ZEROから始まる物語 <後編>


       前編を読んでからお楽しみ下さい♪



私は、また歩きだした。
もう、空が紅く染まる時間だ。
暗くなる前に、家に帰らなければ。
帰るといっても、妹の体を家に送るだけで、
そこは、私が帰る場所ではない。
私がいるのは、さびしい、あの場所だから・・。

 「なぁ、そこの君」

ふと、声をかけられた。
声をかけて来たのは、4人組の男達だ。
高校生くらいで、見るからに不良って感じの人達だ。
見かけだけで人を判断するのは、良くないのだろうけど。
他の人に声をかけたのかと思ったが、他に人は見あたらないので、
どうやら私に用があるようだ。

 「・・何か、ご用ですか?」

 「君、可愛いね〜!一緒に遊ばない?」

・・俗にいうナンパというやつだろうか?
ナンパというのをよく知らないので、そうなのかは分からないが。

 「どうかなぁ?」

 「どうして私があなた達と遊ばないといけないんですか?」

 「楽しいからさ。楽しいものは、みんなで分かち合いたいとは思わないかい?」

 「それに、君みたいな可愛い娘と俺達は遊びたいのさ」

 「楽しさを分かち合いたいなら、あなた達で分かち合って下さい」

 「だからさぁ〜。君と分かち合いたいんだってさ〜」

 「嫌です」

 「そんな事言わずにさぁ〜。遊ぼうよ」

男の1人が私の手を(正確には妹の手を)掴んできた。

 「な、行こうぜ」

 「放して下さい」

この人達には、否定しても分からないのだろうか?
嫌だと言っているのに・・。
実に不快な気持ちになる。

 「おい、止めないか。その娘、嫌がっているじゃないか」

後ろから、どこかで聞いたような声がした、振り返って見ると・・。

 「あ?誰だおまえ?」

さっきぶつかった男の人が立っていた。

 「誰かって?
   俺は見城って言うんだけどな。
   ・・しかし、嫌がる娘を無理に連れて行こうとするのは、感心できないな」

 「なんだと!?てめぇには関係ないだろうが!」

 「関係は無いけどね。でもその娘も、君達に付き合う義理はないだろう?」

 「・・どうやら、痛い目みないと分からないらしいな」

男達は、全員であの人を袋叩きにするつもりだ。
確かにあの人は強そうだが、4人相手ではさすがに無理があるだろう。

 「おいおい、4対1じゃあ、分が悪すぎるだろ?」

 「今度は誰だ!?」

今度は、ゲームセンターにいた、眼が髪の毛のせいで見えない長髪の男が立っていた。

 「なんだよ?てめぇも俺達に文句あるのか!?」

 「別に文句はないが、その娘は知り合いでね。
   それに、強引過ぎるのも感心しないな」

 「ふざけやがって!こっちは4人いるんだ!2人共ボコボコにしてやる!!」

・・数分後。

 「お・・覚えてやがれ!!」

ボコボコにされたのは、4人組の方だった。
さらに2人共、かすり傷一つ負っていない。

 「あ〜あ。捨て台詞まで3流だな」

長髪の男が言う。

 「そうだな」

大柄な男がそう答える。

 「あんた、強いな」

 「おまえもな」

そして・・、

 「こらぁーー!!貴様等!!」

 「げっ!!警察だ!!
   警察が来ると後が面倒だよな〜。弥生もうるさいだろうし・・。
   ・・おい、逃げるぞ!!」

 「別に悪い事したわけじゃないんだから、逃げなくもいいじゃないか?」

 「いいから逃げるんだよ!
   ・・ほらおまえも!」

そう言って、長髪の男は私の腕を掴んで走り出した。
大柄な男も、仕方無いと言った表情で走り出した。
手を掴まれているので、私も走るしかなかった。
・・不思議と、不快な気持ちではなかった。
こうして、私達3人は、そこから逃げ出した。

   * * * *

どれくらい、走っただろうか?
どこをどう走ったのかは分からない。
走るのは久しぶりだから、疲れた。

 「ふう〜。まあ、ここまで来れば大丈夫かな?」

長髪の男が走りながらそう言った

 「じゃあ、もう止まってもいいですか?」

 「ああ、もう大丈夫だろ・・!!」

大柄な男の人がそう言いかけた瞬間、私達は、大きくバランスを崩し・・。

バッシャー――――ンッッ!!

