第三章

 一

 総統暦一一一年四月一一日
 一九時二六分
 ランツェスガーテン

 彼女は崖を登っていた。
 腕と足を動かすたびに、背嚢がわずかに揺れる。隠密行動を行うためには静粛性が重要であるため、揺れても音が出づらいような詰め方をしてはいるが、それでも多少の音は出る。彼女は今、小銃を肩に掛け、背嚢に短機関銃と対戦車ロケット砲を突き刺しているのだから。
 彼女は崖を登っていた。
 何百メートルも連なる険しい岩肌に、まるで虫のように張り付いて。道具も使わずに、平らな道を歩くように軽やかに。
 指の先端が岩に突き入れられる。比喩ではない。ハーケンのように、指が岩に突き刺さるのだ。そしてその指を支点として、体がふわりと持ち上げられる。ほんの一瞬で腕が縮む。それに合わせて足も上げ、体全体を持ち上げる。そして足場を確保して、また腕を上に伸ばす。岩に指を突き刺す。
 彼女の息は乱れていなかった。
 ……アースメギン・ウイルス活性化率二十パーセント。まあ、このくらいだろうか。
 彼女は声に出さず独白していた。自分の肉体状況を分析していた。彼女が「兵器」だった頃から、「常に自分の状態を冷静に観察し分析しろ」と教えられ続けてきたからだ。
 おかしなものだな……
 こんなに、こんなに嫌だというのに、あの地の底で叩きこまれた知識が、教育が、訓練が嫌でたまらないというのに……それが与えてくれた習慣はなくなっていない。そしてその習慣だけが、私を生かしておいてくれる。
 さらに体を持ち上げる。
 あと一回その動作を繰り返すだけで、崖は終わる。とにかくにも平らな場所へ、這い上がることができる。
 と、その瞬間、彼女は感知した。
 山と山の間を抜ける激しい風が、巨人の咆哮にも似た唸りを生んでいる。だから人の足音などまず聞き取れないが、それでも彼女には感じることができた。
 誰か来る。軍用ブーツが乾いた地面を踏みしめる音。外套の衣擦れ。そして骨格がきしむ音、関節がこすれる音、心音、呼吸音。
 すべての情報が、誰かの接近を告げていた。
 その「誰か」は、素早い動きで崖から乗り出し、銃口を下に向けた。Stg九〇突撃銃。ドイツ製らしからぬ曲線的なデザインの、最新型ライフルだ。
 「誰か」は、兵士だった。
 白い冬季用外套をまとった若い兵士。フリッツヘルメットの下には青い眼。そう、分厚い雲に覆われた空には星一つなかったが、彼女にはそれをはっきり認識することができた。
 わかったことは他にもある。その兵士は高い鼻と広い額をもっていた。典型的な北欧系の顔立ち。高い人種区分を与えられるだろう顔。
 その顔には一切の表情が浮かんでいなかった。意外な場所からの侵入者に、驚きも当惑もしていない。侵入者が若い女であることにも顔色一つ変えていない。緊張も、怒りも悲しみもその白い顔には表れていない。
 当然だった。
 彼はアインヘリヤル、神々の戦いのために選ばれた戦士……戦闘用に改造された人間なのだから。驚きやとまどいといった戦闘の邪魔になるものは全て取り払われている。
 アインヘリヤルが、動いた。下に向けた銃身を安定させ、正確に彼女を指向する。そして引き金に力をかける。
 それは凄まじいばかりの早さだった。崖にはりついている彼女を発見してから、狙いをさだめて撃つまで〇.二秒。どれほど訓練した兵士でもその倍はかかる。人間なら。
 しかし、彼の銃から弾丸が吐き出されることはついになかった。
 彼女はそれ以上に早かったから。
 しょせんは元は人間であるにすぎない従来型のアインヘリヤルが到底不可能な速度で、彼女は突撃銃を上に向けていたから。片手だけで、その銃身はがっちりと固定されている。
 所要時間は〇.〇三秒。彼が引き金を絞る一瞬前、その指の筋肉に信号が流れ始めたあたりで、彼女は発砲したのだ。
