(NIRA特定研究助成B類:「NIRA政策研究」(月刊)Vol.13 No. 8)
女性が起こす事業型市民活動の可能性 新たな価値創造へのステップ

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ネットワークの必要性とあり方

   貨幣的価値によらない価値の存在は事業型市民活動に不可欠であるが、同時に、規模の拡大を制限している。もともと、金銭的な収入が十分期待できない活動であるから、経済的な基盤は貧弱になりやすい。それを補うものが、様々な人々や団体とのネットワークである。今回とりあげた活動は、多かれ少なかれ、外とのネットワークを持っているか、活動の内部にネットワーク的要素を持っている。

   そのようなネットワークの中で調達されるものとして、カネ(モノ)・ヒト・情報を挙げることができる。例えば、資金調達の事例として、山形県のNPO法人第1号となった家事援助等の相互扶助組織「ほほえみサービス米沢」を挙げることができる。金融機関ではできない「ほほえみ」の公益性の審査を「市民バンク」が行い、山形の地元金融機関である「殖産銀行」が事業の収益性を審査して初期投資(事務所改装)に対する融資を行った。そして、「ほほえみ」の事業は軌道にのり融資は返済された。金融機関からの融資は起業段階で有効なサポート機能を果たし、事業が軌道にのれば銀行にとって良い取引先となり得る。営利企業との間においても、それぞれの目的を失わずに「良さ」を引き出していくネットワークの可能性があるということを示唆している。

   茨城県牛久市の「牛久市民福祉の会」では、行動指針に「すべての市民は何かの専門家です。その専門家が自分のプロの力を使ってボランティアをやりましょう」と掲げ、会として必要な人材をネットワークするという視点を持っている。また、神奈川県藤沢市の「福祉クラブ生協藤沢」では、サービスを提供するときに会員の新しいニーズをキャッチし、その情報を共有するシステムをつくりあげている。

   一方で、各地で立ち上がろうとしている活動同士をつなぐようなもっと広いネットワークも必要だろう。山形県のNPO支援・連携組織である「山形創造NPOネットワーク」のように、行政からの支援やマネージメントサポート等に関する外部情報などをネットワーク全体で収集・共有化する仕組みが重要である。

   「福祉クラブ生協」は、「参加度を薄めないために活動の単位を大きくしない。大きくなったら分割して活動の規模を保つ」というように、活動規模の拡大により生じる参加者の主体性・連帯意識の低下を防ぎながら全体として安定した組織づくりをめざしている。「小さく分けて大きく束ねる」発想はネットワークを考える上での参考となるだろう。

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