街中に蘇った清流 源兵衛川を歩く
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└ 可愛らしいネコの看板 |
楽寿園正門から、商店街通りを三島駅とは
反対方向に50メートルほど下ると、ネコの
看板が目を引くモリカワ鞄店の前に出ます。
モリカワ鞄店の角を右折し、ちょっと洒落た
小道を100メートルも歩けば、源兵衛川の
スタート地点、いづみ橋に到着します。
このまま通り過ぎて直進すると、蓮沼川の
モニュメントを見ながら、三島広小路駅へと
辿ることもできますが、今回は清流源兵衛川
沿いの遊歩道を、このいづみ橋から下流の
中郷温水池まで歩いてみたいと思います。 |
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└ スタート地点の「いづみ橋」 |

└ 街の清流「源兵衛川」 |
この源兵衛川は、楽寿園小浜池を水源とし、最下流に位置する温水池までの約1.5キロ続く
美しい清流です。
上流のいづみ橋から下流の温水池までは、四季折々の趣を感じることの出来る遊歩道が
整備されていて、地元の人たちの絶好の散歩道にもなっています。
お年寄りの夫婦が景色を楽しみながら散歩する姿を、この遊歩道沿いでは多く見かける
ことから、誰にでも安心してオススメできる散策コースといえそうです。 |
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さっそく、いづみ橋から遊歩道を中郷温水池
に向かって歩き始めることにしました。
歩き始めてすぐの小さな木製の橋を渡ると、
川に突き出たように設置された、「川端」が
目に留まります。
川端と言われても、よく解らない人も多いとは
思うのですが、いわゆる昔の洗濯場のことで、
かつて川沿いに暮らす住民は、一家に一台
この川端を設置して、水汲みから洗濯、夏場
に腐りやすいものを、小舟に乗せて流して置く
冷蔵庫代わりなど、日常生活に必要なことの
多くを、この川端で済ませていました。
また、共同の川端も存在し、川から離れた
住民が皆で集り、家事をしながら会話をする
社交の場としてや、子供たちの遊び場にも
なっていたことから、昔の人にとって川端は
日常生活の中で、無くてはならないもので
あったことは言うまでもありません。
現在ある川端は、昔を偲んで復元された物
ですが、今も子供たちの遊び場としては、
本来の役目を果たしているようでした。
このいづみ橋下の川端から、ひとつ先にある
広瀬橋の水辺の公園までは、川の中を歩く
遊歩道が続いています。
今回は増水時期に当たり、この区間が水没
していたために、川沿いの住宅街を抜けて
隣の広瀬橋まで行くことにしました。
広瀬橋には、静かに流れる川面を見ながら
ゆっくりと休むことのできる「水辺の公園」が
あります。 |

└ 昔の生活をしのぶ川端 |

└ 広瀬橋にある水辺の公園 |
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└ 三石神社の「時の鐘」 |
広瀬橋から次のポイントである三石神社の
時の鐘までは、一度遊歩道が途切れるため、
河川左側の繁華街を抜け、旧東海道へと
出る必要があります。
5分ほど歩けば抜けられますので、それほど
長い距離ではありません。
旧東海道に出たら、安全な場所で対面に渡り
三島広小路駅方向に数十メートルほど歩くと、
広小路バス停の前に出ます。
この辺りは分かりにくい箇所がありますので、
「せせらぎコース」と書かれた道標に沿って
歩くとよいでしょう。
源兵衛川は、広小路バス停のすぐ下から
中郷温水池方面に向かって流れています。 |
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└ 川の中を歩く遊歩道 |

└ 時の鐘橋をくぐる |

└ 川辺で見つけた小さな秋 |

└ のんびりと泳ぐアヒルの親子 |
広小路バス停付近には、老舗のうなぎ屋があるらしく、うなぎを焼く香ばしい匂いが辺り一面に
漂っていました。
さて、再び川沿いを歩き始めると、まもなく時の鐘(三石神社)の前に出ます。
この鐘は江戸の昔、宿場町に暮らす人々に時を告げるという重要な役割を果たしていました。
水辺の遊歩道は、三石神社の小さな祠の裏手から下流側へとさらに続いています。
板張の遊歩道を、せせらぎを聞きながら歩いていると、時折カワセミなどの珍しい野鳥たちに
出会うことも多々あります。
流域に生息する代表的なものとしては、カワセミ・コサギ・メジロ・アオジ・ヒヨドリ・スズメなどの
野鳥類の他に、サワガニ・ホトケドジョウ・エビモなどの水中生物やハクロトンボをはじめとする
水辺の昆虫たちも季節ごとに姿を見せてくれます。
こんなところにも源兵衛川は、その自然の豊かさを身近に感じさせてくれます。 |
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富士の湧き水を満々と湛える清流源兵衛川、
しかしながらこの清い流れも、渇水の危機に
直面していた時期がありました。
かつて、三島の人々の生活を潤した大切な
湧き水も、昭和30年代後半から伸び始めた
経済成長(高度成長期)に伴い、三島に進出
してきた企業による大量の地下水汲み上げや
人口増加による飲料水への供給拡大などが
主な原因で水量が激減し、この源兵衛川も
一時期は水の無い状態が続きました。
ところが、平成2年(1990年)に国の政策で
行なわれた源兵衛川水環境整備事業により、
公園の設置や遊歩道の整備、また企業が
冷却のために使用した地下水を流してもらう
協力も得て、昔のような美しい環境を取り戻す
ことに成功しました。 |

