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末摘花初編(1)



誹風柳樽は、川曳の滑稽にして呉浚軒の集冊也。予其巻にもれし恋句を人しれずここに竊りてものにし侍るに、終跋を世上へ末摘花とは名の立つ事にはなりにけらし。
安永五年盂秋


蛤は  初手赤貝は  夜中なり

下女の尻  つめればぬかの  手でおどし

和尚さま  善女人だと  可愛がり

後家の下女  鵜の真似をして  追ん出され

女房に  茶臼引かせりゃ  引っ外づし

孕んでも  己は知らぬと  むごい奴


立ち聞きが  吹き出したので  下女させず

どの客が  ずぼらませたと  遺手云ひ

十六で  娘は道具  そろうなり

乗せていて  下女二た声  返事する

山姥は  ええ年をして  おっぱじめ

いらぬ事  女房石にて  さねをぶち


まだ伸びも  せぬにもう来る  麦畑

不届きさ  池にひびける  よがり声

鬼の面  かぶって乳母は  させている

裏表  下女二た晩に  おねだり出し

ほんとうに  してくれなよと  悲しそう

出合茶屋  あんまり泣いて  下り兼ねる

   


色ばばあ  しみしんじつに  可愛がり

   
ぬっと入れ  まず抜いてみる  伊勢の留守

   
張形が  出て母親を  また泣かせ

   
屁を放って  妾は下女に  一分やり

   
おれがのは  小さいと守  口説かれる

   

えぇ年で  初さといふは  御殿もの

大味で  あろうと与一  かくごする

   
悪口を  云ひなさるなと  ちぢれ髪

   
冴えぬ夜は  女房とぐろを  巻いて寝る

   
ゆるいのを  するのが和尚  落としなり


八九人  べい来ましたと  下女が泣き

   
女房の  寝耳に下女の  よがり声

   
花嫁の  よがるは出来た  事でなし

   
またぐらの  吟味をとげる  月見前

   
手を取ると  下女鼻息を  荒くする

いたい事  ないと娘を  口説くなり

きんたまと  さねとの間に  ふどう尊

   
いたいわな  どうしめさると  田舎嫁

   
またかえと  女房は笑い  笑い寄り

   
生む時は  どうするものと  我慢させ

   
をんな客  陰間をえらい  目に合せ


おへたとて  入婿めったには  ならず

温めて  くんなと足を  ぶっからみ

   
もうしては  やらぬと下女は  おどされる

   
孕んだと  聞いてひとり逃げ  ふたり逃げ

中条で  鼻をならして  しかられる