 銃弾は、わずか二メートルほどの距離を超音速で駆け抜けた。彼女の使っている銃はAK九六突撃銃。AK七四と西暦で呼ばれることもある。ロシア陸軍が使っている銃だ。Stg九〇に比べれば古めかしい銃だが、近距離では絶大な威力を発揮する。
 一秒の何百分の一かの時間が過ぎた。銃弾はアインヘリヤルの眉間に突き刺さった。頭蓋骨に奇麗な丸い穴が開く。弾丸は衝撃波のベールをまとい、脳を破砕してかきわけながら後方に突き進む。さらにわずかな時間の後、弾丸は後頭部を突き破って、天高く飛翔していった。
 彼女は身をかわした。次の瞬間、生命を失ったアインヘリヤルが降ってくる。
 ……まずい。
 第一世代は意外に優れている。上がるまでは気づかれないつもりだったのに。これで敵は異常を察しただろう。
 気づかれた以上、もう遠慮はいらないな。
 そう判断した彼女は、片手の瞬発力を極限までふりしぼった。彼女の体が宙に浮く。次の瞬間、彼女は崖の上に立っていた。片腕一本だけで跳躍したのだ。
 そして、AK九六を腰だめに構えたまま走り出した。むきだしの頭が冷たいを風を浴びる。銀色の、比較的短い髪が揺れる。
 人間の何十倍もの脚力は、驚異的な速度を約束してくれた。時速五十キロを超えた。六十キロを超えた。百キロ近い速度になった。それだけの高速で、彼女は崖に沿って走っていた。
 行く手に、人影。
 先ほどと同じ外套姿。
 立ち止まることなく彼女は撃った。狙い通り、頭を撃ち抜かれて標的は倒れた。
 視界の隅に、飛来する銃弾をとらえる。
 アースメギン・ウイルス活性化率上昇。神経伝達速度、百倍に加速!
 彼女は自分自身にそう命令を発した。彼女の体内に満ち溢れているウイルスが、擬似的な不死を与えているものが活動を開始する。脳内の神経を伝わる信号が、飛躍的にその速度を増す。
 人間の神経はコンピュータの回路と異なり、光の速さで信号を伝えることはできない。ナトリウム・イオンの濃度変化という形で、わずか秒速百メートルという低速で信号を送れるに過ぎないのだ。だが彼女は、ごく短時間ならその速度を加速できる。
 時間が凍結した。
 そうとしか見えない。思考速度が百倍に加速されたのだ。今の彼女にとって迫り来る銃弾は、時速三十キロ程度の速度に過ぎない。
 体をひねってよける。
 射撃は、この敷地の中央にそびえる館、ランツェスガーテンの尖塔から浴びせられた。 そうか、あれは見張り塔か。
 彼女は時速百キロで疾走を続けながら、背中から対戦車ロケット砲を引き抜いた。安全装置を解除、尖塔に向かって、無造作に撃つ。
 ろくに狙いをつけていないように見えたのだが、ロケット弾は炎を噴いて飛んでいき、正確に尖塔を直撃した。
 もう彼女は、そちらの方を向いていない。
 敵はいくらでもいるのだから。
 早く来てくれ。シュヴェルト。
 彼女は仲間の暗号名を呼んでいた。
 シュヴェルト。早く来て。
 私が囮になっている間に。
 いくらなんでも一対四十では、そう長く保ちそうにないから。
 それまでは、彼が部下をひきつれて来てくれるまでは、倒れるわけにはいかない。
 そう強く決意する。
 だが……心のどこかには、こんな思いもあった。
 ……これで罪は消えるだろうか?
 ……私はあの兵士たちと同じ。アインヘリヤル。ナチスが造り出した「生体兵器」。人間ではない。いや、もっとたちの悪い存在。連中は普通の人間を手術しただけ。私は最初から人間ではない。
 私は遠い昔に誓った。たった三年前なのに、もう何十年も昔のように思えるあの日、誓ってしまったのだ。「私はアーデルハイド・シュタインローゼ。私は聖戦のために造られた神の兵士。私の目的はアインザッツ」と。

