から出土したものをこどもたちに提供することはできると思う。 ![]() |
栗原一郎 ですので、学校に置いて教材としてより活用していくことを重ねて求めておきたい。ちなみに学校の教室の活用の状況の資料をいただいた。その資料によればであるが「余裕教室」は存在していない。普通教室、特別教室以外の教室が「その他」として区分されている。資料室や教材室などである。そこに置くことは可能ではないか。それを検討してほしい。 権限的に言って教育委員会に伺ってきたが、保管の問題を考えるに市長の権限分野にも及ぶ。全庁的に考えていかねばならない問題だ。小池市長のリーダーシップを求めたいと思うが、市長はどう考えるか。 |
小池市長 小沢の里、質問の提示があってすぐに小沢の里に行ってきた。管理を小沢の区のかたが にお願いしている。よく管理していただいている。自然豊かですばらしい。古い建物で歴史の積み重なったもの。非常に良いと思うが埋蔵文化財がいっぱい入っている。これをなんとかしなければ利活用できないと思っている。 議員ご指摘のように文化財をあそこに置いておいてももったいない、活用するにしても距離的にも遠いとの指摘だが、私もそう思う。ただし、貴重な埋蔵文化財なので破壊されてはなにもならない。学校への分配については管理が十分できるかどうかということにもなる。十分検討してみたい。 関係課の課長を中心として庁内の検討部会をつくり小沢の里全体の利活用、埋蔵文化財のあり方含め可能性の調査に入りたい。 |