「…あれ?」
レイオウと一緒に4軒目の食料店に座っていたケティアは、はっと顔を上げた。
「?どうした、ケティア?」
食べる手を休めてお茶を飲みながらレイオウは尋ねる。
そしてまたすぐに次の皿に取り掛かった。
「あ〜、ここは野菜が文句なしに良いの使ってるなっv」
そんなレイオウをケティアは呆れ顔で眺める。
「…よく…食べるね…」
「食事は生き物にとって最重要なんだぞ」
「…まあ、いいけど…」
嘆息したケティアを見つめながら口の中の物ものを飲み込み、レイオウは重ねて尋ねた。
「で?さっきの”あれ?”は何なんだよ」
「あぁ…うん、たいしたことじゃないんだけど…」
ケティアはちょっと考えてから話し始める。
「さっきまで大きな魔力が不安定に漂ってたんだけど、それが急に安定したんだよね」
「あ?」
レイオウはわけがわからない、といった顔をした。
「えっと…魔法を使う人っていうのは、肉体が安定した状態にあってこそ、その魔力も安定するんだよ。
つまり肉体が拘束された状態…物理的にじゃないよ?
たとえば結界とかで…そういう場合は、魔力も安定しなくてふわふわ不安定なんだ。」
「ふーん。じゃあ誰か魔法使いの拘束が解けたってことか?」
「そういうことだね。ただ…」
「ただ?」
「この魔力の波動、なんか覚えがあるんだけど…」
ケティアがうーんと考え込んだ次の瞬間、背後から声がふってきた。
「何やお前らまだ食っとるんか?」
「…ラルドとリアじゃねえか。買い物終わりか?」
レイオウが顔を上げて、ケティアの後ろに立つ長身を見上げる。
そこにはラルドとリアがいくつかの袋を(もちろん荷物持ちはラルド)提げて立っていた。
「おいしそうですね、私たちも御一緒していいですか?」
リアの問いにもちろんと答えて席を作ると、二人も席につき注文を済ませる。
「で?まあ3.4時間ほどたってるわけだけど少しは進展あったわけ?」
ケティアが頬づえをついて二人に向かって言うと…
「あほっ、何考えとんねん、何もあらへんわっ!」
「進展…どういうことですか?」
ラルドは真っ赤になって、リアはきょとんとしてこういった反応が返ってきた。
「何だ、マジで何もねえのか、情けない…」
「まったくだよ、流石ラルドってとこだね」
レイオウとケティアはそろってふふんと笑った。
「でっ?何の話をしてたんやっ!?」
ラルドは悔しそうに歯噛みしながら二人をにらみつける。
レイオウとケティアはくすくす笑いながらさっき話していたことを話してやった。
もっとも、ラルドはレイオウほど物分りが良くなかった為理解するのに倍の時間を労したのだが…
「それでお前はその魔力に覚えがあるって言うんやな?」
「そうだよ、たぶんね…」
ケティアはまだボーっと考え込みながら答える。
「あの…」
そこへリアがおずおずと話に入ってきた。
「私が知ってる強い魔力を持った方って…」
一度言葉を切って、続ける。
その答えはまさに灯台もと暮らし。
「セイさんしかいらっしゃらないんですけど…」
ケティアはそれを聞いてゆっくりと目を見開く。
「………あ…そっか…セイだ…」
ケティアはぽつんとつぶやき、同時にレイオウが叫んだ。
「えっ、てことはついさっきまでセイが拘束されてたってことか!?あれほど強いセイが!?」
「でももう解放されてるんですよね…」
「なんにせよ、何かあったことは間違いないみたいやな…」
4人はテーブルの上の料理を囲んで顔を見合わせた…。
一同、星徒の言葉に水を打ったように黙る。
「お前が蒼の島を求める理由ってのは、なんなんだ。」
「………」
ウェルは黙ったままだ。
リリアをお姫様抱っこしたままうつむいている。
その表情は悲しみとも戸惑いとも感じられる。
「言えないってのか……?
だけどな、今さっきいったように、お前がたどり着く蒼の島には俺達か、有翼人が居てさ。
その力でお前らに何か力を与えるって事なんだぜ。
だから、俺達でもできない事はそもそも無理だってことなんだ。
しかも、こっちは善意でやるんだから、お前の願いが気に入らなきゃこっちは力を貸してやる義理はないんだぜ。」
「そうみたいだね…」ウェル。
「がっかりしたか?」
「だけど…これが真実。伝説なんてそんなもんよ。」陽留。
「だからよ。今言ってくれりゃ、俺達ができるなら先にその希望をかなえてやってもいいぜ。」
ニヤリとして星徒。
「人間らしく、金とか権力か?」
「そんなんじゃないっっ!そんなもの争いの元だ。」
「そんじゃ、身内の不治の病を治して欲しいとか…」
「そんなカッコ良い願いじゃないよ。残念だね。」
「ヲイヲイ。ひょっとして、その女の子より背を高くしてもらって…」
そこで星徒はクスリと笑う。
「そんで両想いとか…」
「もういいっっ!!!! 今話すことでもないだろっ!!」
大声を出すウェル。
きつい目で星徒を見る。
「リリアの事もあるし、必ず蒼の島に辿り着くよ。その時に話すっ。それでいいだろっ!。
セイさん。もう行こうよっ、そろそろ日が暮れるし皆と約束した宿に行ってリリアを休ませてあげたいんだから。」
(フン。まあまあ合格点だな。ここで偽善の優等生の言葉を言ったらこの場でぶっ殺していたところだからな。)
星徒はフフンと鼻を鳴らして言う。
「そうですね。おなかも空いてきましたし…さ、水優。放してください。私は必ず帰ってきますから。」
「ホントに。セイマ様。うそついちゃだめだよ。」
「うそはつきません。ほら、ゆびきり。」
「うんっ」
そういって、水優とセイは指切りをする。
「それでは皆さん。また会いましょう。」
セイの転移魔法により、セイとウェルとリリアは、光の泡に包まれてそして消える。
後に残された星徒、陽留、水優、ウンディーネはお互いの顔を見回す。
「アイツラで大丈夫なのかね。俺、かなり不安だけど、」
「大丈夫だと思うわよ。セイマ様がいらっしゃるのだし。」
「アタシ 疲れちゃっいましたぁ〜(…セイマ様また会えるね)。」
「私は、また眠るとするか。」
セイ達3人が宿に着いた時、夕焼けの空になっており、人が忙しく往来を行き来していた。
セイが宿のドアを開けると………
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