 二

 総統暦一〇八年(西暦一九九六年)
 一月六日
 地底都市「スヴァルトアールヴハイム」
 第四研究所「ヴァルハラ」

 脳髄に、痺れるような衝撃が走った。
 それが彼女の最初の記憶だった。
 眼を開く。急激に意識が覚醒する。自分がどんな状況に置かれているのか、五感のすべてを使って克明に知ることが出来る。生まれたばかりだというのに。
 彼女は裸で、ガラス製容器の中に浮かんでいた。これが人工生命体の培養装置であるということも、その装置と自分の脳が「接続」されているということも理解していた。
 ガラス容器の向こうでかたずを呑んで見守っている白衣の一団が、「闇妖精(スヴァルトアールヴ)」と呼ばれる科学者・技術者たちであることも知っていた。
 ゴボゴボ、ゴボゴボという音。この音が、培養槽から液体を抜いている音であることも、すぐに気づいた。いや違う、これらの知識は「知った」ものではない。「最初から知っていた」のだ。頭につながっている幾本もの生体ケーブルによって、脳に直接注入された知識。それだけ多くのことを知っている彼女なのに、全裸だからどうだとか、男達に囲まれているからどうだとか、そんなことには全く頭が回らない。彼女は兵器であり、兵器に羞恥心は無用なのだ。
 やがて液体はすべて抜け、ただ彼女だけが培養槽に転がっている状態となった。
 彼女を取り囲んでいるスヴァルトアールヴたちの一人が口を開いた。
「……おはよう、アーデルハイド」
 アーデルハイド……わかる、それは自分の名前だ。
「あーでる……わたしはあーでるはいど……」
 自分の唇が動き、言葉を紡ぎだした。
 自分の名前をつぶやくこと……それが、彼女が生涯最初に行ったことだった。
「そうだ、アーデルハイド・シュタインローゼ。栄光ある『第二世代型アインヘリヤル』の〇〇一号、それが君だ」
「あいん……へりやる」
「そう、君はアインヘリヤルだ。今の第一世代なんかとは違う、真のアインヘリヤル、神の戦士だ」
「かみの……せんし」
「そう、神の戦士だ。さあ答えてごらんアーデルハイド・シュタインローゼ。君の生まれてきた目的は何だ?」
「アインザッツ」
 反射的に答えていた。同時に、その言葉の意味が脳裏に浮かび上がる。辞書が脳内に収納されているかのように。アインザッツ=特殊行動。ドイツの敵、民族反逆者たちを粛正・浄化すること。正義の行い。
「君がやるべきこととは?」
「アインザッツ!」
「なにがしたい?」
「アインザッツ!」
「そう、それでいい……」
「アインザッツ!」
「もういい」
「アインザッツ!」
 アーデルハイドは秀麗な顔にいかなる表情も浮かべることなく、ただその言葉を繰り返した。
 
