3日目
7月28日 午前10:00
昨日の私の祈りが利いたのか、見事なまでの暴風雨によって目が覚める。
慌てて天気予報を見ると、台風6号が奄美大島のそばで停滞しているとのことだ。
これでは外出は無理なので、室内でごろごろしているとF山さんがなにやら木製テーブルのような物を持ってきて
くれる。
「これは『なんこう』という遊びで、双方三本の棒を持って手の裏で隠し、両者の持っている本数を当てるんだ」
といって簡単なルールを教えていただき、我々二人にそれらを貸していただく。
意外とこれが二人の心理戦を必要とする高度なゲームで、しばらく二人で腹のさぐりあいをする。
午後1:30
昼食をはさみ今度は花札をすることにする。
海に行けないはらいせか、やたらと引きがよい。
結局私が完勝する結果に……。
午後4:00
花札も一段落して再びごろごろしていると、
「最近温泉みたいのが出来たそうなので、行ってみよう」
とのF山さんのお誘いいただき、行ってみることに……
車にて移動をするととてもきれいな施設がある。
どうやらそこは市営のお風呂で、最近出来たばかりのようだ。
浴室はぼちぼちの広さで、銭湯進化させたような感じである。
ひとつの浴槽にいろんな種類のお風呂がある。
はじから全部試して、軽くのぼせかけた頃、休憩室へ。
風呂上がりにシークワーサーのジュースを自動販売機で見つけたので、飲んでみる。
「……なるほど、シークワーサーのジュースだ」(めいゆ)
みもふたもないコメントで軽く一同を笑わせてから車で次の目的地へ……
午後6:00
F山さん達と一旦別れて、夕食をお店で取ることにする。
東京から持ってきた『るるぶ』に載っていた記事の中にあった、夜光貝のバター炒めを食べたかったからである。
市内の飲屋街の一角にある『道の島』というお店である。
中に入るとなかなか多くのお客さんが店内を賑やかしており、盛況ぶりを証明している。
最初は定番のビールと軽いおつまみを食べて、いざ目的の物にいこうとお店の人に声をかける。
「すいません。夜光貝のバター炒めというのをいただきたいのですが……」
「あ、あれねぇ。台風で夜光貝が取りに行けなくて今日は出来ないのよ……ごめんね……」
一瞬脳裏にイヤな予感がよぎったので、続けて質問する。
「と言うことは、他の海産物もだめなんですか?」
「いえ、他の魚とかは、たいてい大丈夫なんですが貝だけは潜らないといけませんから」
(なるほど、それもそうだ)
納得した我々は、新鮮な『キビナゴの刺身』などをつまみに飲む。
しばらくして奥からこの店のおかみさんみたいな女性が現れて、我々に声をかけてきた。
「お客さん、どちらからお越しになったの?」
「はい、東京です」
「あ、そうなの。じゃあ……」
というと店の奥から奄美大島のガイドブックみたいな本を持ってきてくれる。
我々が興味津々でそれらを見ていると、いろいろ話しかけて来ていただきとても楽しい雰囲気で飲める。
ひょんなことからおかみさんがF山さんの知り合いらしい事がわかり、いろいろとサービスをしてくれるようになったので、恐縮をしっぱなしである。
しばらく飲み続けているとF山さんが登場。
座っていたカウンターから座敷に移動し再び飲み直す。
アルバイトの女の子が注文を聞きに来たので、
「焼酎は何がお薦めですか?」
と尋ねる。
「とりあえず、うちにおいてあるのはだいたいおいしいけども……」
「んじゃ、端から全部一杯ずつロックで……」(灰谷&めいゆ)
これではただの大酒のみであるが、旅の恥は掻き捨てとばかりにガバガバ飲む。
憶えている範囲で、
れんと、里の曙、気、高倉、せいら、加那、八千代……(まだ他にも飲んだはずだが名前忘れ)
と、奄美大島で売っている中心的焼酎をだいたい制覇する。
その飲みっぷりにお店のおかみさんが、
「せっかくだから、『スモモ酒』も飲んでみる?」
との提案に我々二人が遠慮するはずもなく、早速飲んでみる。
スモモ酒は、何とも言えないうまみを持っていて、梅酒とはひと味違ったおいしさだ。
作り方もついでに教えていただき、いつの日にかつくろうと思う。
そろそろ帰ろうとすると、先ほど灰谷が話した仕事のことでおかみさんが、
「一枚イラスト描いていってちょうだい」
とのご注文をいただき、色紙にイラストを描くことに……
ちゃっかり記念を残した灰谷は、
「来年はシラフの時、描きますんで……」
と約束してしまう。
おいおい、シャレになってないよ。
ま、それまでは店内に飾っていただいていると思うので、興味のある方は行ってみてね。
帰宅する頃には、台風の面影はない。
午前0:00
F山さん宅に再び帰宅。
とりあえず、台風情報を見るとどうやら日本海側に抜けそうな感じでゆっくり移動している。
その後、酔いも手伝ってすぐに床に着く。
このまま、天候が回復してくれればいいんだけどなぁ……
4日目に続く