オレの住む村には1つの伝説がある。
世界のどこかの海に浮かんでる地図にも載ってない蒼の島。
そこの南の草原で太陽の光だけを300と65日浴びた黄金色の鳥のはねと、
北の森で、月光だけを700と30日浴びた銀の木の実。
この二つを手に入れて島の中心にある神殿の聖杯にかかげれば、
不死鳥が現れて、願いを1つ叶えてくれる…という伝説が…
「方角よぉし!風向きよぉし!」
ルア大陸の西に位置する『スクサスの港町』の船着場に、1人の少年が立っていた。
少年の名はウェル=カーオ。
港町に住む冒険好きの『人型ドワーフ種』である。
「絶好の日和だな。オレの旅立ちの門出には十分だ!」
さて、ウェルの持ち物から予想すると(―食料少々・3000G・短剣・地図)
どうやら旅に出るようだった。
「さてと、いつまでもここにいたら、やつに見つかるからな。とっとと出発しないと……」
「お待ちなさい!」
ウェルが、船に足を踏み入れようとした瞬間、後ろから甲高い声が響いた。
「この声は……」
ウェルが顔を引きつらせながら後ろを振り返ると、
そこには長い棒の先端に刃のついた武器―――今で言う長刀のような物―――を持った少女が
仁王立ちでたたずんでいた。
少女の髪は、空のような青色で、瞳は対照的に炎のような、赤色をしている。
少女はリリア=シュラ―。
ウェルより1つ年上の幼なじみだ。
このリリアこそが、ウェルの言う『やつ』である。
「あんた……一体船になんか乗ってどこ行くつもりなの!
あんたを家に連れて帰らないと今日のバイト料もらえないんだからね!」
綺麗…というよりは可愛い顔をひきつらせてリリアは早口で話す。
「はっ、やっぱりうちの親の差し金か。で?一体いくらなんだ?俺を連れて帰るっていうバイトは。」
小悪魔的な笑みを浮かべまるでリリアを挑発するかのように、ウェルは船に乗ろうとした足を下ろした。
「そんな事言う必要はないわ。」
リリアは手にした長刀をキュッと握りなおす。
「あんたが、どうしても戻る気がないというのなら…」
リリアから、殺気を感じたウェルはバックから二本の小剣を取り出して構える。
「実力行使あるのみ!」
リリアとのバトルが始まった……
「はぁっ!」
リリアの長刀が目の前の空を切った!
長刀をジャンプで避けたウェルは、そのままリリアの背後にまわり2本の小剣を十字型に振った。
しかし空振り!
ウェルの前にリリアの姿はなかった。
そのときウェルは後ろからすごい殺気を感じた。
急いで振りかえり剣を振るウェル。
「遅い!」
上空からリリアの声が聞こえた。
―――――ガッ
背中に打撃による激痛!
「――――――っ!」
ウェルは、しばらく言葉を失った。
「さ、ウェル。そろそろ観念なさい。」
リリアが、強い口調で話しかける。
「こう…なったら…」
ウェルは、小剣を構え真直ぐリリアに突っ込んでいく。
「無駄ね。」
リリアは、突っ込んでくるウェルをひょいっと避ける。
「そんな方法じゃ私は倒せないわ。」
リリアは、ウェルが方向を変え、また同じ行動をとるものと思っていた。
――――――が!
「誰もお前を倒すなんて言ってないよ――――」
ウェルは、そのまま船へと進んでいった。
船はもうすでに出港間近であった。
「やべっ、間に合うかな」
ウェルは全速力で船に向かっているが、船のロープはもう解き放たれている。
ちっ、と舌打ちをしながら走るウェルの後ろには、リリアの姿があった。
「待ちなさい、ウェル!!」
リリアも全速力で追ってくるが、所詮女の足。
到底追いつけるハズがない。
そうこうしている間に、船まで近づいたウェルは船守りのじいさんの頭を飛び箱代わりに、
ひらりと船に飛び乗った。
「ウェル!!」
リリアは息を切らせながら大声で叫んだ。
「何があったって知らないわよ!馬鹿っ!!」
そう言うリリアの目に涙が光っていたのを、ウェルは気がつかなかった。
冒険者というのはとても危険である。
いつ命を落とすかわからない、腕が強くなければ金を稼ぐ事ができず
食料が買えず、餓死してしまうかもしれない。
そんな事を知ってか知らずか、ウェルはリリアに手を振っている。
船が岸を離れた。
もう後戻りは出来ない。
「よお!間に合ったみたいやなぁ!」
リリアを巻いた満足感に笑みを浮かべながら、感慨深げ旅立ちの雰囲気に浸ってるウェル。
その背を親しげにぽん、とたたいた者がいた。
「!!!」
驚いて振り返った瞬間にばさっと何かが落ちてくる音がした…
かと思うと、視界が真っ暗になる。
「わ…ぷ」
敵はリリア一人ではなかったのか…!