 三

 数日後
 地底都市スヴァルトアールヴハイム
 第四研究所ヴァルハラ

 帝都ノイベルリンの地下に、直径十キロ、厚さ五百メートルに及ぶ円盤形の空間がある。そこには多数の研究施設が設けられ、第三帝国を代表する科学者たちが、日夜研究を続けていた。
 「黒妖精の国(スヴァルトアールヴハイム)」。
 偉大なるアーリア的科学の牙城。二十年ばかり前、第三代総統ハインリヒ・ヒムラーの「ゲルマニア・プロイエクト」によって設立されて以来、この研究都市は多くの成果を生んできた。宇宙技術の研究こそ行われていないが、ドイツが宇宙と同じくらい力を入れている医学分野……ことに遺伝子・脳科学・人体改造などについては、ここほど進んでいる場所はないといえる。
 それらの成果すべてを投入して作られた帝国科学の結晶、それがアインヘリヤルだった。
 優秀な武装SSの兵士を選び、薬品投与と脳手術を施す。
 その結果生まれたのは、いかなる敵にも決して怯えず、精密機械のような冷静な判断を行い、銃弾を受けても痛みを感じることなく敵に立ち向かっていく超人戦士だった。反射神経、筋力、生命力も強化されている。
 まさしく、北欧神話に登場するアインヘリヤルそのもの。いまは総統護衛部隊など、武装SSのごく一部に使われているだけだが、ゆくゆくは第三帝国の全兵士をアインヘリヤルに改造することが決まっていた。
 
「しかし、それは第一世代に過ぎないんだよ、アーデルハイド」
 背の曲がった老科学者はそう言った。その眼の色は灰色、わずかに残っている毛髪は白と黒、背も低い。人種区分は決して高くなさそうである。にもかかわらず所長の地位を与えられたという事実が、彼の実力のほどを物語っている。帝国に多大な貢献をした者は名誉アーリア人に指定され、人種区分Aの扱いを受けることが出来る。「国家貢献ポイント」も大量に手に入る。
「第一世代?」
 アーデルハイドは尋ね返した。ここはヴァルハラ研究所の中庭である。天は分厚い岩盤でふさがれ、決して日の光が差すことはない。建物の窓から漏れる光はあるが、やはり暗い。
「そうだ、アーデルハイド。ハイドリヒ総統閣下は、アインヘリヤルの性能に満足なさらなかった。より優れた超人を作れ、そう命じてきたのだ。飛んでくる銃弾を避け、素手で戦車をも破壊し、手足がもげてもすぐに生え替わってくるような、本物の超人を……わしらには一つしか方法がなかった。後天的な手術では、とてもそこまで人間を強化することはできん。生まれつき人間ではないものを作るしかなかったのだ。遺伝子操作でな」
「わたしは……人間ではない?」
「そうだ。といっても気に病む必要はない。収容所に入れられているような、人間以下の連中とは違うのだ。お前は人間を超えた人間だ。アーリア人以上、本物の優良人種といってもいいかも知れん。誇りだ、誇りをもつのだ。お前たちは今はまだ兵器にすぎないが……」
 そのとき、風が吹き抜けた。
 アーデルハイドの銀色の短い髪が、科学者のまとっている白衣が揺れた。
「ふむ……風だと?」
 地底世界で風が吹くとは奇妙なことである。科学者は「天井」を見上げた。
 金属の梁で支えられた、黒い岩の天井。一切の照明が取り付けられていないため、闇そのものに見える。なんの変化もない。
「強制換気を行っているのです」
 アーデルハイドは喋った。
「おお、そうだったか……よく知っておるな。そうか、このスヴァルトアールヴハイムに関する情報も注入したのだったのな」
「はい、必要な情報はすべて先天的に学習済みです」
「……わかった。お前に必要なのは戦闘訓練だけだな」