└ 下源兵衛橋にあるお洒落なテラス |
さらに、市民による「源兵衛川愛する会」の発足により、定期的な川の清掃やホタルの
幼虫放流活動により、現在の美しい流れは維持され続けています。 |
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└ 遊歩道沿いの小さなベンチ |
■ 源兵衛川のホタル
昭和30年代までは、この源兵衛川流域にも
多くのゲンジボタルが舞っていました。
しかしながら、昭和30年代後半から始まった
水量減少により、1年の半分は川の水が無い
状態となったことから、流域のホタルも全滅の
一途を辿ってしまいました。
ところが、昭和60年から三島青年会議所が
楽寿園で開催したホタル祭りをきっかけに、
源兵衛川にホタルを呼び戻す機運が高まり、
平成3年には市民による「三島ホタルの会」が
発足、ホタル幼虫の飼育が始まりました。
源兵衛川にホタルが帰って来たのは、河川
環境整備が完了した2年後の、平成6年4月
29日のことで、全国では最も早いホタルの
発生が確認されました。
それ以後、現在に至るまで、この流域では
5月下旬になると、「繁華街をホタルが舞う」
という珍しい現象を見ることができます。 |
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└ せせらぎを聞きながら・・・ |

└ 水の苑緑地 |
三石神社から水辺の遊歩道を歩くこと10分ほどで「水の苑緑地」という公園に到着します。
この水の苑緑地は、源兵衛川のちょうど中間地点に位置し、川の水を活かした池や散歩道、
ベンチや水飲み場、水上トイレも設置されているやすらぎの公園です。
これからの歩きに備えて、ここで少し休憩をとることにしました。 |
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└ 中郷用水記念碑 |

└ 春には満開になる桜並木 |
水の苑緑地を出発し、再び水辺の遊歩道を
歩くと、川沿いに桜並木が見えてきます。
この桜並木、距離的にはそれほど長いもの
ではありませんが、春の満開になった頃に
来れば、きっと美しい風景を心の中に残して
くれることでしょう。
この川は、四季折々に違った表情を見せて
くれそうな、そんな予感もさせてくれます。
桜並木を抜けて、個性的に飾り付けられた
幾つもの小さな橋を横目で見ながら、さらに
足を進めると、一本松バス停に出ます。 |
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そこから、田園風景の中を流れる川沿いの
田舎道をしばらく歩くと、中郷用水記念碑に
着きました。
川沿いの小径を、さらに源兵衛川に掛かる
国道1号の温水橋まで行けば、温水池は
もう目と鼻の先にあります。
途中、学校帰りの学生さんとすれ違いながら
石造りの橋を渡り、並木通りを2分も歩けば、
源兵衛川最下流にある中郷温水池の畔に、
無事到着することが出来ました。 |

└ 温水橋から見る温水池方面 |
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└ ちょっと異国な雰囲気が漂う畔 |

└ 畔にあるお洒落な休憩舎 |

└ 温水池を泳ぐカモの群れ |

└ 広々とした中郷温水池 |
源兵衛川は、富士の湧き水を利用して水田に水を供給するために引かれた農業用水ですが、
最も下流域に位置するこの温水池は、周囲に生活する動植物のためのより良い環境を整える
目的で造られた灌漑(かんがい)用の貯水池です。
静かな池からは、恵みの源である富士山を正面に眺め、畔には歩き疲れた体を休めるための
休憩舎やオープンデッキ風のお洒落なレストランもあり、温水池を眺めながらの食事やお茶も
楽しめます。
また、池を一周することができる遊歩道も整備されていて、夕方になると学校帰りの学生や
ウォーキングをする人たちの憩いの場にもなっています。
畔のベンチに腰を下ろして、高々とそびえる富士山やのんびりと泳ぐカモの群れを見ていると
仕事などで蓄積されたストレスが、す〜っと抜けていくような感じがしました。
さて、すっかり日も西に傾き、富士の稜線も赤く染まり始めたので家路に着くことにしました。
このまま、来た道を三島駅まで戻っても良いのですが、途中通り過ぎた一本松バス停から
三島駅まで、市内循環のワンコインバス「せせらぎ号」が運行していますので、そちらを利用
するのが便利です。
また、三島散策の際には、三島駅の観光協会総合案内所で配布されている「散策マップ」の
使用をオススメします。
散策マップ(せせらぎMAP)は、三島市観光協会HPからもダウンロード可能です。
三嶋大社から白滝公園、そして楽寿園や源兵衛川を巡りこの温水池までの今回の散策、
本当に歩いてみて良かったと思いました。
実は、三島市はわたくしの地元でもあるのですが、こうして観光客の中に入り歩いてみると
水があり、森があり、人も穏やかな、本当に素敵な街だなという印象を改めて受けました。
自然と文化、そして歴史ある宿場町三島へ、皆様もぜひ一度お越し下さいね。^^
次のページでは、後日訪れた隣町の清水町にある柿田川湧水群を紹介したいと思います。
お時間が許す限りどうぞお付き合いください。 |
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