船に乗った安心感から警戒を解いていた自分の愚かさを悔やみながら、
ウェルは闇雲に暴れまくる。
手や顔を覆う感触からして、それは大きな黒い布のようだ。
だが、むしり取り、かき分け、払いのけても、次々にウェルの行く手を阻むそれはまるで生き物のようだ。
「ちくしょ〜!!!!」
ウェルがヤケになって叫んだ次の瞬間。
「もーう、ラルド!いきなり人からかうのやめて、僕の浮巾返してよねっ。」
よく響く少年の声と同時に、急にウェルの視界がはれた。
そして、目に入ったのは、ウェルよりも頭一つ分背の高い、健康的な青年と、
黒いヴェールのような布をまとってふわふわと宙に浮いている、
天使のように可愛らしい顔をした少年だった。
どうやらさっきまでウェルの視界をさえぎっていたのは、この少年のヴェールらしい。
「おまえら、誰だっ!?」
ウェルは二人からさっと離れた。
「あっ、ひどー。ケティア、この兄ちゃん、いきなり喧嘩腰やで。」
「当たり前だろ、初対面でラルドみたいな奴に友好的な人なんて、いる訳ないよ。」
ケティアと呼ばれた少年は、生意気な仕草でふんっとあきれたように笑った。
「あっ、こらっ!年上に向かってその口の聞き方はなんや!」
「年上だろうと何だろうと、君にはこれで十分すぎるくらいだね。」
…目の前で言い合いを始めた二人を、ウェルはただポカンと見ていた…
ラルドと、ケティアの言い争いから、5分経過。
「ってーああ、ゴメン、ゴメン、いきなり、漫才やらかしてしもて…」
「そうそう、僕は、こんなにお馬鹿じゃないよっ。ホントに…」
「おい、ケティアそれじゃあ、まるで、ワイが…」
「もう〜、本題に入れないでしょ。だまって、ラルド。」
「まずは、自己紹介、僕は、ケティア、こっちのうるさいのが、ラルド。」
「おいっ、うるさいのはって、ウゲッ」
ケティアの杖が、
ラルドのおなかに突き刺さる。
「ああ、俺は、ウェル・カーオだ。」
「そか、それじゃあ、ウェル、君は、蒼の島を探しているんだろ。」
「あああ、そうだよ。」
と、ウェル(どうして知っているんだ。)
と、少し疑惑の表情で、
「ほうか〜〜。お前も、酔狂なやっちゃな〜〜。
こんなちっぽけな
村の伝説で、しかも、どこにあるかもわからない島を探すなんてな。」
と、ラルド。
「うぐっ。」
ズキッっとくるウェル。
そりゃあそうである。
こんな、
ありありな伝説、村の中では、迷信どころか、
5歳の子供の宝捜しの遊びにしか出てこない、お遊戯なのだから。
「でもなっ。」
「ああ、怒らないで、あのね、馬鹿にする気はないよ。
ただね、
僕らも旅の仲間にしてもらおうかと思って、こうして声を掛けたの。」
ニコニコして、ケティア。
「そうや、旅は道連れ、世は情け、旅は大勢の方が楽しいで。」
ケティアの後ろから、顔を突き出して、白い歯を見せる。
ラルド
とは行っても、もう港は小さくなっている。
戻る気が無いと言うことは
この先、一緒に旅をすると言うことは決まったようなものである。
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かんとりー:はい!オリジナルリレー小説”蒼の島”やっと”火星”にアップできました。
もうなんか一時期3人しか執筆者様がいなくて「もうだめだぁ〜」状態にまで陥りましたけど、
なんとかなる物ですねぇ…こまめに執筆してくれたみゅうきぃ・Halさんどうもありがとう!
個人的に何かハッキリしない目的を持った物語が好きなので”蒼の島”はお気に入りです♪
このコーナーなるべく長く続けて行きたいと思っておりますので末永くよろしくお願いします!