転んだ。それも全員。
なかなかの確率の偶然だ。

自分のいる場所を見ると、そこは噴水だった。
この噴水は、浅く広がっている。
夏には、ここで水遊びをしている子供もいるくらいだ。
どうやら、噴水の周りで転んで、噴水に転がって来てしまったようだ。

 「冷て〜〜!!」

・・どうやら、全員水浸しになったようだ。

2人を見ると、やっぱり水浸しになっていた。
なんか、ちょっと情けない光景だ。
・・多分、私も情けない光景の1つなのだろうが。

 「・・ふっ」
 「くっくっく・・」
 「・・ふふ」

 「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

全員が笑い出した。
なぜ笑っているのか、分からない。
ただ、可笑しかったからなのかも知れない。
・・笑う事なんて、全然なかったのに・・。
でも今はただ・・、可笑しかった。

 

 「いや〜。散々な目に会ったな」

長髪の男は笑いながらそう言った。

 「・・2人共、どうして・・助けてくれたんですか?」

私はずっと思っていた疑問を訊いてみた。

 「ん?ああ、おまえのお陰で二階堂から逃げられたからな。
   ちょっとしたお礼の気持ちさ」

なるほど、あの二階堂とか言ううるさい人が、ハイスコアを出そうと
必死になっている時に、逃げ出してきたらしい。

 「さっき、知り合いと言っていましたが?」

 「言葉の綾ってやつさ、知っている事には変わりはないしな」

 「・・あなたは?」

もう一人の、確か見城という名の男に訊いてみた。

 「俺は、ぶつかってしまった娘が嫌がっている所を偶々見かけたから。それだけさ」

 「・・そう言えば、今何時だ?」

思い出したかのように、長髪の男が訊いてきた。

 「時間?今は7時くらいだが・・?」

 「なに!?やばい、弥生を待たせたままだ!!
   ・・じゃあ、俺は急ぐから、じゃあな!」

そう言って、長髪の男は走って行った。
あれだけ走ってまだあんなスピードで走れるなんて・・すごい人だ。

 「さて・・、俺もそろそろ帰らないと。
   君は、大丈夫?
   もう暗くなったし、良ければ送っていくけど?」

 「いえ、大丈夫です」

 「そう。なら良かった」

 「・・あの・・見城・・さん」

 「ん?」

 「ありがとう・・」

 「気にしなくていいさ。
   俺も久しぶりに思いっきり笑えたから、おあいこさ。
   さっきみたいに、な」

私の感謝の言葉に、見城さんは優しい眼で、そう答えてくれた。

 「・・はい」

 「じゃあ、俺はもう行くけど、気を付けてな」

 「はい・・さようなら」

 「ああ、さようなら。風邪、引かないようにな」

そう言って、見城さんは濡れた服を着たまま、闇へと消えていった・・。

 

 「・・思いっきり笑えた・・か」

私も・・、そうかも知れない。
だから・・、『おあいこ』・・か。

 「ふふ・・」

なぜか、私はまた可笑しくなった。
今日は、とても楽しい1日だった。
心から、そう言える・・。
きっと、いつまでも忘れられない、良い思い出になるだろう・・。

・・次の日、トアは風邪をひいて寝込んでしまったけど。

 

・・こうして、3人はそれぞれまったく違う道を歩き出した。
もはや会う事も無いくらい、違う道へ・・。
しかし、それぞれの道はある1つの場所の場所を目指した道だった。
『EVE』という、大きな道標へと続く・・・・。

END



四方山話(言い訳)
クライドが書く小説、第二弾です!

今回は表現の仕方、
及びZEROのネタバレになってしまう関係上、登場人物の紹介が少ないです。
あと、ZEROの時代になにしてたか分からないという理由もありますが(汗)

前から、アルカの小説が書きたい!!そして、ZERO時代の見城が書きたい!!
と、思っていたのですが、それはとても難しく、先送りにしていました。
しかーし!ある日チャットでお話している時に、なぜか閃き、書いてみたらこうなってしまいました。
この小説で一番書きたかったのは、『アルカの笑顔』、です。
しかし、アルカを笑わすのは無茶苦茶難しく、どうしようか悩んだ末にこうなりました。

これは、チャットで話題になった。
「人の感情は難しいが、いざという時の行動は単純だなぁ・・」
という私の発言が元になっています。
あのアルカが心から笑っていられるのは、単純に可笑しかったから、だと思うんで。
私がアルカを書くと、すこし屈折したアルカになってしまうのが、難点でしたが・・(笑)

そして、小次郎が前にアルカ(トア)に会っていたら、
初めて会ったときに思い出しているはずだ!っていうつっこみがきそうですが、
小次郎は『忘れてた』って事にしておいて下さい。
ちょっと無茶ですが、ZEROの時は忘れていて、
その後、「ああ、そういえば前に会ってたっけな・・」
と、そして「あの後、弥生を怒らせてしまって大変だったなぁ・・」と
ふと思い出す事もあったって事で、許して下さい(汗)
そして見城は小次郎との面識は無いし、
小次郎も、名前は知っていても
顔は知らないはずですから大丈夫でしょう(ほんとか?)

ま、愛ゆえにって事で許して!お願い!!
愛ゆえに、私はホームページ製作を後回しにして書いてしまったくらいですから・・(汗)



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