顕微鏡生物実験室20ビー玉とスマホによる観察

 ***ビー玉とスマートフォンで拡大観察・撮影を***

無色透明なビー玉は、高倍率のルーペとして使えます。顕微鏡ほどには拡大されませんが。
また、ビー玉をスマートフォンや携帯電話のインカメラと組み合わせると、観察対象をディスプレイ画面で観察し、撮影することもできます。
右の写真は、ビー玉とスマートフォンを組み合わせて、食塩の結晶を観察しているところです。観察・撮影の例はこちら


観察の材料と方法
〔観察材料〕
 植物の花・葉・茎・種子・花粉など、米などの穀物の粒、ヒトの皮膚・爪・髪の毛など、ネコやイヌの毛、魚のうろこ、いろいろな虫の体の各部分、卵の殻の表面、石の表面、食塩、砂糖、砂粒など。その他たくさん考えられます。

〔観察方法〕
(用意するもの)
 ビー玉(無色透明で、直径17mmの普通サイズ)、スマートフォン(または2つ折りの携帯電話)、色工作用紙(80mm×100mm)、両面テープ、薄い透明プラスチック板(食品パック容器のふたなど)、セロハンテープ

(ビー玉による観察)
〔1〕ビー玉レンズルーペをつくる
ビー玉レンズルーペの作り方  ビー玉はそのままではころがり易くまた持ちにくいので、ビー玉に色工作用紙を巻きつけて、ビー玉レンズルーペにします。
 色工作用紙の裏側に端から端まで両面テープを貼り、裏紙ををはがします。そのあとのやり方を、左の図に示します。 1)端同士をくっつけ貼り合わせます。
 2)曲げたカーブのところに、ビー玉を貼り付けます。 3)工作用紙の貼り合せ残しの部分をすべて貼り合わせてビー玉をしっかり留めます。

〔2〕観察の仕方
ビー玉レンズによる観察法 1)まず材料のサンプルを次のように準備します。
・食塩・砂粒・小さな種子など粒状のもの
 透明プラスチック板を、25mm×65mmほどに切ります。材料を皿などにぱらぱらと撒きひろげ、そこに2cmほどに切ったセロハンテープを軽く押し付けて材料をはりつけます。そのセロハンテープをそのまま透明プラスチック板に貼ります。
・植物の葉・魚のうろこなど薄いもの
 透明プラスチック板を、25mm×130mmほどに切ります。これをまん中で折って、中に材料をはさみます(左図参照)。もし観察中にプラスチック板から落ち易ければ、上記の粒状のものの方法で行なうか、プラスチック板の両側をセロハンテープでとめます。
・石・果物など厚みのあるもの
 そのまま手で持つ

2)上記のように準備したサンプルを次のようにして観察します(左図参照)。
 ビー玉レンズルーペを、直射日光ではない明るい方向に向け、目のすぐ前に近づけて持ちます。ビー玉が目に触れるか触れないかまで近づけてください。サンプルをビー玉に触れるほどに近づけてから、ゆっくりとビー玉から遠ざけていき、ピントのあったところでとめます。暗くて見えにくければ、スタンドなどで横からサンプルに光をあてます。透過光でも反射光でも観察できます。観察対象によって使い分けてください。

(ビー玉とスマートフォンの組み合わせによる観察と撮影)
ビー玉レンズルーペとスマートフォン(または携帯電話)のインカメラ(フロントカメラ)を組み合わせて観察し、撮影します。

スマホによる観察法 携帯電話 1)スマートフォンをインカメラ撮影モードにして、平らな(直射日光ではない)明るいところに置きます。
2)インカメラにビー玉レンズルーペを置きます。
3)サンプルをビー玉にゆっくりと近づけたり遠ざけたりして、ディスプレイに映る拡大像を見ます。ピントの合う位置で止めて観察し、シャッターを押します。この場合も、透過光・反射光どちらでも観察・撮影できます。撮影した写真は、ディスプレイ面をピンチアウトすると拡大できます。

