顕微鏡生物実験室4.

〜〜短日処理によるアサガオの花芽形成〜〜


<アサガオの芽生えを短日処理すると自然状態より早く花芽を形成し、花を咲かせる>


短日植物とは
暗期の長さが一定時間より長くなると花芽を形成する植物。キク、コスモス、ダイズ、アサガオなどがその例。花芽形成には何時間以上の暗期(限界暗期)が必要かは植物によって異なる。
限界暗期は暗期の温度によっても異なり、アサガオでは暗期の温度が高いと(25℃)と暗期の長さが8時間をわずかに超えれば花芽が形成されるが、暗期の温度が低いと暗期を長くしなければ花芽は形成されない。

アサガオの短日処理
アサガオ(品種ムラサキ)は、5月上〜中旬に播種し、自然の明暗周期の下で育てると7月末から開花する(静岡市の場合)。そこで、芽生えの頃に人工的に長い暗期を与えて(短日処理)自然状態よりも、早く花芽を形成させ開花させることを試みた。

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実験アサガオの子葉

(材料)
アサガオ(品種ムラサキ)

(方法)

発芽して、まだ子葉が開いていない(右の図、左の状態)個体2個(a,bとする)と、子葉が開いた直後(右の図、右の状態)の個体2個(c,dとする)に下記のような処理をする。
26℃に温度設定した暗黒のインキュベーター内に28時間(1993年 5月12日10:30〜5月13日14:30)おく。
その後は自然の明暗周期の下で育て、花芽形成の有無を調べる。

(結果)アサガオの花
短日処理のとき子葉が開いていなかったものは、この処理で花芽を生じなかったが、子葉が開いていたものは、短日処理終了後19日目には頂芽が花芽になっているのが認められた。

以下はその経過

(6月1日)
a、bは本葉を6枚出し、頂芽は花芽になっていない。c、dは本葉を3枚出し、頂芽は花芽になっている。花芽の長さは約1cm。
(6月8日)
a,bに花芽は認められない。c、dの花芽は枯れて黄色になっていた。
(6月19日)
c、dの花芽が枯れ落ちた跡の葉腋に、また花芽ができている。その下の葉2枚の葉腋にも花芽ができている。
(6月30日)
cの頂芽の花芽が開花。cの、その他の花芽は枯れ落ちている。
(7月1日)
dの頂芽の花芽が開花(右の写真)。そのすぐ下にできた花芽は枯れ落ちている。
(7月2日)
dの、あと1つの花芽が開花。

(以上のまとめ)
アサガオ(ムラサキ)の、子葉が開いた直後の芽生えに1度だけ短日処理(26℃で28時間)すると処理終了後19日目には、頂芽が花芽になっているのが認められた。この花芽は枯れ落ちたが、同じ位置に花芽が再び形成され、この花芽は、自然状態での開花より約1ヶ月早く開花した。

その後の状態)
頂芽が花芽となり、本葉数枚の小さな植物体の状態で開花したc、dもその後大きく成長した。子葉の葉腋から出た芽が長く伸びて、つるとなり次々に葉をつけ、葉腋に花芽を形成し開花した。

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参考文献
1)花ごよみ花時計(中央公論社) 瀧本敦
2)アサガオのつぼみはどうしてできる(さ・え・ら書房)瀧本敦


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