第２回
かつてケルンテン・グリューネラントそしてドイツには、他に例を見ない特殊兵器「装甲戦闘猟兵（パンツァーカンプフイェーガー 通称 イェーガー）」が存在していた。この装甲戦闘猟兵は自動人形の技術を転用したもので、多彩な武器を操る腕、険しい地形をも踏破する脚を持つ、全高８ｍほどの（基本的に）人型をした陸上兵器であった。
装甲戦闘猟兵は欧州大戦末期にケルンテンの天才自動人形職人ゲルハルト・アイヒマン氏によって開発されたものである。戦後にアイヒマン氏が行方不明になった事によって装甲戦闘猟兵の開発・製造は不可能となってしまった。その後、氏の弟子たちによる研究によって再び装甲戦闘猟兵の開発・製造が何とか可能となったものの、それらはアイヒマン氏の手によるものとは比較にならない代物であった。これ以降、圧倒的な性能を誇るアイヒマン氏謹製の装甲戦闘猟兵は「原型機（ウービルト）」と呼ばれる事となった。しかし、原型機より性能が劣るとは言え装甲戦闘猟兵が画期的な新兵器である事に変わりはなく、ケルンテンでの開発・生産・配備は進められ、硅緑内戦時には主力兵器と呼んでも差し支えがないまでになっていた。
先ほど、装甲戦闘猟兵を「陸上兵器」と記したが、少ないながら水中型も存在していた。硅緑内戦は陸上戦闘が主であったためあまり目立たないが、内戦の短い期間に数種の機体がケルンテン・グリューネラント（ドイツ）双方で開発され、実戦に投入されていた。これらの機体は水中用であるが故、陸上型とは異なる特色を持つ機体ばかりであった。これから数回に分けて、少ないながらも多彩な水中用装甲戦闘猟兵の紹介を行っていきたい。
最初の水中用装甲戦闘猟兵は、アイヒマン博士の手によって造られた原型機Ｎｒ．３６スキーズブラズニルであった。この機体は四肢と頭部を備えた人型機であったが、他のウービルトとは大きく異なる機構が備えられていた。まず、他の陸上機は内燃機関を搭載していたが、このＮｒ．３６は水中での運用を前提としていたため内燃機関を廃し蓄電池による電力供給が行われる様になっていた。そして脚部も他の機体とは大きく異なる構造となっていた。水中での移動を可能とするため、脚部は中空とされ、その内部には大腿部に吸入口を持ち踵に噴出口を持つウォータージェットが搭載されていた。このウォータージェットは水中速力でも３０ノットを上回ると言う、現在の目から見ても驚異の性能を持っていた。なおこのウォータージェットは、これ以降に開発された水中専用機にも装備された事のない、Ｎｒ．３６独自の機構であった。
水中専用機はマニピュレータを装備せず火器も機体に固定したものが多かったが、Ｎｒ．３６は腕部にマニピュレータを備えていたため固定火器は装備されていなかった。主な武装は水中での使用を考慮した槍と、マニピュレータの高い作業能力を利用した設置式機雷であった。
ここからはＮｒ．３６の働きを紹介しよう。Ｎｒ．３６は欧州大戦時にオーストリア艦隊対策として投入された。その日付は不明であるが、Ｎｒ．１の投入が１９１７年１１月であることから、１９１８年に入ってからでろう。既に終戦間近であった事もあって、駆逐艦１隻を撃沈したと言う未確実情報が残されているのみである。しかも、この戦闘の際にＮｒ．３６は行方不明となっている（海軍の記録ではパイロットの脱走となっている）。
それから約２０年後、硅緑内戦の最中に行方不明となっていたＮｒ．３６が発見されるが、整備などを施す事によって再戦力化されたのは１９３８年７月中旬、休戦協定が結ばれた後の事であった。
１９３８年７月１８日、イタリア艦隊に対する破壊攻撃に出撃し、駆逐艦アントニオ・ダ・ノリ撃沈、重巡洋艦フューメ中破させている（もっとも、政治的な配慮から「事故」による沈没および破損として扱われたため、戦果としては扱われていない）。
１９３８年９月２９日、この日ケルンテン海軍は基地および艦艇を放棄して国外脱出を行っているが、その際Ｎｒ．３６が戦艦コンテ・ディ・カブールを撃沈したとの説もある。残念ながらケルンテン海軍の記録が残されていないため確かな事は判らないが、当時戦艦を撃沈できうる戦力はＮｒ．３６を含む数機の水中用装甲戦闘猟兵のみであるため、Ｎｒ．３６の戦果である可能性は高い。
この様に他の機体と比較して圧倒的な性能を誇るＮｒ．３６であるが、その活躍は非常に乏しいものであった。
参考文献
遊演体ネットゲーム９５「鋼鉄の虹」リアクション
１１月期
行動処理No.065 ENT_「戦艦でアイスクリーム？」 担当マスター：椎 冬利
行動処理No.066 ENT_「行くぞ！ 硅嵐典海軍」 担当マスター：椎 冬利
１２月期
行動処理No.081 MAIN「海軍ってたのしーっ！」 担当マスター：椎 冬利
８月期
ネットゲームマガジン クリエイター 1995年11／12月合併号 （遊演体）行動処理No.079 MAIN「反逆の硅海軍？」 担当マスター：椎 冬利