 四

 数日後
 スヴァルトーアルヴハイム内
 模擬戦闘場

 相手には、何が起こったのかまるでわからなかったに違いない。
 全身の神経伝達速度を千倍に加速、それに合わせて筋肉細胞の収縮力リミッターを解除……銃弾の雨をかいくぐって、すくそばから一掃射。たったそれだけ。
 灰色の軍服を身につけた男たち。突撃銃を手にした、あくまで無表情な戦士たち。脳手術と薬物投与で、その戦闘能力を極限まで高められた兵士、アインヘリヤル。
 そんなアインヘリヤルたちはしかし、動かなかった。数人が折れ重なって、アーデルハイドの前に倒れていた。ある者は眉間を貫かれて、またある者は眼窩を真っ赤な空洞に変えられ、そしてまたある者は顔の中心部に大穴を空けられている。とにかくそろって死んでいた。正確に、首から上だけを撃ち抜かれて。
 対するアーデルハイドは、傷一つ負っていない。
 彼女は素早く首を左右に巡らせた。音速の二倍で飛んでくるライフルの弾さえ見ることができる彼女だが、やはり視界は人間同様の狭さだ。魚のような場所に眼をつけない限り、後ろが見えないことにはかわりないのだ。
 ……敵は発見できず。
 誰もいなかった。飛んでくる銃弾もない。この模擬戦闘場……ヨーロッパの古い町並みを模倣して作られた場所には、ただ煉瓦の建物と石の階段があるばかりだった。
 ……続いて音響索敵。聴覚増幅。脳内特定部位活性化。音響分析力増大。分析開始。
 足音はしない。衣擦れの音も、突撃銃に弾が装填される音も、なにも。
「……敵は確認できず。状況を終了する」
 アーデルハイドは、石畳に横たわる屍を見ながらそう言った。
その声に感情はない。十人の敵を瞬く間に殺戮したことも、自分にそれだけの能力があったことも、彼女の心を震わせることはできなかった。
 当然だった。彼女は機械……兵器なのだから。兵器は悲しまない。悔やまない。誇りも感じない。

 五

 同時刻
 スヴァルトアールヴハイム
 管制室

 大モニターに映し出された映像に、総統は息を呑んでいた。
「なんということだ……状況開始から二分しか経っていないぞ」
「これが第二世代型の実力です」
 白衣の男……スヴァルトアールヴハイム第四研究所の所長も、安堵と畏怖の入り交じった表情を浮かべていた。こうなるとわかっていた彼ですら、この眼で見てしまうといささかの恐怖を禁じ得ないのだ。
「素晴らしい。量産を急ぎたまえ。実戦配備はいつ可能になる?」
 総統は薄い唇を奇妙に歪め、そう言った。
「じ、実戦配備ですか……?」
 予想以上の反応に、所長は狼狽しているようだ。
「ああ。何を驚いている。急いだほうが良いではないか」
「総統閣下。一つうかがいたいのですが……どうして総統閣下は、これほどアインヘリヤルの開発に意欲的なのですか。いえ、新兵器の開発全般といったほうがよろしいでしょうか。英国もソ連も半世紀前に滅び、米国すらこの間ドイツの軍門に下ったというのに、なぜ矢継ぎ早に新兵器が必要なのでしょう。いまや敵といえば、『リヒテン・フェーヌス』や『ロイヤル・ガーズ』といったテロ組織どまりなのですよ?」
 言ってしまったあとで、所長の顔が凍り付いた。高い鼻が折れてしまいそうに、その体を震わせる。思わず総統に逆らってしまったのだ。
「ふむ……良い質問だ」
 しかしハイドリヒ総統は怒らなかった。
「たかがその程度の敵になぜこんなものを用意するのか、ということだね」
「え、ええ」
「それはな、強大な敵が必ずやってくるからだよ」
 ハイドリヒは嬉しそうだった。

 六

 総統暦一一一年四月一一日
 一九時二七分
 ランツェスガーテン

 そうだ。私は兵器だった。超人とか神の戦士とか言われていたが、ただの兵器、道具だった。自分が本当に正しいのかどうか疑うこともできず、別の道を探すこともできずに、ただひたすら命令に従うだけの存在だった。
 第一世代型たちは仕方ない。あの人たちは、命令を疑えないように脳を作り替えられているから。でも、私には疑うことができたのに。あの時、ほんの少しでも疑っていたら。自分の頭で考えていたら。そうすればあんなことは起こらなかったのに。
 彼女はアルプスの冷気を切り裂いて走りながら、激しくステップを踏んで銃弾をかわしながら、そんなことを考えていた。 


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