・スマートフォンではなくタブレットを使うと、ディスプレイ画面が大きく見やすいです。
・2つ折り携帯電話の場合は、左図のようにディスプレイ面が平らになるように置き、同じようにビー玉レンズルーペとサンプルをセットし観察・撮影をします。像は、スマートフォンを使った場合より小さいです。撮影した写真を、拡大機能を使って拡大して観察してください。


なぜこの方法で観察・撮影ができるのか
凸レンズによる像 1)ビー玉で拡大観察ができるのは
 中心が周りより厚いレンズが凸レンズです。無色透明なビー玉は、中心が厚いので凸レンズとして使えます。凸レンズが太陽の光を受けると、光は反対側の1点に集まります。この点が焦点で、焦点はレンズの両側にあります。
 左図は焦点より近くに置いたサンプル(↑)が拡大されて見えることの説明です。サンプルから出て、レンズの光軸に平行に進む光は、レンズによって屈折し、反対側の焦点を通ります(@の光)。レンズの中心を通る光は屈折せず直進します(Aの光)。@Aの光は交わりません。このような光が目に入ると、その光を逆に延長していって交わった点から光が出ているように感じ、拡大像が見えます(点線の↑)。
2)ビー玉とスマートフォン(または携帯電話)で、ディスプレイに映して拡大観察できるのは
 スマートフォンのカメラに入る光は、サンプルからビー玉を通った光つまり上の図の@Aの光です。交わらない光ですが、カメラのレンズで屈折して交わり像ができ、ディスプレイに映ります。


ビー玉とスマートフォンで観察・撮影したものの例
食塩 タンポポの実 ススキの葉 アサガオのめしべ
食塩
四角い結晶でした
タンポポの実(綿毛の下についている)
溝・とげがありました
ススキの葉のふち
鋭いぎざぎざがありました
アサガオのめしべ
柱頭は小玉がもこもこしていました
イワシのうろこ 卵の殻の表面 アブラゼミの抜殻の脚 指紋
イワシのうろこ
年輪のようなものが見えました
卵の殻の表面
でこぼこしていました
アブラゼミの抜殻の脚
毛が生えていました
ヒトの指の指紋
汗腺の出口が認められました

注意すること
1)絶対にビー玉を通して太陽を見ないでください。失明することもあります。
2)あやまってビー玉を飲み込まないよう気をつけてください。


追記
1)何を見る場合もビー玉やスマートフォンを使う前に、まず肉眼で観察してください。これは、顕微鏡観察の場合もいえることです。
2)無色透明のビー玉は案外に入手しにくいものです。何十個かセットになったものの中に1〜2個入っていることもあります。無色透明のものだけをネット販売で買うと、200個で600円ほどです。
3)凸レンズとして使えるのは、ビー玉の中心部分だけです。周辺部は像がゆがんで見えます。
4)ここではビー玉は、直径17mmの普通サイズのものを使いました。これだと、倍率は15〜20倍ほどです。ビー玉には直径17mmより大きなものも小さなものもあります。凸レンズとして使う場合は、小さいビー玉ほど倍率は高くなりますが、大きいビー玉に比べて扱いは難しくなります。見たい部分を視野に入れにくく、ピントが合わせにくくなるのです。
5)透明プラスチック板につけたサンプルを直径17mmのビー玉で観察・撮影するには、照明は多くの場合天井からの灯りの透過光で充分ですが、暗いと感じたらスタンドなどでサンプルを照らしてください。石・自分の指・果物など透明プラスチック板につけられないサンプルの場合は、見たい部分にスタンドなどの光を当てて反射光で見てください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

[参考資料]
この観察法は、次のスマホ顕微鏡の原理を参考にしました。
Leye-スマホ顕微鏡(http://leye.jp/)


次へ 戻る
生物実験室目次へ HOME